最先端技術を操りし彼
「黒木場リョウVS楠連太郎食戟開始!!」
というわけで始まったリョウくん対楠先輩の食戟。創真くんがリョウくんに応援の言葉を投げかけるけど反応なし。それがリョウくんなんだけどね。
「やーなんかすみませんね。こんな特等席におじゃまさせてもらっちまってー」
創真くんがもも先輩に近づき声をかけるけどプイっとそっぽ向く。いつも抱えているぬいぐるみに怒りのマークが見えるのは気のせい…?
「……あれ?」
「創真くんもも先輩はそんな感じだから気にしなくていいよー!目を合わせて会話が成立するまでに1ヶ月くらいかかるからー」
「えー…そんなんで合宿とかどーやって乗り越えたんすか?」
「そんなこと君に説明する筋合いないでしょ……」
「え?何すか?」
「創真くん…っ
ぐいぐい行きすぎだよ……」
もも先輩ちょっとイラついているけどそんなの気にせずぐいぐい来る創真くん。ちょっともも先輩が可哀想に思えた。創真くんいくら敵でもそれくらいにしてあげて!
「「鮭をメイン食材として使用した一品」!これをお題として黒木場VS楠の勝負を行います」
お、どうやら両者がこの食戟のテーマ食材を出したことで会場が盛り上がったみたい。
「うお――エラの色艶最高じゃん!良い鮭だなー旬だし脂がギンギンにのってそうだぜ」
「魚介かぁ……これってつまり」
「あぁ…黒木場リョウの得意ジャンルだね。セントラル側が余裕を見せて譲歩したのだろう。先程の食戟でも彼ら4人は相手の得意料理で完全勝利していた。今回もそれを曲げる気はないらしい…」
「ていう事はあの人たちみんな――」
「うん…おそらくそうだろう。まだ本当の実力をちらりとも出していない……!!」
ま、その余裕も前の試合まで。この試合そして次の試合はそう簡単に倒せる相手じゃないよー?その余裕な表情が悔しそうに歪むのがとても楽しみ……決してそんな趣味がある訳じゃないけど。違うからね?
「くそーこのままじゃ偵察に来た意味がねーな…」
「相手はリョウくんだしそうでもないと思うよー?」
「リョウくん!がんばるのよ!集中しておやりなさい」
アリスちゃんがリョウくんに声援を送る。アリスちゃんもなかなか厄介な相手だど思ったのかもねーいつも勝つ自信があるものに声援なんて送らないしー。あ、リョウくんが鮭をさばきはじめた。
「すごい…!鮭をあんなに速くさばくなんて……見たことないよ」
「でも田所もアンコウ捌き凄かったらしいじゃんなー」
「うん!見惚れちゃったよー」
「わ…私はあんなに速くできないよ。
速いのに…全然ブレがなくて選抜の時からもっとすごくなってるみたい…!」
確かにゆうくんと戦った時より全然速くなってる。毎日の努力の賜物だろう。だけどそこに食らいつくのがセントラル。
「セントラル側も……!!速い!!そしてなんて的確!!」
「どうだよ黒木場くん先輩のウデは。まぁこの程度の速さセントラルの料理人なら誰だってこなせるけどな」
「中枢美食機関……!やはり全員がトップレベルの技術を備えているということか!!」
「勝負受けたことを後悔するのを止めてくれよ?興ざめだからさ」
楠先輩の言葉にも何も返さずに黙々と作業をするリョウくん。小骨の取り除きをしていたから姿のまま使う料理ではないのは分かる。あれ?フライパンに2種類のお米を入れはじめた。それにパン生地……なんだろ?
「2種類の米に…パンまで使うのか?ううむどんな品になるか想像もつかない」
「いや……確かに一つはふつうの米のようだがもう片方…あれは恐らく―――…」
タクミくんと思っているのは一緒かもしれない。面白いねー飽きさせてくれないね?リョウくんは。
「やるからには負けちゃダメよ?リョウくん」
「どうしたセントラル。今のところ俺の猿真似してドヤ顔しただけじゃねぇかよ。
全力でぶつかってきやがれエリート気取り野郎が。それとも負けたときの言い訳がほしいのか?」
やっと喋ったリョウくんのこの言葉で楠先輩の火をつけたみたいで何かを近くの人に持ってこさせるように言うと運び出されたのは見たことがある機械の数々。
「スチームコンベクションオーブンに…凍結粉砕機!ヤツも最新鋭の調理機器を駆使するのか!?」
「薙切ぃ!知ってたのかあれ?」
「いいえ……初耳よ………楠連太郎さん…果たしてあなたにそれらのマシンを使いこなせて?」
今までの発言からこんな最新鋭機器を扱う料理人に見えないよねー同感。だけどさ、君たちもも先輩を挟んで会話してるよ……もも先輩イラついてるよ!気付いて!
「そもそもさー何つったっけ?スチームコン……スチーム……昆布…?」
「「スチームコンベクションオーブン」だ。この間も座学の講義で習っただろう」
「それ。それってどういう機械なんだ?
いや寝ててさぁ」
「略して「スチコン」と呼ばれることも多いわね。メーカーや機種によって少しずつ違いはあるけれど…内部のファンによって熱と蒸気を強制対流させるオーブンのことをそう呼ぶの」
得意分野という事で饒舌に喋り出した。うん、色々説明してくれてるんだけど私は一切聞く気なし。創真くんは一生懸命聞いてる感じなんだけど絶対理解してないよ。というかもも先輩に気づいてみんな。
「それに匂いが移ることもないから別の料理を同時に加熱可能なの」
「マジか!便利じゃん」
「そこだけしか分かってないよね創真くん」
アリスちゃんがいうにはこう。調理の自動化という料理人にとって夢のようなマシン。だけど可能な選択肢が多すぎるから理解が深くなければ手に余る。食材と調理に対してのインテリジェンスつまり知識。それが否応にも試されるマシンらしい。
「う――ん…しかし何か意外だよなーお前は賢そうだし最先端科学とか納得だけど」
ん?待って。今の創真くんの発言には引っかかる事があったよ!アリスちゃんは賢そうって今言ったよね?アリスちゃん満更でもなさそうだし。見た目に騙されないでよ創真くん!
「あの先輩…そんな難しそうな機械をちゃんと扱えんのか?
なーんかオラオラ感あるしチャラチャラしてるしさ」
「確かにそれほど理知的には見えないな最先端技術が得意分野とは思いもよらない」
「わっひゃひゃひゃズケズケ言うねー良いよ君たち〜でもまぁ気になるならしっかり見てなよー連ちゃんの料理の凄さは今から分かるから」
メア先輩のその言葉を信じて?楠先輩がどう凄いのかを見させてもらうことにしようかなー?ていうか思ったけどメア先輩の笑い方が独特なんだけどこれ突っ込んだ方がいい?
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