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倉持


「洋一おかえり!」
「…おー。」


久しぶりに実家に帰ったら我が物顔で名前がいたから一瞬家を間違えたのかと思った。


「セッティングはバッチリだよ!早く早く!」
「あー、引っ張んなよ。」


名前は隣の家の同い年の女子。世間で言う幼馴染ってやつだと思う。
名前は歳の離れた兄ちゃんがいることもあって、女子なのにゲーム好きだ。
兄ちゃんには勝てないからっつってよく俺の家に転がり込んでは格闘ゲームばっかしてた。高校生になってもそれは変わらないみたいだ。
2回の俺の部屋まで引っ張られると、既にテレビはゲーム画面になっていた。


「今の私なら洋一なんてワンパンだよ。」
「あ?寝言は寝て言えよ。」


当たり前のように俺のクッションの上に座りコントローラーを握る名前。
いろいろ言いたいことはあるけどめんどくせェ。半年ぶりにコテンパンにしてやろうじゃねーか。


「負けたら関節技決めっから。」
「ふふん、いいだろう!」


自信満々なだけあって、半年ぶりの名前のゲームの腕は確かに上がっていた。
けどそれは俺だって同じだ。この程度なら負ける気しねーな。


「私さ、高校入って彼氏できた。」
「!?」


一瞬の隙。そこをつかれて逆転KO。
動揺する俺にニヤリと笑ってみせる名前の表情は俺の知らないものだった。


「一か月で別れたけどね。」
「…あっそ。」


名前に彼氏ができたと聞いて心がざわついたのは何故か。
きっと、先を越されたという焦りだ。俺が野球に打ち込んでる間に男つくるなんて薄情な奴だ。むかつく。別れたならいいけど。
2回戦が始まる。3階勝負だからまだ負けてねェ。


「好きじゃないのに付き合っちゃったんだよね。」
「…何で。」
「ほら、告白されて嬉しくてつい…ってよくあるパターンのやつ。」
「ビッチかよ。」
「違うし。あ!何その技知らない!」
「ヒャハハ!知らねーの?隠しコマンド。」
「くそう!」


本気を出せばこんなもんだ。2回戦は俺の圧勝。
そもそも名前が使ってるキャラは俺のキャラとは相性が悪い。言わないけど。


「洋一は?彼女できた?」
「…できるわけねーだろ。そんな時間ねーし。」
「時間の問題じゃないと思うけど。」
「なんだとコラ。」


確かに同じ野球部でも彼女がいる奴はいる。
時間の問題じゃないっつーのはわかるけど、俺は作ろうとしてないだけだし。


「あー!やばい!死ぬ!」
「ヒャハハ逃げんなよ。」
「いーやーー!洋一大人げない!」
「同い年だろーが。はい俺の勝ちー。」


そんなこんなで2勝した俺の勝ち。この程度で俺に勝てるとか思ってたのかよ。


「さーて、どの技にしようかなー。」
「洋一、私女子だよ。」
「女子は女子でも名前だろ。」
「そうですけど!?」


同室の後輩は関節柔らかすぎて技決まらねーからちょっとストレスたまってたんだよな。
こいつは身体かてーから面白いリアクションしてくれることだろう。


「よし、キムラロックに決定だヒャハハ!」
「きゃー!うっそマジで?ちょ、やだやだ!」
「観念しろ名前!」


まあ流石に女子っつーのはわかってるから本気で締め上げるようなことはしねーけど。
名前が逃げる前に手首を掴んで床に押し倒す。その腕を体にまわして…


「!」


なんか、柔らかい感触がある。これはきっと、おそらく……おっぱいだ。名前のおっぱいだ。思わず動きを止めてしまった。
馬鹿か俺は。名前の言った通りこいつは女子なんだぞ。
今更遅すぎるけど、俺は自分の軽率な行動を後悔した。俺達はもう高校生。ガキの頃とは違う…男と女なんだ。


「洋一…」
「っ…」


なんつー顔してんだよ。
押し倒した名前はやっぱり俺の知らない顔をしていた。その顔を、俺の知らない彼氏とやらにも見せてたのかよ。そう思うとざわざわと胸の中心がむずがゆくなった。


「んっ…」


もう戻れない。それを覚悟したのはきっと名前も同じだ。
掴んでいた手首を離して、俺は名前という大事な女の子を抱きしめた。





■■
「いちゃつきゃ踏つく(いちゃつきゃへそつく)」…男女がふざけてじゃれあっていると、しまいには本当に肉体関係を結ぶまでに至ってしまう。





end≫≫
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