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06

「ねえ、吹奏楽部ってそんな大変なの?」
「あー…まあ、文化体育会系だからね〜。」


去年同じクラスだった他の吹奏楽部の女の子に聞いてみた。


「なんだかんだ9時くらいまでやるし…」
「土日だいたい潰れるしねー。野球部程じゃないけど。」
「へー。」


ふーん。確かに文化部にしてはハードスケジュールだ。俺達程じゃないけど。


「名字さんって上手いの?」
「あれ、知り合い?」
「同じクラス!」
「上手いと思うよ〜。」
「人一倍練習してるもんね。」


俺は音を聴いても上手いか上手くないかなんてわかんないから聞いてみた。
へー、上手いんだ。練習は…教室でもあんなんだからたくさんしてるんだろうなー。


「今年の自由曲…白鳥の湖って知ってる?」
「知ってる!」
「オーボエ…って、名前がやってる楽器なんだけど…」
「オーボエも知ってる!」
「すごーい鳴くん!」
「オーボエのソロがたくさんある曲なの。」
「ソロって…あんな人数いっぱいいるのに一人で吹くの!?」
「厳密には一人じゃないんだけど…まあそんな感じかな。」


吹奏楽って確か50人くらいいなかったっけ?その中でたった一人、ソロを任せられるって結構すごいことなんじゃないの?


「鳴くんが野球部のエースなら、名前は今年の吹奏楽部のエースだね。」
「!」
「実際自分のソロに3年生の夏がかかってるって、相当なプレッシャーだと思う。」
「鳴くんもそうだから、気持ちわかるんじゃない?」
「…まーね!」


名字さんも、俺と同じだったんだ。
自分に3年生の…みんなの夏がかかってるっていう緊張感はとてつもなく重い。
俺は去年、その重さを嫌という程思い知った。


「…でもみんな、今年の選曲に文句はないと思う。」
「名前が頑張ってるの、みんな知ってるもんね。」
「ふーん。」


そんなの、俺だって知ってる。と、思う。
教室でも楽譜見て、曲聞いて、部活の時も一人真剣に練習してた。
その姿勢が部員に伝わってないはずないじゃん。
…だったら余計に、俺のエースっぷりを見てほしい!
で、「すごい!」「かっこいい!」って言わせたい!
俺はいろいろ教えてくれた女の子達にお礼を言って教室に走った。









教室の前まで行くと廊下で名字さんが美人と話してるのが見えた。
なになに、あんな可愛い知り合いいたの!?
何話してるかは聞こえないけど、名字さんが一度頷くと美人は笑顔になって名字さんの頭を撫でた。
何あれ!ちょー羨ましいんですケド!俺も美人に頭撫でられたい!


「名字さん今の誰!?」
「…部活の先輩。」
「めっちゃ美人だった!」
「彼氏いるよ。」
「がーん!」


教室に戻った名字さんを追っかけて聞いてみた。
なるほど部活の先輩かー!確かに吹奏楽部って可愛い女子が多いイメージ!
しかし美人には彼氏がいる…これが世の中の真理だクソ!


「てか、何の話してたの?」
「……野球応援、行くことになった。」
「えっマジ!?やったじゃん!」
「…はあ。」
「溜息つくな!」


普通なら喜ぶところなのに、そのリアクションは失礼すぎる!本当可愛くない!


「でもさ、楽器壊れちゃうんじゃないの?」
「楽器は吹かない。カンペ役。」
「へー!まあなんにせよ、これで俺の勇姿見られるじゃん。」
「…うん、そうだね。」
「!?」


こういうところは否定しないから、本当名字さんってむかつく。





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