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真田




今まで、キスだけでこれだけの幸福感を得たことはない。


「ん…」


唇と唇を重ねる。
恋人であれば何度もする行為の一つだけれど、前の彼氏の時は心地良いとは思わなかった。…というか、むしろ嫌悪感さえ感じることがあった。
何かの雑誌で読んだけど、こういうのには遺伝子的な相性が関係しているらしい。
ということは、私と俊平は相性バッチリってことなのかな。


「んむ…」


俊平のキスは長い。
何度も何度も角度を変える。上唇を挟んだり、下唇を挟んだり、舐めたり、吸ったり。
前の人はすぐに舌を入れて激しくしてきたけど少し下品だと思ってた。
激しくすればいいってもんじゃないの。…結局最後まで言えなかったけど。


「っ…」


少しずつ、少しずつ深くなっていく。
後頭部をぐっと押さえられて逃げ場をなくされるとちょっと無理矢理されてるみたいでドキドキする。
私も俊平の首に両手を回して精一杯えろい雰囲気を演出してみる。私からリップ音を鳴らすことも忘れずに。


「はぁっ…」


確か、唾液を交換することで相手の遺伝子との相性をチェックするんだったかな。
汚く言ってしまえば他人の唾。そんなものがここまで甘美に思えるなんてどうかしてるのかもしれない。
温かい唇、ザラりとした舌、時折見える鋭い眼光……そのすべてが私の中心を震わせる。
もっと、もっと。
キスだけで何分経ったんだろう。でもまだ足りない。もっと俊平の唇に触れていたいの。


「ほら、深呼吸。」
「ん…」


息をするのを忘れて夢中になってると俊平がワンクッションを置かせてくれた。
私の息遣いを見てこういうところも抜かりない。
出来過ぎで、今までどんだけ経験を積んだんだとか考えてしまう。


「…もっと。」


そんなこと考えても仕方ない。
今、俊平とキスしてるのは私なのだから。
キスだけに、俊平だけに集中したい。唇の小さな脈さえ感じたい。


「…ずっとちゅーしてられる。」
「…おー。」






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