進級試験開始


「北海道だ――――――!!!」




悠姫ちゃんと創真くんが一面に広がる銀世界を駆け抜けてふわふわな雪へと身体全体で飛び込んでいく。元気だなー!他のみんなも一面の銀世界を見るのは初めてみたいではしゃいでいる。かく言う私もそのはしゃいでいるうちの1人なんだけどねー。




「……アンナ姫も雪組育ちっすよね」


「産まれわねーそれがどうかしたのー?」


「…いや、テンション上がってるなって」


「えー!雪は見慣れてもテンション上がるよー!リョウくん達はそうじゃないかもしれないけどー」


「(かわいい)」




リョウくんが無言で私を見てくることに首を傾げる。どうしたのかなーと聞こうとしたらえりなちゃんから浮かれすぎと注意を受けたのでごめんなさーいと謝る。あ、そうだそうだ。なんで北海道に来てるのか言ってなかったね!そう、進級試験のため!です。毎年北海道で行われるみたいで、だから北海道に来たってわけー。




「なんか、この一週間で随分主従関係ができましたね」


「あはは。まあ、スパルタだったからね」




あの後、主にえりなちゃんが主体となって北海道講座を開いた。北海道の食材がテーマになるらしくてえりなちゃんが今まで得た知識を授ける!というテーマで一切の弱音は許可しないというスパルタ教育。その賜物の主従関係(笑)だね。まあ、私も緋紗子ちゃんやゆうくんもそのえりなちゃんの講座を手伝ってたんだけど、やっぱりえりなちゃんが一番怖かったみたい。




「アンナー!バス乗るわよ!」


「あ、うん!」




というわけで、バスに揺られてやってきたのは大きなホテルのような場所。そこに入ると一次試験についての説明をされる。どうやら、5人1組でやるらしいんだけど、どうやら人数の関係上6人1組の場所もあるらしい。ゆうくんと別れて係員の誘導に従って目的地に着くと、見た事あるメンバー。創真くん、リョウくん、アリスちゃん、悠姫ちゃん、恵ちゃん、私。これがチームらしい。




「うは――こりゃまたずいぶん露骨に仕分けられたなオイ」


「ハハ…私たち反逆者はバッチリひとまとめにされてるって事だね…」


「ふふ…望むところよっ薊叔父様にぎゃふんと言わせるいい機会だもの」


「アリスちゃんにさんせーい」




うーん、他の子やゆうくんはこの部屋には居ないみたい。んで、えりなちゃんは別のグループで安全に2年生へと進級される、と。何ていうか…あー。うん。試験官が来たかは出かけた言葉は飲み込む事にした。なるほどねーお題食材は鮭。あの人の特別授業を受けた人は簡単にクリアできるそう。陰湿だねー。それだけですめばいいんだけどー。だって、鮭は秋が旬の食材で冬に入った今は身の質が落ち始める頃だしね。




「ほら君たちの班はこれだ」


「ねえ、リョウくんこれ」


「っすね。ダメだな……こいつは。これは「ホッチャレ」…!」




やっぱりか。あ、ホッチャレってのは産卵後の鮭で通常は食用にされないもの。とんでもない奴を渡してくれたなーこっちの話は無視だし。話は進み制限時間が日没までと告げられて非常にも調理を開始された。どうしようかと悩んでいるところに試験官のおばさんが、高笑いを浮かべてこちらを見下す。それにちょっとイラッとしたー!そんな試験官の言葉でみんなが不安になって慌て始める。




「見ろよ慌ててるぜ」


「うん…ふふっ自業自得だよ。
薊総帥に逆らったんだから」


「薊様に従っていれば間違いない。中枢美食機関に反抗する生徒は遠月からいなくなればいいんだ…!!」


「………うるさいな。中枢美食機関に従う事でしかここに残れないような雑魚が良く吠えるな。
あんたらみたいな自分の意思を捨てたロボットには絶対成り下がりたくないね。
同じ料理人だとも思いたくない」




