もうすぐ帰ってくるだろうなと思いながら散歩して家に帰宅すると、すでに帰って来ていて私のこと待っているみたい。この格好より着物のほうがいいと思った私はもう少し待ってもらうように伝えて自室に戻って着替えた。朝に着た着物で2人(いや、3人かしら?)が待っている部屋へと向かった。




「私がお呼びしたのにお待たせしてごめんなさいね…?」


「い、いえ…」




綱吉君はどうもどうも緊張しているようで手に力が入っているし吃ってる。初対面で緊張しない方がなかなかないか。しかも友人の姉に。




「幸護、ありがとう」


「姉さんのお願いだから」




朝はあんなに心配そうだったのによく言う。口には出さないけど。改めて綱吉君に向き直る。




「…初めまして沢田綱吉君。幸護の姉のフィロメーナです。リボーンはお久しぶり」


「は、初めまして…」


「ちゃおっす。随分と大きくなったな」


「18ですから」


「18!?」




凄く驚いたようで先程の萎縮した感じじゃなくて表情も心底驚いた顔をしている。面白くてついつい笑ってしまうと綱吉君は慌てだした。




「い、いや!へ、変な意味ではなくて…大人っぽいなって…」


「ありがとう。そんな畏まらなくていいのよ?……弟の素性知ってるのよね?だから、警戒しているのかな?」


「ツナは、マフィアが好きじゃないみたいだから…」


「すまねえな、折角呼んでもらったのに」




リボーンが綱吉君に飛び蹴りを食らわすと痛いな!とリボーンに怒る。なるほど、あれが素か。まだまだ警戒されてるな私。




「気にしないで。私がいきなり今日って言ってしまったから…綱吉君ごめんなさいね」


「い、いえ…!大丈夫です」




大丈夫。なんて言ってるけど、まだ肩には力が入っているし声も緊張しているわね…少し彼の事情は聞いている。だから、いつもより優しめに話しているんだけど…難しいか。




「フィロメーナ気にするな、お前が綺麗だから余計緊張しているだけだ」


「リ、リボーン!!」


「ふふ、そっか。マフィアだから警戒されてるのかと思っていたから安心したわ。それで、本題に入りたいのだけどいいかしら?」


「あ、はい…」




真剣な表情をしたので綱吉君もつられて身体が強張る。緊張からじゃないもの。




「単刀直入に言うわ。綱吉君のことが知りたいの」


「え…!?」


「幸護から少しは聞いて入るの。でも、やっぱり実際会ってみないとわからないところもあるだろうし。だから、呼んでもらったの。将来のために」


「い、いや、俺はマフィアには…」


「ええ。聞いているわ。でも、もしかしたらこれから色々あってあなたの意思が変わることもある。その時の話よ」




なるべく安心させようと笑顔を向ける。嘘は言っていないわ。でもザンザスは、ボスになれない。だから、綱吉君は覚悟を決めなくちゃいけない時が来てしまう。このまま一般人として生きてほしいとは思う。彼は優しいから。




「ふふ、確かにそうは言ったけども…幸護とこれからも学生生活を送るでしょう?姉として、弟を任せられるか心配だったの。綱吉君、これからも友人としても幸護と仲良くしてほしい」


「姉さん…」


「あんまり他の子とはそりが合わないみたいでずっと1人だったの。だからとても心配だったわ。でもあなたたちと仲良くしている様子を聞いて安心していたの。これからも、仲良くしてくれるかしら?」


「もちろんです」


「ありがとう。時間も時間だしご飯食べていかない?喜ぶと思うわ」




チラッと幸護を見る。その意味が分かったのか顔を真っ赤にさせた。かわいい弟だわ。癒される。ヴァリアーはマーモン以外癒しがない。というかむさ苦しかったからこういう癒しが欲しかったのよね。




