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倉持

「私高校入ってから風邪一回も引いたことないんだよ!すごいでしょ!」


以前、名字がそうやって自慢していたのを思い出した。
その時は「バカは風邪ひかないからな」っつってからかったけど、今になってその真相がわかった気がした。


「おい名字……名字!」
「わ、え、何倉持?」
「お前顔赤くね?」
「え?そうかな。今日暑いからじゃない?」
「涼しいくらいだけど。」


今日の名字はなんだかいつもと様子が違った。
やけに喉を気にしてるし、顔も赤くて気付いたらぼーっとしている。


「調子悪いんじゃねーのか?」
「そこまでじゃないよ。でもさ、なんか昨日から喉と鼻の間がイガイガして気持ち悪いんだよね。倉持経験ない?」
「…バカか。」
「なにおう!」
「それ、風邪だろ。」
「えっ。」


ほんとバカだ、こいつは。
バカは風邪ひかないんじゃない。風邪ひいたことに気付かないんだ…バカだから。


「きゃっ、倉持くんのえっち!」
「はっ倒すぞ。」


額に手を当てると明らかに熱い。間違いなく熱があるはずなのに、何でこいつは身体を休めようとしねーんだよ。
放課後は保健室が開いてない。とりあえず監督に報告して帰らせるか。


「おら行くぞ。」
「え、どこに?」
「お前ほんとバカだな。風邪ひいてんだから帰れよ。」
「えー!」


動こうとしない名字の腕を掴んで無理矢理引っ張る。
尚も抵抗してくる名字の体は重い。駄々をこねる子供を引く親の気分だ。


「明日準決勝なのにぃ…!」
「あーそうだな。」
「沢村くんが先発するから、俺の勇姿見てくださいねって…」
「そりゃ残念だったな。」
「ゾノも最近調子良さそうだしさー…」
「明日こそ打てるかもな。」
「御幸は……別にいいけど。」
「何か言ってやれよ。」
「倉持と春市くんのコンビプレー、見たかったなー…」
「……」


俺達もそうだけど、ほんとこいつって野球バカ。


「決勝戦で見ればいいだろ。」
「!」
「明日で終わるわけじゃねーんだし。」
「……辛い。」
「は?お前やっぱ…」
「倉持が男前すぎてつらい。抱いて。」
「…ふざけんな風邪移す気か。」


明日はいつも聞こえてた声援がないと思うとちょっと…、ほんのちょっとだけ物足りないと思った。
こいつには絶対言わねーけど。






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