朝。鳥の鳴き声と本家の人間たちの忙しない足音で目を覚ました。寝間着から着物に着替えと朝食を食べる部屋に向かう。ちなみに、着物の柄は大体お父様の趣味。たまにお母様だけど私が選んだものは一切ない。




「おはよう、幸護」


「あ、おはよう。随分早いね」


「周りの音で目が覚めちゃって」


「ごめんなさい…」


「幸護が謝ることじゃないでしょう?あ、ありがとう」




私が起きたのに気付いたのか朝食が運ばれてきた。私ここに来るときに誰も見なかったのになぜ気付いたのかしら。疑問が残るが、この家は色々他と違うので気にせずに持ってきてくれた子に感謝の言葉を述べる。軽く頭を下げるとその子は部屋を出ていった。




「いただきます。時間大丈夫なの?私なんか気にしなくていいのよ?」




幸護が自分の後ろにある時計に目を向けると、少し慌てだした。




「…あ。もうそろそろ出ないと」


「行ってらっしゃい。あ、そうだ。学校が終わったら綱吉君連れてきてくれないかしら?会ってみたいの」


「えっ!?」


「綱吉君が何か用事があるならまた今度でもいいけど……だめ?」


「大丈夫なの…?」




大丈夫というのは今ザンザスはボス候補ということになって綱吉君も候補で、ザンザスの婚約者であり部下でもある私が会っていいのかって心配しているみたいだけどいらない心配ね。




「平気よ。もしかしたらあの子になるかもしれないのよ?1回会って損はないと思うわ」


「分かったよ。連れてくるから!行ってきます」


「よろしくね。行ってらっしゃい」




無理矢理という感じだったけど綱吉君を連れてこさせるのに成功した。幸護は隣に置いてあるバックを肩にかけると小走りで部屋を出ていった。私はそれを手を振って見届けると食事を再開させる。




「沢田綱吉君…一体どんな子かしら?家光の息子だったわね。もう少し聞いとけばよかったわ……ザンザスと同じボス候補。だけど、ザンザスは…」




ブラッド・オブ・ボンゴレではないのだから。遅かれ早かれいずれリングは必ず出てくる。ザンザスがボスに決まったとしてもリングが拒絶反応を起こしてばれてしまう。そして、他の候補は亡くなってしまったから必然的に綱吉君がボスになる。だから、会っておかないと。どんな子なのか。命をかける価値があるのだろうか。




「…ご飯が冷めちゃうわ。考え事は止めて食べましょう」




考え事をして止まってしまった箸をまた動かしてご飯を食べる。全部食べ終わると、立ち上がって自室に向かう。日本に来たからディーノに会いに行こうと思ったので着物から洋服に着替える。黒のシャツにスカートにニーハイと、シンプルな服装にした。着替えが終わり、部屋から出るとばったりと遭遇。




「お出かけかい?」


「はい。ディーノに挨拶に行こうかと」


「そうか。行ってらっしゃい」


「行ってきます」




誰かって?私たちのお父様です。純イタリア人なのに着物を着こなしているのは流石。久々の日本の風景を楽しみながら歩いているとあっという間に病院につく。運良くすぐディーノを発見。私はザンザスでは絶対しないだろうダッシュして後ろから抱き着く。




「おわっ!?」


「ディーノ久しぶり!」


「フィロメーナ!日本に来てたのか」


「うん昨日から。色々あって」


「ははっ、相変わらずだな。ここじゃあれだから移動するか」


「ええ」




移動する私たち。さりげなく腰を抱いてエスコートするのは流石というべきね、ちゃんとザンザスもしてくれるけど、手つきが明らかに厭らしいうえになんだか恥かしい(私が)。




「どうぞ」


「ありがとう」




医療関係のものが部屋のあちこちにある。私はソファーに座り、向かい側にディーノが座る。いつの間にか淹れたのか紅茶を出してくれた。いい香り。




「懐かしいな…何年振りだ?」


「えっと…私が15だったから3年かしら」


「今の幸護と同じくらいか…大人っぽくなったな、本当に年下か?」


「本当に18よ。レディーに失礼じゃない?」




むすっと頬を膨らませていじけてみる。ディーノといると年相応の私を出せる。ザンザスやヴァリアーのみんなといると背伸びをしてしまいがちになってしまう。大人にみられたいから。でも、ディーノにはそんな気を使わない唯一の友人。




「いやいや、褒めてるって!ザンザスが惚れるのわかるな」


「……そうね」


「どうしたんだ?」


「…知らない女の人をよく連れてくるのよ。任務から帰ってザンザスの部屋に行くとばったりはかったみたいに」


「…そうか」




ディーノといると不思議。気持ちがどんどん溢れてくる言葉が溢れてくる。




「ザンザスよ?好きなら愛情表現はしてくれる。なのに全身見てくれないの……かと思ったら自惚れちゃうような事言うし」


「どういうことだ?」




ディーノにイタリアでの私たちの話をした。真剣に聞いてくれて正直うれしかった。時々、悩んでいるような素振りも見せた。昔からそうで変わっていなくて、変わってしまったのは私たちだけなんだと感じた。




「そんなことが……辛いかったな」


「うん……」


「思ったんだけどな」


「なに?」


「ザンザスはやっぱりフィロメーナを嫌いじゃないと思うぞ俺は」




自信満々に答えたディーノに首を傾げる。どうしてそんな自信を持てるのかな?ディーノとはザンザスはタイプが違うのに。




「どうして分かるの?」


「男だからな…これ以上は言えない。あとは自分で聞け」


「そっか。ありがとう」


「気にするな」




ディーノが隣に座って頭をやさしく撫でてくれた。昔、ディーノ撫でられるの好きだったなと思い出す。そんなことを考えていたら突然抱きしめられた。ふわっとザンザスじゃないディーノの甘い香りが鼻腔に広がる。




「…え?」


「ザンザスと居づらくなったら俺んとこに来いよ」


「……部下がいないとだめな人は嫌」


「手厳しいな」




上から笑う声が聞こえた。笑い後が聞こえた方を見てみたら、ロマーリオがいた。それに反応してディーノは腕を離してくれた。ロマーリオいたんだね。だからあんなにお兄さんオーラ全開だったのね。やっぱり変わってない。




「じゃあ、私は行くわね。幸護が学校終わったら綱吉君連れて来てくれるみたいだから」


「そうか。また、なにかあったら言えよ」


「ええ。ロマーリオも久々だったのに…今度話に来るわね」


「いつでも待ってますぜ」




病院を出る。まさかディーノに口説かれるとは思わなかった。あれは口説かれたよね?だって、いつも聞いたことないくらい優しい声だったよ?びっくりしてどうすればいいかわからなかった…でも、ザンザスから私は離れられない。離れたくないから。だから、ごめんなさいディーノ。


友人と呼べる人


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