「じゃあ、お言葉に甘えて…」


「ご馳走になるぞ」


「あ、そういえばユリートは?見てないけど…」


「山籠もりしてる。もうすぐ帰ってくるはず」


「リボーンのいい話し相手になると思ったから良かったわ。もうすぐ帰ってくるのね」




こういう都会というか街中より森の方が好きな方だからよく山篭りをしている。だから帰ってきてから見なかったのね。元気そうで良かった。




「ユリートって?」


「同じアルコバレーだぞ」


「リボーンと気が合うの」


「え、それって…」




一気に綱吉君の顔が青ざめる。リボーン苦手なんだな。それが2人もいたらやだもんね。




「大丈夫よ。リボーンより大人しいから」


「良かった〜」


「じゃあ、ご飯持ってくるように頼んでくるわね」


「あ、お願い」



ご飯の事を伝えようと、台所に向かおうとしたら外から動物の鳴き声と聞いたことある声が聞こえて玄関のほうへと向かう。ちょうど玄関が見えてくると、ユリートと相棒のオオカミのエルがいた。




「ユリート!おかえり」


「フィロメーナ?ただいま、帰って来てたのか」


「ええ、色々あって」


「またか。でも、日本に来るまでのなにかがあったのか?」


「後でね。今、リボーンと10代目候補の綱吉君が来ていてご飯一緒に食べるのだけれど一緒に食べるでしょう?」


「ああ。リボーンと話したい。10代目候補の顔も見てみたい」


「一緒に行きましょうか」




ユリートを抱きかかえると台所に行きご飯の事を伝えるとすぐ持っていくので戻って待っていてくださいと言われたので部屋に戻った。




「ユリート帰ってきたわよ」


「ユリートおかえり」


「ちゃおっす」


「ど、どうも」


「幸護ただいま…リボーンは久しぶりだな。で、お前が沢田綱吉か。ユリートだよろしく」


「よろしく…」




軽く挨拶を済ませると、興味がなくなったのか私の腕から飛び降りてリボーンの所へ行ってしまった。すると、丁度いいタイミングでご飯が運ばれてきてみんなで食べ始める。




「姉さん」


「ん?」


「アイツとはどうするの?」


「んーどうしようかしら……」


「そう言えば、昨日警告の電話来てたんだけど」


「え?」


「確か「う゛ぉい…フィロメーナのせいで怒り狂ってらぁ……お前にも八つ当たりされるかもな」って。そのあとうめき声聞こえてきた。恐怖の電話だったよ」




本当に仲良しね。喧嘩する程仲がいいってやつかしら。スクアーロはザンザスに愛されていて羨ましい限りね。




「何か投げられたわね……でも、日本にいる幸護にどうやって八つ当たりする気かしら…」


「確かに……」




ちょっと怖い予感がしてきた。何かが起きようとする予感。




「スクアーロに後で電話してみる」


「はーい」




それからは、綱吉君の事いっぱい教えてもらった。幸護は本当に楽しそうに話していて綱吉君は恥ずかしそうだった。幸護が楽しそうで本当に良かった。いい友人に出会えて。




「ご馳走様でした」


「帰るの?」


「うん」


「あら、そう…幸護お見送りよろしくね。またいらっしゃいね」


「分かった」


「俺はユリートともう少し話してから帰るぞ」


「分かった。じゃあ、お邪魔しました」


「またね」




綱吉君は帰って行った。幸護もお見送りに行った。有意義な1日だったわ。綱吉君の事もしれたし、好印象だったわ私から見たら。こういう子がなってくれた方がいいわね。優しいしまだまだ弱いけどね。今までの候補あまり好きじゃなかったっていうのもあるけど。でも、彼はボスになることに前向きじゃないから…無理強いはしたくない。




「どうだ、うちのツナは」


「確かに優しい子だし、聞いていた通りだったわ。でも、彼なら彼の下ならいいと思ったのは確かね。私の超直感がそう言ってる。彼と相性がいいのかもね…私は彼が10代目になるのに反対はしないわ。あとは、あの人とどうなるか次第かしら」


「そうだな…だが、フィロメーナに認められたのは心強いな」


「最年長になるかしら私…」




まだ守護者が誰になるのかは私には分からないけどきっと綱吉君の周りにいる子達からぴったりの子を探すんだろうな。だとしたら、綱吉君と同い年くらいになってしまうので私が最年長か……引っ張っていけるかしら?