あ、やばい。素が出ちゃったー!え、すごい。空気がぴしっ!と固まったよーアリスちゃんとリョウくんは見た事あるから別になんともないけど他のみんながきょとんとしててちょっと面白ーい!でも、さすがにそのままだと空気が重すぎて自分がそうさせたんだけど辛いから空気戻そう。




「何をぼーっとしてるのみんな?えりなちゃんが前言っていた事を思い出してやればできるでしょ?
……ねえ創真くん、浮かんだー?」


「……ああ!バッチリだ!」




うん、良かった。どうやら考えが纏まったみたいでアリスちゃんとリョウくんに指示をだす。さて、私も動き始めよっかなー!多分、創真くんが考えてる事私と同じだと思うし。




「見てなよみなさん。
この部屋で一番美味い鮭料理を出すのは俺たちだ!!!」




その創真くんの言葉で会場中がざわつき始めた。試験官のおばさんも驚いてるけど、ホッチャレ出されたくらいでこっちが意気消沈すると思ってるのー?馬鹿じゃないのー?余計燃えるに決まってるじゃん!って、そんな場合じゃないよ。創真くんも同じ気持ちみたいで散れお前ら!!と言って一気にみんなで走り出す。




「今からどうやって…」


「お前らも薙切せんせーの勉強会で聞いたろ?
食材の特別な冷凍方法について!」


「そーそーまだ勝機は残ってるから諦めないでー!とにかく探そう!」




と、いうわけで!鮭探しの旅に出かけることどれくらいか。無事に入手できたという連絡が入ったので合流し試験場へともどってきた。因みに私達が探したのはトキシラズ。鮭の本来の旬の秋ではなくて春頃から夏にかけて水揚げされるお腹に卵や白子を抱えていない完全に成熟する前のものでその分の栄養が身に全て行き渡っている身の質だけなら1年でいちばん美味しい状態の鮭。季節外れにとれるから「時知らず」なんて呼ばれてるんだ!んで、そのトキシラズをブライン法というブライン液と呼ばれる0℃以下でも凍らない液体を用いた瞬間凍結方法。まあ長くなるから割愛するけど、まあ時を止める冷凍方法かな!説明長くてごめんねー!詳しくは自分で調べてみてね!その、ブライン法を使ったトキシラズを探し回っていたわけ。




「んじゃ、調理に入ろー!」


「解凍具合はどうだ?」


「モノ自体は小ぶりだしもう大丈夫だろ。半解凍だと楽に扱えるしな」




鮭の解凍具合もいいみたいだし!さて、調理にかかる準備しようかー!




「フフ……まさか幸平クンとチームを組むことになるなんてねっ♪」


「へへ…確かになっ
黒木場ぁとりあえず超速で捌き頼めるか?」


「誰に向かって言ってやがる…俺に命令すんじゃねぇ!!」


「そりゃ悪かったね!」




というわけで調理開始。リョウくんが鮭を捌いている間に他のみんなで下ごしらえやら先の準備を始めておく。だってそうしないと間に合わないしー。このメンバーで良かったのは何も言わなくても各々が自分の役割を見つけてやってくれるから30分しかないんじゃなくて30分もあるって考えられること。




「おし…!完成だ!!」


「トキシラズの「幽庵焼き」!!お待たせしましたー」


「さぁおあがりよ」


「おあがりになって♪」




あ、アリスちゃん……創真くんのセリフを被せてとってきたよー言いたかったんだね。そのセリフ。可愛いなあ。




「ちょ〜〜っと俺らのことを侮りすぎたんじゃないすかね試験官さん?少なくとも俺はこんなことじゃへこたれないすよ。
だってこんなの日常の1部っすもん。
どんな状況でも良いモノを掴むため仕入れと格闘する。そんできっちり皿を出すのが定食屋の仕事だ!」




そうだよねー創真くん。試験官もあの人も私達を甘く見すぎじゃない?まあ、そのおかげで楽々クリアできたからいいけど。試験官はきぃぃと歯を食いしばった。そして、




「…幸平創真班計6名!一次試験合格よッ!!!」




私達は無事に一次試験を合格した。


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