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04

オーボエという楽器をググってみた。
ウィキペディアに書かれていたのは「古代ギリシア」とか「ダブルリード」とかなんか難しい言葉でよくわかんなかったけど、とりあえず高い音が出る楽器らしい。言われてみれば昨日高い音出してた気がする。
…ま、どーでもいいけど!
そんなことより今日も今日とて朝練!毎朝5時半に起きて練習するなんて、本当俺ってば頑張り屋さん!
アップを完了してシャドーを始める7時くらいになると、音楽室から吹奏楽部の楽器の音が聴こえてくる。
その中に昨日聞いた名字さんの音を見つけた。確かに高い音だからわかりやすいかも。
きっと昨日も、一昨日も、それより前にも名字さんは吹いてたんだろうな。








「…うーす。」
「…おはよう。」


俺が朝練を終えて教室に入ると、同じく朝練を終わらせた名字さんが既にいた。
昨日けっこー話したし、目ェ合ったし、無視するのもなんか変だし俺から声をかけてしまった。ぐ…なんか負けた気分…!


「うちの学校って吹奏楽部強いの?」
「毎年金賞か銀賞。全国大会まで進んだことはここしばらくないみたい。」
「金賞なのに1番じゃないの?」
「うん。金賞は何校か貰えて、その中で2,3校だけ次に進めるの。」
「ふーん…変なの。」


1番のはずの金賞が何個もあるなんて変なの。
野球みたいに勝ちか負けか、はっきりしてる勝負の方が俺は好きだ。
だいたい音楽なんてどうやって順位決めるのさ。よくわかんない。


「オーボエって難しいんでしょ?」
「! 何で知ってるの?」
「ググった。」
「…なんか嬉しい。ありがとう。」
「!?」


そんなにググってもらえて嬉しかったのかストレートにお礼を言われて吃驚した。
その表情はすごく柔らかくて、そんな顔もできたのかとダブルで吃驚。
てか、なんか俺が名字さんのために調べたみたいで嫌なんだけど!


「べ、別に!ちょーーお暇だったからだし!」
「あまり認識されてない楽器だから嬉しくて。」
「…何でオーボエにしたの?ラッパとかかっけーじゃん!」
「向き不向きもあるけど…泣くような高音域がいいなーって思ったから。」
「は?」


泣くって何。楽器が泣くわけないじゃん。意味わかんない。


「ねえ、俺にもオーボエ吹かせてよ!」
「…やだよ。」
「えー!」


ただの興味本位で聞いてみたら断られた。何で!?いいじゃん減るもんじゃないし!


「…成宮くんじゃ多分音出せないよ。」
「はあ!?やってみなきゃわかんねーじゃん!」


確かにウィキペディアには難しい楽器って書いてあったけど!
俺ってば天才肌だし?何やっても出来ちゃうんじゃないかなーって!


「んー…」
「な、なに!?」


急に顔を見つめられる。な、何だよ意味わかんない!
近めの距離でまっすぐ女子に見つめられるなんてあんまないから変に緊張する。たとえ相手が名字さんでも、だ。


「成宮くんの唇は多分、金管向き。」
「は!?」
「ラッパとかの方が向いてるってこと。」
「ふ、ふーん!まあ、どうせやるなら目立つ楽器の方がいいしね!」


顔を見られてると思ったら、見られてたのは口だったのか。
…なんかそう思うと、より一層恥ずかしいんだけど。


「ぷっ…あはは!」
「何急に笑ってんの!?」
「ご、ごめん…!成宮くんが楽器やってるの想像して、に、似合わなくて…!」
「はああ!?失礼なんだけど!」


急に笑い出したかと思えばなんて失礼なやつなんだ!
これが友達が言ってた「変な笑いのツボ」ってやつか。
くしゃって崩した名字さんの笑顔は、ちょっとだけ可愛いと思った。





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