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17

"銀賞だった。"


吹奏楽部の県大会の日、名字さんからシンプルな結果の報告がきた。
銀賞。普通の感覚だったら2位だけど、吹奏楽の大会ではそうではない。前に教えてもらった。
全国大会には進めなかった、ってことだ。
名字さんは今どんな気持ちなんだろう。俺が去年、甲子園で負けた時はすっげー悔しくて、自分が情けなくて、どうしようもない気持ちになった。
周りの全てをシャットアウトして、思い出すのは自分の暴投のことばかり。何人か心配して声をかけてくれたけど、正直一人にしてほしかった。
名字さんは…どっちだろう。何て声をかけたらいいかもわかんないけど、ほっとけるわけない。


"電話していい?"

"ダメ"


聞いたら速攻で返事きた。
なんだよ、いつもこんな早く返事することないくせに。なんだかイラっとして問答無用で通話ボタンを押した。


『…ダメって言ったんだけど。』
「出るの遅い!」


5コール以上したくらいでやっと電話に出た。絶対携帯手に持ってたくせに、出るの遅すぎ。


『今兵庫なんでしょ。』
「うん。初戦圧勝!」
『…次から応援行くよ。』
「これで俺の応援だけに集中できるね!」
『ふふ、何それ。』


声を聞く感じ、思ったより大丈夫そうだ。泣いてるかなとかちょっと思ったんだけど。
いや、泣いたのは間違いない。俺の前では見せないだけだ。


「吹奏楽部はどっか泊まるの?」


俺達は甲子園の間こっちで民宿借りてるけど、吹奏楽部はどうするんだろ。いちいち帰るのかな。


『兵庫の山の方で合宿するの。』
「合宿?大会終わったのに?」
『9月に演奏会あるからその練習。』
「へー!」


大会が終わっても休む間もなく次の練習か。吹奏楽部って思ってたよりハードだな。
じゃあ名字さんもこっち来るんだ。でも山の方か…。気軽に会えるような距離じゃないな。
…ま、応援に来てくれるならいっか!


『…そろそろ寝た方がいいんじゃない?』


まだまだ名字さんの声聞いていたいけど、そろそろ23時。
明日は甲子園2戦目。クリーンナップが強いところって雅さんが言ってた。


「明日は名字さんの分も気合い入れて投げるから!」
『!』
「おやすみ!」
『……』
「…名字さん?」


最後に名字さんの「おやすみ」を聞いて寝ようと思ったのに、途端に声が聞こえなくなった。あれ、電波悪いのかな?


『成宮くん、ずるい…』
「は!?え、何いきなり!」


と思ったら次に聞こえた名字さんの声は震えていたし弱弱しかった。
鼻をすする音も聞こえた。え、もしかして……泣いてる!?


『〜っ、だから電話するの、やだったのに…』
「ちょ、何でこのタイミングで泣くわけ!?」
『泣いて、ないっ』
「泣いてんじゃん!」


いやいや嘘ついてもバレバレだから!


『…ありがとう。』
「え、何が…」
『おやすみ。』
「ちょっと!」


最後は一方的に切られてしまった。一体なんだったんだ…。
…でも、名字さんが弱い一面を俺に見せてくれたと思うとなんだか嬉しかった。
あーもう!目の前にいたらもっとこう…、頭撫でてあげたりできたのに!
早く会いたい。次会えるのはいつかな。






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