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御幸

キャッチャーをやってきたからか、人の感情には敏感な方だと思う。
表情、目線、声色、仕草などから、その人が今何を思ってるかは大体わかる。
例えば沢村なんかは一番わかりやすい。…まああいつの場合感情を口に出すことが多いからそれ以前の問題だけど。あと降谷も口数は少ないけどめちゃくちゃわかりやすい。


「あっ、あのさ!御幸!」
「んー?」


そしてわかりやすいのがもう一人。同じクラスの名字さん。


「御幸ってさ、その…好きな子とか、いる!?」
「好きな人?」
「いやっ、私の友達がさ!すごく気にしてて!聞いてって頼まれちゃってさ!!」
「…ふーん。」


嘘が下手にも程がある。視線はあちこちに泳いでいるし、俺と目が合うとすぐ逸らすし、顔は赤いし。
…正直、自惚れでもなく誰がどう見ても俺のことが好きなんだと思う。


「いないかなー。」
「そ、そっかー!」
「…でも気になってる子はいるかも。」
「えっ!?うそ、ほんと!?」


これで隠せてるって思ってるところが面白いよなー。友達のことなのに食いつきよすぎだから。


「よく話しかけられるから嫌われてはないと思うんだよなー。」
「そりゃあ…御幸のこと嫌う女の子なんていないんじゃない、かな…。」
「最初は別にフツーのクラスメイトだったんだけどさ、好意を全面に押し出されるからなんか俺も意識しちゃった感じ。」
「クラスメイト…」


俺が与えた情報をヒントに考え込んでる。…この調子じゃいつまで経っても気付かねーな。


「…誰か教えてあげようか?」
「いっ、いい!聞いたら立ち直れない!…あっ、友達がね!?」
「その友達かもよ?」
「そしたらもっと立ち直れない!」
「はっはっは。」


もう色々と破綻してるから。
そんなことにも気付かないくらい、名字さんは俺の気になる人で頭がいっぱいらしい。


「…その子と、うまくいくといいね!じゃ!」
「え…。」


結局名字さんは俺の真意に気付くことなく行ってしまった。
何が「うまくいくといいね」だ。泣きそうな顔で言うことじゃねーよな。
ちょっとでも自分かも、とは思わねーのな。まあそういうところが名字さんらしいっつーかなんつーか…うん、可愛いと思う。


「御幸…お前好きな子いじめるタイプやろ。」
「引くわー…」
「うわ、お前ら見てたのかよ。」
「いいんか?1ミリも伝わってへんぞ。」
「だよなー。もうちょっとヒント与えてやるか。」
「そのきもい顔やめろ。…名字が不憫だぜ。」
「ええから早く行ったれ。」
「はいはい、行ってきますよっと。」







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