素直じゃない2人


「ゆうくんお疲れ様ー!」


「姫!どうでしたか…?」


「良かったよーかっこよかったよー偉い偉い!」


「今すぐ死んでも本望です…!」


「死んだら困るよ!」




悔し顔のメア先輩を放置して忠犬の如くしっぽをぶんぶんと振って駆け寄ってくる。しっぽは生えてないのになぜかあるように見えるなー目の錯覚かな?久しぶりにこんなに機嫌のいいゆうくんを見れたかも。だからかついつい可愛くて甘やかしてしまう。




「おー蓮城お疲れ!」


「………」


「あ、そこは通常運転なのね」




機嫌がいいものだったから創真くんのお疲れ様にも何か反応見せるかと思ったけどそこは相変わらずのゆうくんでした…どうやら私に対してだけで他は通常運転。あれだね、選抜の名誉挽回できたからそれが嬉しいから私にはああなんだね。納得した。




「いい勝負だったね」




パチパチと小さいけどなぜかこの喧騒の中ではっきり聞こえたその音。声と音の出どころに目を向けるとあの人が拍手をしていた。




「薙切…薊!!」


「………薊叔父様。お久しぶりですわね………」


「叔父様とも呼びたくもない……あの時ぶりです」




やっぱり見ていたんだね。




「楠くんに梁井くん。全勝するようにと…そう言ったはずだが」


「で…でもでも総帥!私も連ちゃんだって1勝はしたんですよぉ。そこも汲みとってもらえたらな〜〜〜って
…なんでもないですぅ……アハハハ…」




あの人に口出しするだけ無駄。あの人が誰かの言葉に耳を貸すわけがない。えりなちゃんであっても…。




「しかし薊様…本日4ヶ所の会場で行われた33戦の食戟。セントラル側は31勝2敗という結果を残したではないですか」


「まじか…とんでもなく圧勝されたな…」


「でもリョウくんは勝ちましたわ」


「ゆうくんもね」


「これでも叔父様の思想が絶対的に正しいとそう言いきれるのでしょうか?」


「やあアリス。アンナもえりなが世話になったようだね」




世話になった?なにを父親みたいな言い方をしているのかなーこの人は。もうあなたはえりなちゃんの父親の資格なんてないに。




「アリス、アンナ…君たちなら僕の「真の美食」という理想郷に従ってくれるかもと思っていたのに残念だよ。
薙切家には美食の世界を前へ前へと進める義務がある。これはそのための大変革なのだから」


「私達は叔父様のやり方に納得できない。したくもない!それだけです」




アリスちゃんに激しく同意。私達はあんなやり方をしてまで美食を発展させたいっていうこの人の考えが分からない。




「やれやれ…聞き分けのない子たちだ。
私の愛娘を勝手に連れ出した上にその物言いはないんじゃないかな」


「知ったことではありませんわ」「知りません」


「叔父様がなさったこと私は絶対に忘れませんもの」




あの人がしたこと……アリスちゃんが言っているのはアリスちゃんが北欧に行く時に手紙を書く約束をしたのにえりなちゃんからの返事が無かったこと。それはあの人がえりなちゃんに渡さなかったからでアリスちゃんはいっつも待っていたなのに諦めず送っても来なかった…だからとてもショックだった。その話のこと。




「私は怒っているのです!私は――
薊叔父様のことキライなのです!」


「……ぷっ」


「これ以上遠月学園を…えりなを!
薊叔父様の好きにはさせません!!」




キライと言ったアリスちゃんが場違いながらも可愛くてついつい吹き出してしまった。みんなもえー…って顔してる。でも可愛いな。



「私もアリスちゃんに同意です。まあ私は叔父様の事大嫌いですけどー?
私はあの時とは違う…何も出来ずに泣いている子供じゃありません。アリスちゃんとみんなと一緒に抗いますよ」


「そうかい。まぁ頑張ってくれるといい
今日のところは二勝獲得おめでとうと言っておこう」




そう何も痛くないみたいな顔しちゃって実は悔しいくせに。そして、あの人はそれだけ言い残すとあの人は消えていき、今度私達の背後に現れたのはえりなちゃんだった。




「えりな……聞いてたの…?」


「…………」


「…そう。フンだ
薊叔父様が余計なことをなさらなければ私えりなともっともっとも〜〜っと仲良しになれてたのに!失礼しちゃうわ」




本当にアリスちゃんはえりなちゃん大好きだなー。えりなちゃんもツンデレだけどアリスちゃんもツンデレだよねーほんと可愛いなー!




「大体最近辛気臭い顔をしすぎよ!もっと堂々としたらどうなのっえりな!」




また始まった。アリスちゃんの説教タイム。でも、今のえりなちゃんにはアリスちゃんの説教は必要かもしれない。




「薊叔父様に見せつけなきゃだめっ
自分は自分なのだと!誰かの思い通りになりはしないと!そのためにもいつまでも殻に篭ってちゃダメなのよ!いいわねっ!」



からの言い合い。それをちょっと離れた所で見守る。いつもの感じに戻ってホッと息を吐き安心する。えりなちゃんには元気に笑って欲しいから。その顔が好きだから。私の幸せだから。




「結局すげー仲良しなのな」


「そうだよー!」


「……それ二人には言うなよ面倒なことになるから」


「2人とも意地っ張りなだけだよ。そこが可愛いんだけど」


「そうすか…?」


「そうだよー……そんな2人を見るのが私は大好きなんだ」


「………」




私の話はさておき。中枢美食機関から2勝することが出来た。絶対にあの人の好きにはさせない。させてたまるものか。


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