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03



 ※ぺー安描写があります




『お願い!一緒に来て……!』


唐突に安田さんからご飯のお誘いがきた。理由を聞いてみると林くんとご飯に行きたいけど2人きりは緊張するからまずは4人で集まりたいということだった。林くんって、学ランの下に派手なシャツを着ていたヤンキーだった林くん?そう聞くとスマホの向こうの安田さんはしおらしく「うん」と肯定した。マジか。中学の頃、安田さんは林くんにいい印象を持っていなかったはずだ。ちゃんと校則守りなさいと説教さえしていたのに……いや、だからこそなのかな?気になっちゃうほっとけない、みたいな?
事情はわかったけど、何で安田さんは私を選んだんだろう。安田さんとはまあまあ仲良かったけど、卒業後も顔を合わせていたわけではないし私より仲良い子はたくさんいるはずだ。それこそ手芸部の子とか。林くんは三ツ谷くんを連れてくるらしいし、その中でうまく立ち回れる気がしない。


「ごめん他の子誘って」
『部長のご指名なんだけど……』
「えっ」


安田さんが部長と呼ぶのは三ツ谷くんのことだ。どちらにせよ納得できない。何で三ツ谷くんが私を指名するの。


『名字さんは断れないはずって言ってたよ』
「……」


確かに借りはめちゃくちゃあるし大したお礼もしていない。私は見えない三ツ谷くんからの圧力を感じて、行くと返事をした。




















「えっと……」
「あー……」


そして当日。安田さんと林くんはわかりやすく緊張して、なかなか会話が進まなかった。安田さんはともかく林くん、お前男だろ。可愛くお洒落してきた安田さんを見て何故気の利いた一言も言えないんだ。……という暴言は怖いので飲み込んだ。
ちなみに三ツ谷くんは少し遅れて今来たところで、「何この状況」と笑って席についたばかりだ。


「そういえば安田さん髪短くなってるね」
「あ、うん。初めてボブにしてみたんだ」
「似合ってるよ〜。ねっ林くん!」
「お、おう」
「確かに印象変わったよね安田さん」


以降、私はおせっかいババアかという程フォローに徹した。三ツ谷くんも世話焼きなタイプらしくうまく立ち回ってくれて、2人の緊張はだいぶ解れて会話が成立するまでになった。


「……」


ふと、三ツ谷くんと目が合った。大して仲が良いわけでもないのにそのアイコンタクトの意味はすぐに理解できた。


「私帰るよ」
「えっ何で?」
「オレも」
「は!?」


徐に鞄を肩にかけて立ち上がる私と上着を羽織る三ツ谷くんを見て焦る2人。安田さんの不安そうな目が私を見上げてきたけど心を鬼にして気付かないフリをした。


「2人きりだと緊張するから慣れるまでってことだったでしょ?もう大丈夫そうじゃん」
「ちょ、ちょっと名字さん!」


マンツーマンで会話できる程に成長できた安田さんに私がしてあげられることはもう無い。というか明らかに好き同士なんだからもはや邪魔者でしかない。奥手な2人が少しでも進展するようにと、暴露的な発言とお金を残して居酒屋をあとにした。


「フッ……」
「え、何?」
「名字さん、雑!」


居酒屋を出た瞬間、半歩後ろにいた三ツ谷くんに笑われた。


「だって、明らかに2人両想いなんだもん」
「だなー」


自分でもキューピッドにしては雑なアシストだったと思う。でもあのくらいしなきゃ進展しないと思ったんだもん。その事に関しては三ツ谷くんも同意してくれた。


「で、オレ達はどうする?」
「?」
「名字さん気ィ遣いすぎて飲んでねーだろ。オレでよければ付き合うけど」


そういえば三ツ谷くんとこうやってゆっくり2人で話すのは初めてだ。さっきまで協力体制にあったからか謎の親近感を感じて、三ツ谷くんに対する緊張はなくなっていた。居酒屋での三ツ谷くんを見る限りものすごくいい人なのでは、と思う。実際私は2回も助けられているわけだし。それに三ツ谷くんの誘い文句に鈴木くんや佐藤くんのような下心は一切感じなかった。


「それにこのまま帰したら、名字さんまた変なのに捕まりそうだし」
「だ、大丈夫だし」


元ヤンという偏見は捨てて、私は三ツ谷くんと2人で二軒目に行くことにした。この前のお礼もしたいし、今なら楽しくお喋りできる気がする。




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