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14

成宮鳴。
稲実に通ってたら自然と名前を覚えてしまう有名人。何故なら野球の名門校のここ稲実で1年生からエースナンバーを背負って甲子園を経験しているから。
私も吹奏楽部に入ってその名前はすぐに覚えたし、実際に応援に行って投げる姿も見ていた。
野球のことはよくわからないけど、マウンドに立つその姿は一切の迷いもなく、自分がチームのエースなんだと自信を持っていることが伝わってきた。
1年生のくせにそんな堂々としていられるなんて、どんな神経してるんだろう。純粋にそう思った。

けれど、そんな成宮鳴でも負ける。
去年は甲子園の頂点に立つことなく敗退。そのきっかけが成宮くんのミスだってことは私にもなんとなくわかった。
負けが確定した後の成宮くんはマウンドに崩れ落ち、泣いていた。それが去年最後に見た成宮くんの姿だった。



2年生に進級して成宮くんと同じクラスになった。
成宮くんがどういう人なのかは知らないけど、なんだか元気そうで安心した。
その直後に今年のコンクールの自由曲が決まり、ソロを吹くことになった私に大きなプレッシャーが襲いかかった。3年生を差し置いて、私なんかが、ソロなんて。
成宮くんもこんな気持ちになったのだろうか。だとしたらそのプレッシャーを背負って、なぜあんなに真っ直ぐ立てていたんだろうか。教室の中でヘラヘラしてる成宮くんを、初めてすごいと思った瞬間だった。



そんな成宮くんと隣の席になったのは6月の始め頃。
それでようやく話すようになって、やっぱり図太い神経してるんだなぁと実感した。
言葉の節々にワガママが滲み出てるし、自分の思うようにいかないとすぐイライラするし。こんな子供っぽい人があのマウンドに立ってたなんて信じられないとさえ思った。

だけど不思議とその自分勝手で迷いのない姿は私に勇気をくれた。
私の練習部屋からは野球部のグラウンドがよく見える。
同い年の男の子がエースナンバーを背負って頑張っている。去年の敗戦を経験してなお、その場所に立つということは私以上のプレッシャーを抱えてるはずなのに。
成宮くんが投げる姿を見ると、私も頑張らなくちゃって思えた。


ブブブ


「!」


そろそろ寝ようと思ったところで携帯が振動した。開いてみると成宮くんからのメールだった。


明日も勝つからちゃんと応援してよ!


稲実野球部は今年も順調に勝ち進んでいて、明日は地区予選準々決勝戦だ。
相変わらずの強気な姿勢に思わず笑みがこぼれた。
成宮くんは自覚ないんだろうけど、彼のこういう姿勢が私に勇気をくれるんだ。絶対本人には言わないけど、何度も助けられてる。
今日はぐっすり寝られそうな気がする。返信して、布団に入ろう。






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