「フィロメーナに認められたからには明日からは厳しく行かねえとな」


「確かにあの歳ぐらいが1番伸びる時期だけど程々にね」




リボーンのスパルタはディーノの時でもう見ている。ディーノと綱吉君は似ている所があるからきっと大変な思いしてるんだろうな。




「ああ……それより、ザンザスと上手く行ってないみたいだな」


「なんでそれを。まあ、部下と上司ならうまくは行っているけど、恋人になるとねえ…」


「なんでだ?」


「ザンザスが私を見てくれないの…それに、女連れてきたり…」


「ひでえな」


「それに遊ばれてる気がするわ」


「……」


「……」




私が、真剣に話しているのに2人は顔を見合わせて苦笑い。どこにそんな顔をする要素があったかしら。私は真剣に悩んでいるのだけれど。




「大丈夫だよ。それだけ分かってるならな。あとは、もう少し素直になれ。ボスと守護者としてなら普通にできるんだ、なんとかしろ」


「そうだぞ。俺達の前で言ってるような事をザンザスの前で言え。大人になったのは見た目だけで、中身は幼くなっちまったか?昔みたいに大胆に行け」




なかなか鋭い言葉を言われてぐっとなる。素直になってるつもりなんだけどな……最近は。足りないって事かな。




「にしても、相変わらず鈍いな。そこだけは成長なしか」


「どういうこと?」


「俺からすればわっかりやすいぞアイツの気持ち。特にお前に関しては」


「え?」




あれのどこが分かりやすい?昔は確かに多少は分かったけどだんだん分からなくなってきた気がした。うーん観察力が足りないのかしら。




「っま、今俺たちの言ったことに気を付ければいいだけだ、分かったか」


「うん」




さっきの苦笑いはそういう意味だったのかしら…鈍い。確かに昔から言われ続けているけど。しかも、さっきディーノにも似たようなこと言われたし。ここはみんなの意見をちゃんと聞こうかしら。




「ありがとう。素直になるよう頑張る………スクアーロに電話してくる」


「俺はもう少ししたら帰るぞ。またな」


「ええ、またねリボーン」



携帯を自室に置いてきてしまった私は自室でスクアーロに電話することにした。ちょっと、緊張している。相手はザンザスじゃないのだけれども。分かっていても嫌な予感がするのか心臓のバクバクが収まらない。




『誰だぁ…』


「スクアーロ…フィロメーナだけれども」


『う゛おぉ゛い…どうした』




……スクアーロの声がいつも以上に低い。なにかあったか機嫌が悪いか。




「スクアーロこそどうしたの?いつもと雰囲気が違うわよ」


『!………なんでもねぇ…』




嘘。声が一瞬だけ変わった。いつもならちゃんと何かあったら言うのに何も言ってこない珍しく。気になる。




「…そう。そっちの様子は?」


『ボスが暴れてらぁ。被害がひでえな…』


「今日は静かだね」


『俺が任務に出てる』


「任務中?タイミング悪かったわね…ごめんなさい大丈夫?」


『いや、移動中だ。気にするなぁ゛』




確かに風をきる音が聞こえる。これは嘘じゃないって分かった。




「そう。良かった…あのね」


『なんだぁ゛?』


「幸護に電話したでしょ?あれどういうこと?」


『!……ああ、あれか。気にするな』


「……そう。しばらく、ザンザスの事よろしくね。じゃあね」


『ああ、分かった』




電話をきる。やっぱりおかしいわ。いつもなら、なるべく早く帰って来いって言ってくるはずなのに…私に何かを隠していてる?スクアーロに違和感があり過ぎる。でもあやふやすぎてどうしていいか分からない。偵察を出すべきかしら。


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