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02

次の日の朝。
俺が朝練を終えて教室に入ると、名字さんは既に隣の席にいて一人音楽を聴いていた。
昨日、今までよりは喋ったから挨拶ぐらいあるかなーとか思ったけど名字さんは俺に見向きもしなかった。
別にどうでもいいけど!?名字さんからの挨拶を期待した自分にもむかついて乱暴にカバンを置いてみた。やっぱり見向きもしない。






昼休み。
ジャンケンで勝った俺は焼きそばパンをいっこ余分にもらった。ラッキー!
そういえば、名字さんお昼ご飯誰と食べてんだろ?まさか一人とか?ありえる。
…と思って探してみたら、6人くらいのグループに属していた。
へー、お昼一緒に食べる友達はいるんだ。
俺だったらやだなー!名字さんがいたら話題に困りそう…


「それでさ…」
「ぷっ…ふ、ちょっと待って面白くて息できない…!」
「え、ここ別に笑うとこじゃないんだけど!」
「でた、名前の変な笑いのツボ!」


そんな俺の心配とは裏腹に、そこにはあの無愛想な表情をくしゃっと崩して笑う名字さんの姿があった。
え、何それそんな表情筋動くの?爆笑じゃん。
俺が思ってたより名字さんは絡みにくくないのかもしれない。






休み時間。
昼は友達といたくせに、休み時間になるとやっぱり一人で音楽を聞き出した。
両耳にイヤホンを入れて周りの音をシャットアウト。
こんなんぼっちに見えて仕方なくない?
友達との会話よりも優先させるなんて、いったいどんなアーティストなんだろう。
気になったから片耳のイヤホンを奪って聴いてみた。


「何するの。」
「なにこれ。」


流れていたのはなんかどこかで聴いたことあるような曲。
俺の予想に反して歌がはいってない。
こういうの何て言うんだっけ…


「…クラシック?」
「…まあ、そんなもん。」
「え!?名字さんいつもこれ聴いてんの!?」
「そうだけど…。」


よくわかんないけどコンサート会場で聴くような曲。
こんなのを毎回の休み時間に聴いてるわけ?


「やばくない?女子高生としてどうなの。」
「別に休み時間をどう過ごそうと個人の自由だと思うけど…てか返してよ、イヤホン。」


相変わらず名字さんは無愛想な言葉を返して俺からイヤホンを奪い取った。
そしてそのまま自分の耳にすぽっとはめる。
……あーはいはい。俺と会話を続ける気はないってことね!むかつく!






次の授業、現代文。
お弁当を食べた後は身体がぽかぽかして眠くなる。
周りを見ればうとうとしてる奴、机に突っ伏している奴がたくさんいる。俺もそろそろやばい…。
ガリ勉の名字さんはどうかと思えば、やっぱり今日も教科書を真剣に見つめていた。
何がそんなに面白いんだろう。理解できないや。


「はいみんな起きて〜。65ページから68ページまで、隣の人と読み合わせてー。」


先生の声で寝ていた奴がハッと起きる。これやられると吃驚するんだよねー。
てか読み合わせとかマジめんどくさい。隣の奴が仲良い友達だったらお喋りして終わるんだけど、今俺の隣はガリ勉の名字さん…きっちりやらされるんだろうなー、うげぇー。


「……ねえ。」
「……」


…と思ったのに名字さんは教科書を見つめたままこちらに向き直ろうとしない。
何それ、俺とは読み合わせする意味ないってこと?むかつくんだけど!


「ねえ!」
「!?」


むかついたからその夢中になってる教科書を奪い取ってやった。
そこで初めて気付いたみたいで、無愛想な表情が珍しく目を丸くして驚いてる。なんかその顔面白い。


「…勉強してたんじゃないのかよ!」
「し、しー!」


てか、真面目な顔で教科書見てると思ったのに…ちげーじゃん!
教科書に隠れて出てきたのは音符がいっぱい書かれた楽譜だった。
俺に見つかって明らかに名字さんは焦っている。


「あーあー、いいのかな〜?授業中に別のことしてて〜?」
「…寝てる成宮くんに言われたくない。」
「はあ!?今日は起きてるし!」
「うん、珍しいよね。」


せっかく焦ってて面白かったのに、次の瞬間にもういつもの無愛想な顔に戻ってしまった。つまんねーの!


「てかそれ楽譜?ピアノやってんの?」
「私、吹奏楽部だから。」
「へー!」


意外だ。いつもHRが終わったらすぐ教室を出てくから帰宅部なのかと思ってた。
それに吹奏楽って、上の姉ちゃんがやってたから知ってるけど結構体育会系らしい。


「楽器何やってんの?」
「オーボエ。」
「??」


名字さんが楽器やってる姿なんて想像できなかったから少しでもイメージできるように聞いたみた。
が、聞いたこともない楽器の名前が出てきて余計に想像できなかった。


「何それ?」
「…ググって。」
「は!?」


結局「おーぼえ」がどんな楽器かわからず仕舞いで、読み合わせ時間が終わってしまった。
名字さんはまたツンとした顔で前に向き直った。
…読み合わせしてねーし!






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