一難去って


「うぅ……ほんとに俺がやるの?
俺はこういう人前に立つタイプじゃないって言ってるのに…あうっ」


「早く喋れよなー司ー」


「はぁ……一色や薙切がいてくれたらなぁ
それで…本番まであと何分…?」


「いえもうカメラ回ってます」


「え!!?」




えってい言いたいのはこっちなんですけど…全校放送で何見せられてるの私達?ただ瑛士先輩が一席らしからぬ威厳の欠片もみせれない姿が放送されてるだけなんですけど。これ放送事故だよね?絶対にそうだよね?




「え、え、えっと…どうも中枢美食機関の司瑛士だ。
きょ今日は…中枢美食機関から伝言を放送するよ。
進級試験の日程が…決定された」




最初はどもったり挙動不審だった瑛士先輩だったけどだんだん慣れてきたみたいでいつも通りに話はじめた。あー進級試験の時期かー早いような気がしなくもない……嫌な予感しかしないんだけど。だって中枢美食機関からの伝言でしょ?絶対いい話じゃないって!で、その進級試験はえーっと…薊メゾットの復習に変わるらしく誰でもクリア可能な課題ばかりでおちつけば誰でも合格できる内容らしい。なにそれ、くそつまんない試験だねー全員が一流のコック……魅力的な言葉かもしれないけど、その先に待つのは本当に真の美食といえるのかなー?




「ただし……薊総帥の方針に従おうとしない生徒に関してはどうなるか理解してもらえるって思う」




やっぱり。さーて道は険しいなあー一体どんな課題をさせられる羽目になるのやら。まあ、あの人が考える事だからどうせくそつまんない試験で完全にこっちを舐めたものだろうけど。




「………えっと…それじゃ以上で放送を終わります。
はぁあ……緊張したぁ…どうして俺がこんなこと…次からは竜胆や紀ノ国がやってくれよぉ」


「やーだよー」




だから、この部分なんで放送してるの……さっきまでので充分に威厳あったのに今のでまたなくなった気がする。それはともかく、私とゆうくんは創真くん達極星寮メンバーとえりなちゃん緋紗子ちゃんとこの放送を見ていたんだけど空気が重い…!




「どしたどした…なんか暗い顔してんな」


「あんた何も気づかなかったのぉ――!?」




そこはほら、創真くんだから。しょうがないよーで、話に戻るけどさっきの放送はつまり残党狩りで潰せなかった反乱分子を試験で狙い撃ちにするつもり。薙切薊に従わない者は容赦なく排除するっていう通告。




「えりなっちが…ひとりぼっちになっちゃう……!?」




きっと私も容赦なく排除される…足掻くつもりでいるけども、えりなちゃんを1人にさせてしまう事もあるかもしれない…いや、絶対1人にはさせない…!何が何でも生き残る。




「姫…?」


「……なんでもない。行こっかー」




絶望!という顔をした極星寮のみんなとえりなちゃん達と別れて私達は帰宅してゴロゴロしていた。そうしたら、えりなちゃんから明日の早朝に極星寮の玄関前に集合。ゆうくんも連れてくるようにというメールが来た。ん?なにがあったのえりなちゃん?まあそれは明日分かるだろうから了解と返事を送ってゆうくんにもそれを伝えた。明日は早いことだしもう寝ることにしよう。











「おはよーみんな!」


「あれっアンナっち!アンナっちもえりなっちに呼ばれたの?」


「うん。ねむいー」




ふわぁーっと大きな欠伸が出た。すかさずそれをゆうくんがパシャリと撮る。朝から元気だなーほら極星寮のみんながなんだこいつみたいな目でゆうくん見てるよー。あ、えりなちゃんが来た。




「おっほん。
ごきげんよう極星寮の各々方
…………フン。今日も今日とて見るからにしょぼくれた顔をしているわね。
こんな事では進級試験を受けるまでもなく結果は明らか…今すぐに学園を去った方がいいのではなくて?」


「な、何よー!だってしょうがないじゃんかー!中枢美食機関に従わない生徒は容赦なくはじかれちゃうんだよー!?
私たちだって…もっとこの学園で自分の料理を…ずっとずっとやってたいよ!
なのにそんな言い方することないじゃん…!」




私達を見下ろすえりなちゃんはいつもの偉そうで人を見下すえりなちゃんでゆうきちゃんもそのえりなちゃんから発せられた言葉に涙を滲ませる。




「……私がこの寮でお世話になって短くない日々が流れました。
その中であなた達の料理を幾度となく味見してきましたね。その味はときに突飛でときに滅茶苦茶で…私は何度叱りつけたことかわかりません!
でもあなた方の皿はいつも自由だった」




そんなにえりなちゃんに味見してもらってたんだー本当にみんな命知らずだなー!でも、それがえりなちゃんにとっては楽しい日々だったんだ。私達だけじゃない子と楽しく過ごした時間。それだけで私の胸は張り裂けそうなくらいに嬉しくて涙が出そうになる。こんなにもえりなちゃんを思ってくれる人が出来て凄く嬉しい。




「けれど今のようなへこたれた気持ちのままではそれを活かすまでもなく首を刎ねられてしまうでしょうね!
情けない…!本当にそれでいいのかしら!?」


「で、でもそんな事言ったってどうやって試験をクリアすれば……」


「どうやってもこうやってもありません!
"料理"の力で切り抜けるしかないでしょう!!」




どうしちゃったのさーえりなちゃん。昨日最後にあった時から大分気持ちが変わってないかなー?昨日の夜なにを創真くんに言われたのやら…創真くんみたいな事言い出すし。でも今のえりなちゃんの方が全然好き。




「もしあなた方に絶対に生き残るという意思があるのなら「神の舌」にかけて私はあなた方をサポートします!!
生き残る意思なき者は今すぐここから去りなさい!!そして――その意思ある者だけ私とともに試験へ臨むのよ!!
さぁ!!あなた方が本当に誇りある料理人ならば―――
私についておいでなさい!!!」




っ…!拡声器越しに伝わるえりなちゃんの気持ち。それに背筋がゾクッとした。興奮した、えりなちゃんの気持ちを直に感じた…!それはみんなも同じでみんながしけた顔から色を取り戻して2年生になるぞーといきこんでいる。えりなちゃんにあそこまで言わせたんだから、私も頑張らないと、ね!


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