ヴァリアー邸内のスクアーロ自室。2匹の散歩を終わらせて自分の今の気持ちをスクアーロに素直に伝えるために部屋に来ていた。
「う゛おぉ゛い!雪姫に帰るだぁ!?」
「スクアーロうるさい……」
「本気かぁ゛?」
「……ええ、本気よ」
「う゛ぉい…世話がかかる奴らだぁ゛」
「ザンザスが私をどうしたいのか分からないの。それに、私も頭を冷やしたいから」
「そうかぁ゛……」
「私としても久々に日本に行けるし可愛い弟にも会えるで楽しみ」
ザンザスの事よりも実はこっちが本音だったりして。ザンザスが目覚めてから全く帰って来れてないんだよね。だからちょっと恋しくなってきていた所だからちょうどいい。
「……本当に行くのかぁ?」
「当たり前よ。私は言ったことは曲げない女よ」
スクアーロは大きくため息を吐きどっと疲れたような表情をし始めた。スクアーロには沢山迷惑かけてばっかりだからちょっと申し訳なくなった。ごめんねスクアーロと心の中でだけど謝る。
「いつ帰る予定だ」
「未定かな」
「早く帰ってこい……ボスを止めるのは骨が折れる」
「ザンザスなりのあなたへの愛情表現ではなくて?仲がいいこと。嫉妬しちゃうわね、本当に」
実際、スクアーロに本気で嫉妬したことは数え切れない程。だってあそこに入り込めないじゃない?2人だけの空間みたいで羨ましい。
「う゛おぉ゛い!んなわけあるかぁ!」
「ふふっじゃあ、行く準備するから……あ、ジェット機用意よろしくね」
「……分かった」
渋々と言った感じだけど頷いてくれたのでスクアーロの部屋から出ると盗み聞きしていたのであろう幹部たち。みんなが見事にあ、ばれた。みたいな顔をしていて暗殺部隊がそれでいいのか。わかりやすいなと苦笑い。
「盗み聞きしてたの?」
「スクアーロの声が聞こえて気になっちゃって〜」
「ししっフィロメーナ家出すんの?」
「しばらく雪姫に帰るだけよ」
なんだーと安堵の表情のルッスとベル。朝の様子を見ているから不安にさせてしまったみたい。特にベルは年下だから年下に心配されてしまって年上として複雑な気持ち。
「大変だね、君達も」
「あはは……用があったらいつでも連絡してね」
「「うん」」
「じゃあね」
みんなに手を軽く振ると自室に向かって歩き出した。自室に着くとすぐに旅行用の鞄を取り出す。滞在期間は未定だが、あっちにも服などは残っているためにそこまで持っていく必要もなくて荷物整理には時間はかからなかった。
「しばらくこの部屋ともさよならだね……」
ベットに横になる。そして天井を見つめる。なにもない。殺風景な天井。でも嫌な思い出と良い思い出が両方詰まってる。
「兄妹だった頃は毎日のようにお互いの部屋に行き来して一緒に寝たりしたのに…今はもう…」
目から自然と涙が一粒流れてきた。一粒出ると二つ、三つと溢れてくる。そして、その止まらない涙を慰めるように舐めてくれる可愛い可愛い私の相棒。
「……ビスター…慰めてくれるの?」
「ガウー………」
「ありがとう。久々の実家だよビスター、べスター……といっても2匹は初めてね。べスターは、ザンザスと離れるの寂しい?ザンザスに懐いてたものね……残る?」
「ガウガウ」
べスターはまるで嫌だと言うように首を振ると私の顔にすりすりとし始めた。ふわふわとした感触で擽ったくてついつい笑ってしまう。
「一緒に行ってくれるの?優しいのねべスター。行こっか」
「「ガウ」」
キャリーバッグと2匹を入れたゲージを持って外へ出ると幹部たちが集合していた。お見送りしてくれるみたい。
「お見送りなんていいのに……ありがとう。さすがにザンザスは来ていないわね。来たら撃つけど」
「さっきボスの様子を見たら少し楽しそうに見えたわ〜フィロメーナちゃん何かしたの〜?」
「さあ?私が会う前から機嫌良さそうだったわよ?」
「そう?フィロメーナちゃんに関わる時しか見せない顔していたから何かあったのかと思ったんだけどね〜」
「私にも分からないわ……スクアーロ」
「なんだぁ゛?」
「ザンザスの事よろしくね。あと、任務とかあったら連絡してきていいからね」
「分かったぁ゛」
「……もうそろそろ私は行くわ」
スクアーロに手配してもらったジェット機で日本へと旅立つ。そして、旅立ってから約半日後。日本に私は無事に到着した。
「姉さん!」
「幸護!久しぶりね」
「ザンザスと喧嘩?」
「そんなところかしら?」
「詳しくは後でゆっくり聞くよ。車外で待ってるから行こう」
「ええ」
車の中では私が日本に突然帰ってきた理由と他愛もない話をしていた。最近の家の変化。新しく増えた仲間のこと。色々と話した。久しぶりの幸護との会話は尽きることなくあっという間に家へと帰宅した。
「どうぞ、姉さん」
「ありがとう」
「「「おかえりなさい!フィロメーナ様!」」」
「ただいま」
「お母様が着替えて来て欲しいだって」
「分かったわ」
久しぶりの部屋は全く変わっていない。当たり前だけど。埃一つもないからちゃんと掃除してくれているみたいで嬉しく感じた。棚から洋服や隊服ではなく着物を取り出し、着替えて母親の自室へと向かった。
「フィロメーナです」
「入りなさい」
「はい…ただいまお母様」
「おかえりなさい。上手くいってないみたいね?」
まさかここまでその情報がいっているとは思っていなくて驚く。一体どこから…?隊員かしら?余計な情報を流した人は……戻ったら尋問しようかな。
「知ってたの?」
「ええ。どこから知ったのか…これをチャンスにってお互いに婚約の申込者が増えている……でも全て断っているわよ」
「ありがとう」
「私達はお互いの意志を尊重して決めたけど……変わったの?」
「いいえ」
「なら、まだ好きなのね?今でもザンザスのことを」
「……うん」
なんだか、お母様の前で言うのは恥ずかしくて少し恥じらいながらも頷く。私の気持ちに気付いたのかおかげでが、くすりとわらった。
「それを聞いて安心したわ。私達は余計なことをしてしまったのかと。なら、ここからは貴方達の問題。ちゃんと話しあってね」
「ありがとう…お母様」
「ふふ、長旅で疲れたでしょう?今日はゆっくり休んで」
「うん………失礼します」
笑顔で出ていくのを見つめていたお母様に感謝の意を込めて襖を締める前にお辞儀をして部屋に戻るとよほど疲れがたまっていたのかすぐに寝てしまった。