そんな双子が愛おしい 


「「熱斗のお姉さん?!」」

「正確にはイトコのお姉ちゃん。ナマエ姉だよ」

「さすが熱斗……お友達がたくさん……」



ネット社会がぐいぐい進むこの世界で育ったくせに、気づけば私はコミュ障になっていて。
最高なナビ=最高の友達が1人いればそれだけで生きていける!て言うか生きてきた精神でやってるわけですよ。

なのにイトコの熱斗は全ての人を味方にしてまう、ある意味超人的なコミュ力を持つ小学生だった。

いやいや、コミュ力がどうこう言う前に、この人は何度も世界を救ってるんだよね。
正確には彼らだけど。



「熱斗のお友達にも会えたし、私は家に戻るね」

「えっ、もう行っちゃうの?」


いくら年下と言えど、どうもついていける気がしないし、早く退散しようとしたらメイルちゃんに止められた。

熱斗の幼なじみの女の子。
前に一度遊んだこともある子だ。

将来的には間違いなく熱斗のお嫁さんになるんだろうけど、熱斗は鈍感だからなぁ。



「ちょっと用事があるから」


顔の前に手を合わせて、謝るポーズを見せる。
子どもたちは残念そうに肩を落とすが、ここで曲げたら帰るタイミングはもうないだろう。
申し訳ない気持ち半分と、気持ちが楽になったのが半分。


帰り道、おばさんに頼まれた食材を買って今夜泊まらせていただく家へと戻った。



『お帰りなさい、ナマエさん』

「あれ、キミは熱斗のナビの……」

『ロックマンだよ』

「そうそうロックマン。ただいま」



私を出迎えてくれたのは、熱斗のナビのロックマンだった。

私1人じゃ退屈だろうと思い、熱斗がわざわざ家に戻りPETを置いていってくれたそうだ。


でもいいのだろうか?
この時代PETとナビが無い生活は不便だと言うのに、それに熱斗とロックマンは仲良しだから……。
『あんまり深く考えなくても大丈夫だよ。純粋な熱斗君の気持ちだから』

「素直に喜ぶか。うん」


イスに座り、PETの中のロックマンに話し掛ける。

私の話しを聞いてくれたり、ロックマンの話しを聞いたり。
私のナビとも色んな話しをするけど、ロックマンは特別。
やっぱり、他のナビとは違う「心を持ったネットナビ」だからかな。


『そしたら熱斗君がね……ナマエさん…?』

「あっ、ごめっ……やだ私…」


楽しそうに、時には怒った顔を見せたり。
たくさんの顔を見せて話す彼に、私は涙を流していた。


彼は熱斗のナビ、ロックマン。
そして熱斗の兄、彩斗。




『おじさんお願い!熱斗君は、熱斗君は彩斗君が必要なの!!』

『…………』

『いやだよぉ。熱斗君が、ひとりぼっち。かわいそう……』




小さかった双子の兄弟を、小さかった手で抱えたのを今でも覚えている。

心臓病とは言え、1年で命を落とした彩斗。

しかしその彩斗のDNAデータが、今ロックマンとして生きている。


幼かった私は泣きながらおじさんに頼んだ。

とにかくあの頃の私は、彩斗を生き返らせてほしい。

そんなわがままを言い続けていた。彩斗本人の気持ちを考えずに。

これでよかったのだろうか?



「ねぇ……熱斗と一緒に居て、楽しい?」


しゃっくり混じりの泣き声だけど、指先でロックマンを撫でるように触れる。

するとロックマンは、彩斗は、こう言ってくれた。


『一緒に遊んだり、喧嘩したり、熱斗と過ごす毎日が、幸せの連続だよ』

「私の願いでもあったの、たくさん、彩斗とお話したい。彩斗と熱斗が、ずっと仲良しでいてほしいって」

『ナマエお姉ちゃんの想いもあって、ボクはもう一度命を与えられた。本当にありがとう』


イトコでも、私の弟。
そしてその弟に「お姉ちゃん」と呼ばれることで、彩斗は生きていると実感できる。


溢れ出す涙にロックマンはあたふたするが、こんなにも心地良い涙を流すのはいつ振りだろうか。
こちらこそ、本当にありがとう。




「あーー!なにナマエ姉泣かしてんだよ!」

『別にボクはなにも。それより熱斗君、ちゃんと手洗ったの?』

「うっ……今洗うから待ってろ!」






熱斗に対して口うるさいのは、ロックマンの良いところかもしれない。
涙を拭けば、自然と笑みもこぼれる。


「ナマエ姉、なんかロックマンに酷いこと言われた?」

「違うよ。ただ、嬉しいの」



正面に立つ熱斗を抱きしめた。
顔を赤くして、あたふたする姿が彩斗によく似ていてつい笑ってしまう。

熱斗にもありがとうって、伝えたいの。


「熱斗、ロックマン。何度も世界を救ってくれてありがとう。でも、無茶だけは……既に無茶の連続だけどさ、あんまりヒヤヒヤさせないでね。寿命が間違いなく縮んでるから」

「なんだよナマエ姉、せっかくオレとロックマンで未来を救ってんのに、早死にしたら意味ないじゃん」

『熱斗君、ナマエさんはそういう意味で言った訳じゃ……』



苦笑するロックマンに対して私も笑う。熱斗は何が何だかわからないみたいだけど、つられて笑った。



当たり前だと思っていた光景は1年で壊れてしまったけれど。

ずっと、ずっと思い描いていたことがやっと叶った。



「さてと、たまには料理でもしますか。ロックマン、手伝ってくれる?」

『もちろんだよ』

「ナマエ姉、オレも手伝う」

「ありがとう」




3人で過ごす時間が欲しい。




愛おしい双子の笑顔と共に、私も生きていきたい。



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