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03

「あーー!プリント忘れたぁーー!!」
「いちいちうるせーな…早く取ってこい。」
「雅さん絶対待っててよ!?すぐ戻るから!」


練習の途中で明日書いて提出しなきゃいけないプリントの存在を思い出した。
あーもう!練習を抜け出すとかほんとロスじゃん!むかつく!


「鳴くんどうしたのー?」
「忘れ物!」
「野球頑張ってね〜!」
「うん!」


校舎に戻るとまだ中に残っていた女の子達に声をかけられる。ふふん、俺ってば人気者!
放課後の教室は一部吹奏楽部の練習部屋になってるみたいで、あちこちの教室からいろんな楽器の音が聴こえる。
名字さんもいるのかな。結局オーボエってのがどんな楽器かはよくわからなかった。


「お。」


なんとなく通り過ぎる教室をひとつひとつ確認していったら、俺のクラスの一歩手前、隣のクラスで名字さんを見つけた。
他の教室には何人かいたのに、名字さんは一人だけだ。うわー、ここでもぼっちなの?
名字さんが今吹いてるのが多分オーボエ。黒くて細長い楽器だ。
俺が知ってる楽器ではリコーダーに近いけど音は全然違った。
名字さんが果たして上手なのかはよくわかんないけど、クーラーもない教室で汗をかきながらひたむきに練習する姿は俺達と似たものを感じた。
俺が野球が好きなように、名字さんは音楽が好きなんだろうな。


「…それ知ってる!」
「!!」


見てたら急に知ってるメロディーが聴こえてきて思わず入っていってしまった。
名字さんは吃驚して吹くのをやめた。


「…何で成宮くんがいるの。」
「教室に忘れ物した!それより、それ何だっけ!?ほら、バレリーナのやつ!」
「…白鳥の湖。」
「そうそれ!」


俺が聞き覚えあった曲は「白鳥の湖」っていうらしい。曲名も聞いたことあるような気がする。


「やっぱ…成宮くんでも聴いたことあるんだね。」
「何それバカにしてる!?」
「あ…ごめん、無意識に。」
「むかつく!」


俺にはわからないかもしれないって思ったってこと!?
確かに音楽のことは全然わかんねーけど、こんな有名な曲ぐらい聞いたことあるし!
そして何よりバカにしてると聞いた俺の言葉を否定しないところが一番むかつく!


「…成宮くん忘れ物取りに来たんでしょ?早くしないと練習時間減っちゃうんじゃない?」
「そうだった!じゃ!」
「じゃ。」


そうだよ俺は今名字さんに構ってる暇はないんだよ!
早くプリント取りに行って、一秒でも早く練習に戻りたいんだよ!
俺が教室から出た途端にまた音が鳴り始めた。
…もしかして暗に邪魔だから出てけって言われた気がする。
それもむかつくけど…うん、名字さんの真剣な表情は嫌いじゃないと思った。





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