お礼参り


「ゆうくん!はやくはやく!」


「待ってください!」




どうもーこんにちは!ついに月饗祭も終盤。あっという間だった!というわけでー私は自分のお店は前半だけにして、後半はお手伝いしてくれた子に片付けを任せ(自ら引き受けてくれたいい子たちだったな)出店巡りをすることにした!なので、2日目に来てくれたみんなのお店にお礼も兼ねていこうと思ってます!




「最初どこから行くー?」


「嫌なのは早く済ませたいのでアリス姫のところで」


「あはは!じゃあ嫌がらせで後半にするね」


「え!?」




最近ゆう君に対して甘やかして気がするのでちょっと厳しくいこうと思いまして……え?厳しいの意味違う?これが私の厳しさなんでお構いなく!それに私もまだアキラくんと会いずらいってのもある。




「創真君のとこ気になるからそこから行かない?」


「……分かりました」




ちょっと拗ねくれつつも後をちゃんとついてくるゆうくんに笑みがこぼれつつ創真君のところにごー!




「おー凄いね。てる先輩に勝ったとか聞いたけど…」


「2日目よりかなり増えてますね…」


「でも通算は勝てそうになさそうだねあのペースだと」



隣にある中華研の客数をざっと見た感じいくら食べ歩きができると言っても中華研の客単価の方が高いと予想。でもここまで出来た創真君は凄いと思うよ!まだまだ創真君に十傑との勝負は早かったみたいだね。




「いらっしゃいま……なななな薙切さん!?蓮城くんも!?」


「こんにちはーこの間来てくれたお礼に食べに来たよ」


「私は付き添いで」




あわわわと分かりやすいくらいにあたふたしている姿が可愛らしくてついつい笑ってしまうと、私が笑った事にたいしてもさらにあたふたして見ていて飽きないなーと思う。




「田所…落ち着いたらどうだ?」


「あ、ご、ごめんなさい」


「謝らなくて大丈夫だよー」




私の前だから結構抑えてるけど私がいないと近づくなオーラが凄いからそれを経験してるちょっと内気な恵ちゃんはやっぱり怖いんだろうね……しょうがないんだけどさ、ゆうくんは女の子にはまあ多少は優しいけどもっともっと優しくして欲しい。




「改めてこんにちはー創真くんに恵ちゃん!この間は突然にも関わらず来店してくれてありがとうね!というわけで、今日は2人の所に来たよ!」


「お、そうか。ありがとな!蓮城も」


「……」


「はいはい!ちゃんと返事する!」


「……ん」


「……ゆうくんはこんな子だから許して?」




最初は言ってることの鋭さは変わらないけど、敬語だった。でも今は口悪いけどタメ語になった。あの子にとってそれは凄く大きな事だと私は知っているから、ゆうくんなりにみんなの事を認めているのかもしれないと思うとニヤニヤが止まらない。




「で?美作くんなんでいるのー?」


「手伝ってもらってるんだよ」


「へー……」




なんだろう……怖い。創真くんになりきってる美作くん怖い。言い表せない恐怖を感じるよ。




「というわけでオススメくださーい」


「あいよ!」




なんかメニュー増えたらしくて何があるか分からないのでオススメを貰うことにした!それにしても……てる先輩から流れてきたお客様でいっぱいになり始めてきた。回せるのかなと思いながら創真くんから貰った時限式麻婆カレー麺をすする。あ、美味しい。




「姫、なぜか水戸やアルディーニ兄が手伝ってますよ」


「あれ、本当だ。なら、お店行く前に2人に軽く挨拶しに行こっか!できるか分からないくらい忙しいけど……」


「そうですね」




3人じゃ回しきれないから2人が助っ人としてやって来たわけだし、邪魔は出来ない。それにしてもタクミくんあの創真くんやみっちりトレースした美作くんと変わらないスピードを出している。前までならついて行くのは難しかったと思う……彼も成長してるんだね。




「恵ちゃんありがとう!ごちそうさま!」


「あ、ありがとうございます…!」


「私もゆうくんもタメ語で大丈夫だよ!」


「は……うん。あの、えっと……水戸さんとアルディーニくんから伝言があって」


「2人が?どうしたの?」


「えっと……お礼はいらない。こちらこそ呼んでくれてありがとう……お店の方も蓮城くんが来てくれたから気にしないで!って2人が言ってたよ」


「本当……ありがとう!恵ちゃん!改めて2人にお礼言っといて」




バイバーイと手を振って創真くんたちのお店を後にする。気になるけど、2人がああ言うから2人のお店に行くのはやめよう!変に気を使わせちゃったなーと反省。




「次はお待ちかね!アリスちゃんの所です!」


「待ってないです」


「嫌そうだねー……あ!アリスちゃーん!」


「あらアンナにゆうくんじゃない!あなた逹自分のお店は?」


「午前まで!売り上げ気にしてないしーそれにこの間来てくれたお礼参りに来てるんだ!」




さすが目抜き通りエリアだけあって沢山の人で溢れかえっていた。アリスちゃんの所も初日に比べれば客足も安定しているみたいで良かった。




「それで?メニュー色々揉めてたけどどうなったの?」


「こうなったわ!リョウくん!」


「…うっす」


「ありがとうリョウくん……これ、チョコレート?」




渡されたのは匂いと色から見てカレー。だけどそのカレーの上に複雑な形をしたチョコレートらしきものが乗っていた。




「複雑な形ですね……これは何で作ってるんですか?」


「3Dプリンターだ」


「………」


「ゆうくん!アリスちゃんに質問したのにお前が答えるなみたいな目で見ちゃだめ!」


「……すみません」


「すっごく不満気。でもなるほどねーそれでアリスちゃんらしさを残しつつ目抜き通りの価格に出来たわけだ。味もさすが!美味しいし」


「そうでしょ?でも上から目線なのが憎たらしいわね!」


「だって上だし」




なにを言ってるの?アリスちゃんと見るとそれにさらにムキーとなっている。なのに誰もなだめようとしないのはさすがというべきなのかな?




「……初めてアンナ嬢の料理食べたっすけどそれだけ自信満々なのが分かりました」


「あれ?初めてだっけ?」


「…初めてっす」


「秋の選抜が十傑扱いされたのが何となく分かった気がしたな」


「?……ほ、本当?
まあ……確かに参加してたら優勝できる自信はあったかな」




アキラくんと話すのはまだちょっと無理があるみたいです。視線も合わさないでなるべく不自然にならないように話す。




「まあ、やっと私の凄さが分かったみたいで良かった!ごちそうさまー美味しかったよアリスちゃん、リョウくんにアキラくん!この間はありがとうね!あと少し頑張ってーじゃあ!」


「アリス姫ごちそうさまでした」




満足!満足!アキラくんとは全然普段通りに話すことは出来なかったけどなんとか話すことは出来た!ゆう君にも知られたくないし…頑張って元に戻さなきゃ!




「…………」




そればっかり考えていたせいかゆうくんが不審そうに私と遠くなっていくアキラくんをそっと見ていたのに気づかなかった。


back



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -