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乾青宗



「冷たい!」
「スカート濡れてるぞ」
「えっうそ!?」


年甲斐もなく裸足で波打ち際を攻めていたらロングスカートの後ろ側がびしょ濡れになってしまった。夜の海は人の精神年齢を5歳程下げるらしい。
青宗とのデートは基本インドアだけど、今日観た映画に綺麗な海が映っていたから「海に行きたい」とワガママを行ったら帰りにそのまま湘南の海に連れてきてくれた。
危ないからもうやめろと引き戻されてタオルを渡される。ひとつしか違わないけどこれじゃあどっちが年上かわからない。
青宗は基本的にいつも落ち着いている。だからこそたまに見せる幼い表情とのギャップにやられたわけだけど、恋人としてはもっと喜怒哀楽を見せてほしいと思う。デートだって私が行きたいって言ったところに連れて行ってくれて、青宗自身がちゃんと楽しめてるのかはいまいちわからない。


「ねえ青宗」
「ん?」
「青宗は私といて楽しい?」


聞いてから後悔した。もし楽しくないって言われたらどうするんだ。思ったことをすぐ口にしてしまう自分の性格が恨めしい。


「ああ。添い遂げたいと思ってる」
「!」


青宗からは想像の遥か上を行く答えが返ってきた。
「添い遂げる」って、何!?なんとなくはわかるけど今すぐ辞書を引いて確かな意味を調べたい。


「えっと、それって……」
「……!」


珍しくもじもじと戸惑う私を見て数秒、青宗も遅れて顔を赤くした。え、その顔可愛い。どうやら無意識での発言だったらしい。


「悪い、つい……」
「えっいや、悪くないよ全然!嬉しいよ!?」


青宗のレアな表情にテンションが上がると同時にプロポーズのような言葉まで戴けて未だかつてない程気持ちがフワフワした。え、私どうしたらいいんだろう。何かフォローを入れた方がいいのかな。でもさっきの言葉はそのまま素直に頂戴したい。ていうかこれってプロポーズになるのかな?私達結婚するの?んん?


「本心だから」
「え?」
「爺さん婆さんになっても、また名前とここに来たいと思った」


青宗もなかったことにはしないようで話題を変えたりはしなかった。添い遂げたいって
、一生一緒にいたいってことでいいんだよね。青宗の熱っぽい瞳が本気だと伝えてきた。握られた手に視線を落とすと、お互いにしわくちゃになった手を繋いで海を眺める光景がスッと思い浮かんだ。


「オレと結婚してくれないか」
「す、する!!」
「……即答かよ」


食い気味に返事をしたら私の大好きな笑顔で笑ってくれた。写真撮りたい。青宗の笑顔はレアなのだ。


「もっと準備してから言うべきだったよな」
「ううん、嬉しい」
「……挨拶に行かなきゃな」
「大丈夫だよ、うちのお母さん青宗大好きだもん」


これからもっと色んな表情を見せてくれるのかな。全部大事にしていきたいな。まずは結婚の挨拶に緊張する青宗をしっかり堪能しようと思う。





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