三変化せしもの


「しかし…!過去に一度も前例がありません!審査員の一存で決められる事では……」


「その提案面白い。黒木場リョウ、葉山アキラの試合は引き分け…両者勝ち上がり!決勝は三人で闘うものとする!!!」




面白い……今日はおじい様と意見が一致したねー。私としても、どちらも決勝にあがるのに充分な力を持っているからどちらかを落とすなんて嫌だった。それにしてもこの三人かー!ますます楽しくなりそうな予感が…!




「黒木場くん!遠スポの者なんだけどちょっといいかな?決勝進出おめでとう!意気込みを聞かせて」


「何がおめでとうだコラ……俺は認めてねぇんだよ…」


「ひぃい…!?」


「決着を先延ばしにしやがってくそぁあああ!!」


「リョウくんハウス!ハウスよっ!」




これじゃあどっちが主君か分からないね。主であるアリスちゃんが側近のリョウくんをホイッスルで止めてる。本来なら逆じゃないかな?ま!それが二人の関係だからしょうがないか!




「黒木場先週に並ばれてしまったのは悔しいですが…しっかりと切り替えて次の試合に備えたいと――」


「あはは、スマートだねー相変わらず。あ、次は創真くんかな?」


「予選であの二人と同じAブロックだったんすけど、葉山には一点差…黒木場にも並ばれちゃったんすよねー上に行く前に二人ともちゃんと負かしときたかったんでそのチャンスをもらえて"お得"って感じっすわ」


「……幸平、気合い充分って感じですね」


「そうだねー2人とも挑発されて殺気立ってるのが分かる」


「黒木場は分かりますが葉山もですか?」


「何いってるのゆうくん。アキラくんは結構負けず嫌い……いや怖い子だよ?内にとんでもないものを秘めてる……今日はそれがやっと現れた。初めて見たけど、凄くゾクゾクする。本気の彼と勝負してみたいと思えたよ」




さっきのアキラくんには他にも感じたことはあるけども、それが何なのかは分からない。でも、嫌な感じではなく良い感じのものだって事は分かる。




「以上を持ちまして準決勝は終了となります。続きまして運営委員会から決勝の対決テーマの発表です!」


「今回も来ましたね、あのでっかい氷が」


「あれ、叩き割ってみたい」


「いや、姫の力じゃ無理かと……」


「えー残念」




慧先輩が氷を叩き割ってあらわれた秋が旬の食材は「秋刀魚」。最近では高級店などでも扱われるようになってきた言わずと知れた秋の名物。




「奇しくもこの三人が勝ち残った事に何か不思議な縁を感じますね。サンマとは――脂が乗り極めて"香り"高く世界で重宝される"魚介"でありそして"大衆"の食卓にも関わり深い!」


「つまり、決勝でサンマは三変化するってことだね」


「決勝は10日後……最高の闘いをお約束します!!」




一週間以上間が空くのかー楽しみすぎて待てないなー。でも、その前に!




「いいぜだったら見せてやるよ俺の料理の深奥。香りが誘う本当の世界を……!」


「ふふ、いつもの冷静なアキラくんとはまた違う一面を今日はいっぱい見れたねー」


「アンナ」


「そんな顔もできるんだね?今日の顔の方が好きだよ私はー」


「……好き、な」


「んー?変なこと言った?」


「いいや。アンナから見て今日の試合はどう感じた?」




残念。いつものクールなアキラくんに戻っちゃった。また見たいなーどうしたら見れるかな?と考えながら質問に答える。




「そうだねー私は審査員の方たちと同意見。優劣をつけにくい試合だった。準決勝とは思えないくらいいい試合だと思ったよ?」


「そうか。なら、次は……決勝はどうなると思う?」


「それ、今言ったら面白くなくなるからいやーでも三者三様になるだろうから楽しみかな!」




まだまだどうなるか分からない子が若干一名いるしねー?ほんとになにしでかすか分からなくてそれがドキドキで楽しみな大穴が。




「……幸平はどう思う?」


「今日は質問珍しく多いねーそうだな……私の理想、かな?」


「理想?」


「そ!私が目指していることを創真くんが当たり前のようにしている……憧れとか嫉妬も少しだけ」


「お前がそこまで言うのは珍しいな」


「あれ?嫉妬してくれてるー?」


「……」


「冗談だよ!」


「いや、してる」


「え、あ……う、うん」




真顔でサラッとそんな事言われたから照れる……男の子にそういうのされた事ないから耐性がないんだ!意外とうぶなんだよ!えりなちゃんやアリスちゃんと一緒で。




「へえ……アンナもそんな顔するんだな」


「……女の子ですから」


「痛いほど知ってる」


「っ、とにかく!実力はまだまだだけど創真くんは料理人として気になる子かなー」


「そらしたな」


「うるさいよアキラくん!」


「ふっ……お前は可愛いな」


「っ!?」


「お。また赤くなった」


「もう!アキラくんなんて知らない!創真くんにもリョウくんにも負けてしまえ!!」


「ふっひどいな」




照れすぎてその場にいずらくなったので早足でその場を去ろうとする。




「アンナ!」


「……なに」


「優勝したら話がある」


「……今じゃなくて?」


「優勝したらな」


「……分かった」




返事だけはちゃんと返してその場を去る。私はあの表情を見たかったのに、アキラくんのせいでこっちが変な表情しちゃったじゃないか!もう!久しぶりに照れたよ!もう本当にアキラくんなんて知らないんだから!


back



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -