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場地圭介



「またソファで寝てる!」
「んー……」


名前の家でチューハイ2本飲んで気持ち良くソファでうとうとしていると、風呂から上がった名前の煩い声に起こされた。


「寝るならベッド!ていうかお風呂入ってよ」
「おー」
「はい空返事!」


うるせえなぁ。お前はオレのかーちゃんかっての。
名前とは付き合って2年になる。この前千冬にキラキラした目で「結婚しないんすか」って聞かれたけど……名前はどう思ってんだろうな。
付き合い始めの頃はスッピン見せるの恥ずかしがってたくせに今では見る影もねぇ。頭にターバンのように巻いてるタオルは髪の毛専用のタオルらしく、前にオレが勝手に体拭くのに使ったら怒られた。


「風邪ひいても知らないから」


動く気配のないオレを見てわざとらしくため息をついた名前はソファにもたれて床に座った。タオルからえげつない量の後れ毛が出てスウェットの背中を濡らしてるけど言わないでおいた。
名前がこうやって口煩くするのはオレのためだってことはわかってる。先に寝ないのはオレが寝落ちした時に毛布をかけるためだ。こんぐらいで風邪なんてひくわけねーのに、本当お節介な奴。結婚したらこんなことが日常茶飯事になるのか。
……悪くねぇな。


「名前ー」
「……なに」
「結婚するかぁー」
「……ん!?」


数秒固まって、ぐりんと勢いよく振り返った名前は笑えるくらいのアホ面だった。


「え、うそ、え……はあ!?」


そして続く百面相。驚き顔のレパートリーがこんなにあるなんて初めて知った。おもしれぇ。最後にはなんかキレてるし。何でだよ。


「も、もう一回言って!!」
「やだ。聞こえてんだろ」
「だっていきなりだったんだもん!ねえ、もう一回!もーいっかーい!」


色気のないプロポーズをしたのはオレだけど名前も大概だ。アンコールみたいなノリで催促するもんじゃねぇだろ。絶対言ってやんねぇ。


「ていうか何で今?私すっぴんだし……スウェットだし……ムードとか考えないの?」
「うるせーなぁ」


千冬だったらこういうのいろいろ準備するんだろうけど……オレ達には似合わねぇだろ、そういうの。


「しねーの?」
「するけど!するけども!!」


食い気味に「する」を連呼した名前に思わず笑みが零れた。
結婚かぁ……なんか実感湧かねぇな。具体的に何をすればいいんだ。結婚式か。オレは別にどっちでもいいけど名前はやりたいって言うんだろうな。あ、それよりもまず婚姻届か?


「婚姻届ってどこでもらえんの?」
「ねえ!!もう一回言ってってば!!」


結婚した後もこんな感じで、他愛もない言い合いをして笑ってんだろうなぁ。簡単に想像できる。


「!」
「風呂入ってくるから、ベッドで待っとけ」


うるせぇ口をキスで塞ぐと途端に大人しくなった。
甘い言葉がお望みならベッドの上で嫌と言う程囁いてやる。名前がその言葉に耳を傾ける余裕があるかは保証しねぇけど。





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