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01

進級して1ヵ月くらいが経ったところで席替えが行われた。
席替えは重要だ。だって、隣になった相手とは日直を一緒にやることになるし、英語や現代文で教科書読みあったり、小テストの答え合わせをしたりする。
どうか、仲の良い友達、もしくは可愛い子になりますように!
そう期待を寄せつつ、俺の隣に机を動かしたのはそのどちらでもない女子だった。






名前は確か、名字さん。
同じクラスだけど話したことは一度もない。けど、多分苦手だと思う。だって見るからに暗いし?
実際隣の席になってもまだ最低限しか言葉を交わしていない。
もちろん普通の女子のような「鳴くん野球部のエースなんでしょ?すごーい!」っていう愛想のある言葉もない。
授業中はいつも真剣に教科書見てるから、きっとガリ勉だ。
休み時間は大体一人で音楽を聴いてる。周りを完全にシャットアウトって感じ。
そんで、HRが終わるとすぐ帰る。
きっと友達いないんだろうな〜。俺とは正反対だね!



そんな根暗な名字さんと日直をする日が来てしまった。
日直ってめんどくさいんだよね。日誌書いて、戸締りして、軽く掃除して…。
そんなことしてる暇があったら一球でも多く投げたい。
それに、名字さんと2人で教室に残るなんて息が詰まりそうだ。
ていうか俺エースだし、日直なんてやんなくてよくない?


「俺部活行くから、名字さんあとやっといてよ。」
「え、やだけど。」


そう思って日直の仕事を託そうとしたら、思いのほかはっきりと断られた。
なんとなく押しに弱そうな、大人しいイメージだったから意外だ。


「俺エースだから練習しないとなんだよね〜。」
「エースの前に学生でしょ?やることはやってから行った方がいいと思うよ。」
「なっ…俺の投球に甲子園がかかってんだよ!?」
「…野球は9人でやるスポーツって聞いたけど。」
「そうだけどっ!」


思った以上にズケズケと言われて語調が荒くなる。それでも名字さんは怯む様子はない。
ますます意外だ。こうやって男子とふつーに会話する人だったんだ。


「成宮くんは黒板綺麗にして。日誌は私書くから。」
「はあ!?話聞いてた!?」


俺は日直の仕事をやらずに部活に行きたいって言ってるのに、とんとんと勝手に話を進められる。
何勝手に分担してるわけ!?


「私じゃ高いところ届かないから。お願い。」
「ふーん?名字さんちっさいもんね!しょーがないなー!」
「……」
「って聞いてないし!」


実際名字さんの身長が何センチくらいなのかは意識して見てないからわかんないけど、まあ俺よりは小さいでしょ。
こうやって頼られると悪い気はしない。
わざとトゲのある言い方をしてみたけど名字さんは既に日誌を書き進めていて無反応だった。



今日の日直で、俺の中で名字さんのイメージが少し変わった。
思ってたより普通に喋るし、ズケズケとものを言う。(黒板消しにもダメ出しされた。まだ汚いって。)
根暗な女子じゃなくて、むかつく無愛想な女子。
あーあー、早く席替えしてほしい!





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