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龍宮寺堅



 
「ねえ堅これマジで神泡!」
「おー知ってる」

だって毎日オレが飲んでるやつだし。
いつも度数3%のジュースみたいな酒しか飲まない名前が、今日は珍しくオレが飲んでいるビールを飲みたいと言ってきた。名前はそこまで酒に強くない。グラスに半分以上残した状態ですっかり酔っ払いが出来上がってしまった。

「堅飲んでるの美味しそう」
「同じだっての」
「えー……じゃあちゅーしよ」
「どういう理屈だよ」
「んふふふふ」

意味わかんねー酔っ払いの戯言に笑いながらもキスはする。ガキみたいな触れるだけのキスに名前は満足げに笑った。笑い方が気持ち悪ぃ。

「そろそろやめとけ」
「やだ!今日は堅にとことん付き合うって決めたの!」
「無理だからやめとけって」

もう目の焦点が合ってねぇ。今はまだ楽しいみたいだが、このまま飲み続けたら気持ち悪いっつって項垂れる未来が見える。最悪オレの上で吐かれる。そうなると後悔するのは名前の方だ。名前の手からグラスを奪ってテーブルに置くと不服そうに睨まれた。

「やめちゃうの……?」
「……」

強い眼光はだんだんと力が抜けてきて、とろけた表情でオレの下半身に触れてきた。誘ってやがる。いやらしい手つきに反応しそうになるのをぐっと理性で抑え込んだ。

「名前どうせ途中で寝るだろ」
「寝ないし」
「寝る。てか寝ろ」
「やだ。エッチしたい」

オレがはっきり断ると名前はわかりやすく不貞腐れて膝の上に寝転んできた。そしてTシャツの裾を捲って腹に唇を押しつけてくる。「筋肉ありすぎてつけにくいんだけど」という文句も全部スルーして好きにさせておく。この程度の刺激なら我慢できる。ビールを流し込んでその味に集中した。

「……」

数分後、小さな寝息が聞こえた。

「……ほらみろ」

Tシャツの裾を捲ると人の気も知らないで名前が無防備な寝顔を晒していた。こんなにも早くオレの予言通りになるとは。眉間をぐりぐり押してみてももぞもぞするだけで起きる気配はない。腰に纏わりついた腕を解いて、テーブルに置いたグラスに手を伸ばす。名前の飲み残したビールはすっかり炭酸が抜けてしまっていた。しかし不思議と不味いとは思わなかった。

「んん〜〜……」
「……明日覚悟しとけよ」

ソファ脇に置いてあってイモ焼酎に手を伸ばし、空になったグラスに注ぐ。名前の寝顔を眺めながら一人で焼酎を飲むこの時間が、オレは好きだ。


( 2022.11 )

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