勝敗の行方
ドドンドンドンドンドン
「ご苦労であった…!決勝を闘うに値する個性のぶつかり合い…三者三様の持ち味を見せてもらった!」
どうやら審査がまとまったみたい。さっそく、審査の内容の発表かな?3人ともなかなかの勝負をしている。難しい審査になるかな。
「まずは調理の技術!これは全員伯仲している。次に素材の目利きについては何といっても黒木場と葉山だ。最上のサンマを完璧に選び抜いてみせた!だが…幸平はその創意工夫で見事追いついた!発想力は三名の中で郡を抜いている!!」
「……今回は本当に難しい闘いだね」
「さらに驚くべき事に味についても…三名ともにほぼ互角と言える美味さであった!!」
「どうやって勝敗を!?」
「勝負を決めたのは――料理人の顔が見える料理かどうか」
「料理人の…顔…すか?」
料理人の顔……かあー。と、なるともしかしたら優勝するのって彼、になるのかな?まだ憶測だけど。
「その通りデス幸平クン。本当のoriginalityに溢れた皿は味わタだけでその料理人の顔が心に浮かんでくるものデスもの」
「言い換えるなら…"その者にしか作ることの出来ない真に独創性のある一皿"――そんな料理の事を我々は作った者への敬意を込めて「必殺料理」と呼ぶのだ!!」
「頂点に立つべきは己の料理を最も深く追求した料理人!己の料理とは何かという問いに真に向き合った者だ!その人物の名は――」
会場に緊張がはしる。優勝者の名前を今か今かと待ち望む空気と自分なのかはたまた他人か息をひそめ待っている者。
「「炙りサンマのカルパッチョ」必殺料理と呼ぶにふさわしい一皿であった」
「勝者葉山アキラ」
歓声が会場に響く。アキラくんは静かに拳をあげて喜びをしめしている。アキラくんらしいなと笑いながらそれを見つめていると、
「おめでと――!!葉山く―ん!!おめでとう―――!!おめで…ッ!ひぐやったねぇえ葉山くん!!」
「………」
「もうもう!相変わらずクールなんだからぁもっと喜びなよぉ!優勝だよ!?ゆうしょ……」
「!」
アキラくんが勢いよく汐見教授に抱き着いた。アキラくんが頑張ってきた理由は見ていて分かる。汐見教授のために、自分が汐見教授のそばにいれるために頑張っていることを。ただ、目の前で抱き着いてるのを見てるとちょっとムカっとするのはなぜかな?うん、自分でも分かるくらい不機嫌な顔してると思う…………邪魔しようかな。
「葉山あのカルパッチョまだ作れるか」
「…素材は一応まだあるけど」
「食わせてくれ」
「あ?何でだよ」
「食わせて」
「有無を言わせねぇ!つっても炙ったり色々手間が」
「俺にも食わせやがれコラ…!」
「なんでお前はケンカ腰だよ」
あ、二人に先越された。てかリョウくん怖い……さっきからだけど、アリスちゃんにも噛み付いてアリスちゃん叔母様に泣きついてるしどんまいアリスちゃん。あ、そうだ、アキラくんに食べさせてもらわなきゃ!アキラくんの制服の袖をちょんちょんと引っ張るとすぐ振り向いて気付いてくれた。
「私も食べたい!ちょーだい!」
「お前もか……いいけどよ」
「差別かー」
「当たり前だろ」
というわけで、アキラくんに作ってもらったカルパッチョを実食!ちなみにちゃんと3人分用意してくれたよ!優しいねアキラくん。
「ああ!アンナ姫、地面に座ってはダメです!私の膝の上で!」
「おお!?ゆうくん!いや、恥ずかしいからやめて……」
「なら俺の膝にくるか?」
「あ゛?俺の膝に」
「人間の問題じゃないよ!?」
「なら、椅子を……」
「いや、そこまでしなくて大丈夫だよ!」
「しかし……!姫のスカートの中を見ようとする不届き者が!」
「大丈夫だって!心配しすぎだよ」
「姫はなんにも分かってません!」
「はいはい」
嫌いな人が勢ぞろいしてるからいつもより神経質なんだねーゆうくんが妥協できるように床にハンカチを敷いて食べることにした。あ、美味しい。新しいアキラくんを見た気がする。
「…けっ!!俺だったらもっと旨く作れるぜ」
「あ?負け惜しみかよ黒木場。いいか…今夜で一年生の暫定序列が組み上がった。この中じゃ俺が一番上なんだ。これからは口の効き方を考えた方がいいぜ」
「私がいまーす!私が一番上でーす!なのでアキラくん口の効き方を気を付けてください!」
「嫌だな」
「言ってることと違う!?」
あれ?言い出しっぺ……二人には気をつけろといいながら自分はしないんですか……さ、さすがアキラくん。汐見教授を呼び捨てしてるだけある。
「まぁまぁ…葉山も中々いい品作ったんじゃねーの?」
「何でお前も上から目線なんだ!この三位入賞野郎」
「三位かどーかは分かんないだろテキトーな事言うな!」
「俺がテメェより下だってのか幸平ァ―――!!」
「「きったねぇ!食いながら叫ぶな!!」」
「アハハ!!リョウくんきたない!」
「下品め……」
中身飛んでない?大丈夫?正面から受けた二人は大丈夫かな?まあ二人だから大丈夫かな!(適当)
「じゃ――私も!二人の料理食べてないからちゃんとした事は言えないけど。さっきお爺様がいっていた通りアキラくんの皿にはアキラくんらしさがあった。食べただけであ!アキラくんの料理だってのがねーそれはリョウくんにもあったけどやっぱりアキラくんの方が断然強かった」
「俺は?」
「創真くん気づいてるでしょ?創真くんの皿に創真くんを感じれなかった……創真くんらしさを。そこが一番の敗因だよね!ただ君の独創性は私はすっごく好きだからもっと伸ばしてほしいところ!あとは色々な手法とかも学ぶといいかも」
「ありがとな!」
「……真面目だな」
「アキラくん失礼!私だって料理に関しては真面目ですー」
「悪い悪い」
「しょうがないなー」
「姫」
「ん。じゃあ、授賞式始まるみたいだしまたねー創真くん、アキラくん、リョウくん」
授賞式が始まり、結果準優勝はリョウくんと創真くんの二人で三位はなかった。長い長い闘い。秋の選抜はアキラくんの優勝で幕を閉じたのであった。
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