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3章

14


 
「じゃあなー!頑張れよー!」
「はい、お気をつけて!」

ニヤニヤと意味深な笑みを浮かべる先輩達に頭を下げる梢は「頑張れ」の意味を理解していない。本当にきっちり飲み放題の制限時間通りに早めに終わった。これは親切というよりもはや圧力だと思う。別にずっと見張られてるわけでもないしこの後どうしようが俺の勝手だ。そもそもこういうのは恋人間の問題であって、先輩だろうが他人の言いなりになる必要はない。
ただ、下世話な話をしてアルコールも入っているせいか、俺自身そういう気分になってしまっているのは事実だ。先週は生理がかぶってしまったから前にしたのは3週間程前だと思う。正直な気持ちを言ってしまえば、したい。確かにここから歩いて行ける距離にラブホテルがあるのは知っている。木葉さん曰く綺麗で女の子ウケも良いらしい。
でも、どうやって誘ったらいいんだろう。どういう言い回しをすれば下心を感じさせずスマートに誘えるのかが俺にはわからない。いや、場所が場所なだけに下心を隠せるわけがない気がする。変に繕うよりストレートに言ってしまった方がいいんだろうか。

「京治くんけっこう飲んでたみたいだけど大丈夫?」
「……うん、ちょっと酔っ払った」
「どこか座る?お水買ってこようか?」

自分が酒で痛い目を見たことがあるからか、梢は過剰に心配してくれる。そんな梢の顔を見る度に抱きたいという欲が強くなっていった。この際、アルコールの力を借りるってのもアリかもしれない。

「ちょっと横になりたいかも」
「えっ大丈夫?どうしよう、公園とか……」
「ベッドがいい」
「え……と……?」

それでもやっぱり直接的に「ホテル行こう」とは言えなくて、ただただワガママのように振る舞うことしか出来なかった。

「……こっち」
「!」

これでもかというくらい熱の篭った視線を向ける。少し強引に手を取ると何かを感じ取ったのか、梢は大人しく俺に導かれるままついてきた。


***(夢主視点)


「……こっち」

熱っぽい目で私を見つめてくる京治くんに連れてこられたのはいわゆるラブホテルという場所だった。もちろん来たことはないけどここがどういうことをする場所なのかは知っている。
つまりこれはそういうお誘いだと受け取っていいはず。目前まで来た時に「嫌?」と最終確認をされて私は首を横に振った。京治くんとの行為が嫌なはずない。ただ、こういう場所はどうしてもいやらしいイメージが拭えなかったし自分とは無縁なものだと思っていたから抵抗がないと言えば嘘になる。

「おおお……」

しかし実際に部屋の中に入ってみると独特な雰囲気はあるもののすごく広くて綺麗で、ちょっと高めのホテルの一室という感じだった。大きなテレビに大きなベッド、マッサージチェアなど、豪華なものばかりでワクワクする。すっかりテンションの上がってしまった私は荷物を置くなり部屋の中を探検してまわった。

「京治くんお風呂にジャグジーついてるよ!」
「……」

お風呂にジャグジーがついていたことの感動を伝えたけど返事がない。ベッドに横になる京治くんの顔を覗き込んでみると目を閉じて小さな寝息をたてていた。いつもより幼く見えるその顔を見て上がっていたテンションをクールダウンさせる。そうだった、酔っ払ったから横になるって言ってたんだった。

「……!」

ここでハッとした。なんか……そういうことをする前提でついてきたけど、もしかして京治くんは本当に横になりたかっただけなのでは。だとしたらこんなにも恥ずかしい事があるだろうか。久しぶりだったし嬉しいなと思ってしまった自分に喝を入れる。酔っ払った時の苦しさはよくわかってるのに。今はゆっくり休ませてあげないと。京治くんの額をそっと撫でて、私も隣に横になった。


***(赤葦視点)


「!」

しまった、寝ていた。慌てて時間を確認する。よかった、まだ10分くらいしか経ってない。ホテルに来たからと言って宿泊するわけにはいかない。無断外泊なんてして梢のご両親の心象を悪くはしたくない。終電までには帰らなければ。

「梢」
「ん……」

俺の隣ですやすやと寝ていた梢を起こした。気持ちよさそうに寝てるところ悪いけど、このまま寝て帰るなんて選択肢は最初からない。それは梢もわかっているはずだ。

「大丈夫?よくなった?」

目を覚ました梢は真っ先に俺の体調を尋ねてきた。まさかとは思うけど……本当に横になるだけだと思ってるんだろうか。いやいやそんなまさか。

「うん。最初からそんな酔っ払ってないし」
「えっ」

セックスしたくて誘ったんだよ、そう伝えるように押し倒してキスをした。

「ん、あの、シャワー……」
「終わった後でいいよ」
「やだ、汗かいてる……」
「大丈夫。梢の汗のにおい好き。興奮する」
「!?」

今言ったことに偽りはない。汗はフェロモンのひとつ、不快だと思ったことはないし特に今の俺には甘美的なものに思えた。

「い……い!や!!」

嫌がる梢を無視して首元に鼻を近付けたら結構強めに押し返された。これは本気のやつだ。怯んだ隙に梢は俺の下から抜け出して浴室の方へ逃げてしまった。本当に気にしないのに。乙女心ってやつだろうか。

「……」

とりあえず真っ暗にされる前に照明をいじっておこう。



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