dia | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -



12

「成宮くん鶴折れる?」
「折れるけど…」


休み時間。珍しく音楽を聴いてないと思ったら名字さんは折り紙を机の上に広げていた。
鶴を折ろうとしてるんだろうか。端っこには残骸が2つ転がっていた。


「それもしかして…」
「野球部にあげる千羽鶴。」
「本人目の前に言っちゃうの!?サプライズしようって気はないわけ!?」


この時期に鶴を折るなんて、そんなの心当たりひとつしかない。毎年吹奏楽部から野球部に千羽鶴の贈呈があるから多分それだ。
でも野球部のエースである俺を目の前に隠す様子すらないってどうなの?


「…だって毎年もらってるんでしょ?」
「そうだけど!」


それを言われたら元も子もないじゃん。
てか、女子ってプレゼントのサプライズとか好きなんじゃないの?


「折り方教えて。」
「鶴も折れないの!?」
「できると思ったんだけど…いつも友達の真似してたから自分じゃ覚えてなかったみたい。」


鶴なんて今までに何回か折る機会あったはずなのに。名字さんは覚える気が全くなかったみたいだ。
プレゼントする相手にそれを聞くのってどうかと思うけど!いや、全然教えるけど!


「最初は三角に折って…」
「うん。」


少し不本意だけど、他の誰かに教えられてる名字さんを見るのはもっと不本意だから教えてあげる。
俺の指示通りに丁寧に折り紙を折っていく大堀さんの指は白くて細い。俺とは全然違う女の子の手だ。
その手を見てるだけでなんだかドキドキしてきたから、俺はもはや病気なのかもしれない。
今隣で、俺がこんなにドキドキしてることなんて名字さんは1ミリも気付いてないんだろうな。気付かれたくないけど、それはそれでむかつく。


「ねえ、折り紙余分にある?」
「あるよ。」
「一枚ちょーだい!」
「いいよー。」


今、俺の課題は「特別アピール」。チャンスがあればとことん攻めてやる。
俺はモタモタしてる名字さんの隣でテキパキと同じ鶴を折っていく。
名字さんは集中しててこっちは見てない。それを確認して鶴の羽のところに「頑張れ」の文字を書いた。


「これ、名字さんの分ね。」
「え…」


メッセージ付きの折り鶴とか、すげー特別っぽいじゃん?
それを見た名字さんは動きを止めて目を丸くした。
俺ばっかドキドキさせられて悔しいから、これで少しは照れたりしてくんないかな。


「…ありがとう。」
「べっ、別に!?暇だったから!!」


そう思ってたら、名字さんがすごく可愛く笑ったもんだからやっぱり俺の方がドキドキさせられた。










そして昼休み、購買から教室に戻ったところで更に追い打ちをくらうことになる。


「! これ…!」
「…お返し。」


俺の机の上にちょこんと置かれた折り鶴。その羽には「必勝祈願」の文字。そして、いたずらが成功したように無邪気笑う名字さん。
あーもう…!どうにかなりそう。






next≫≫
≪≪prev