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09

「あっがり〜〜!」
「うげ〜また誠かよー」
「俺ぜってェビリにはなんねェ!」
「ふっふっふ、俺の罰ゲームの餌食になるのは誰かな〜?」


こちらは3年生の部屋。UNOはおおいに盛り上がっています。私が入ってからこれが3回目くらいかな?
最初にあがった人がビリの人に罰ゲームを考えるっていうルールでやっていて、ワダくんはこれで3回目の一番だ。
ちなみに前回ワダくんが一番の時、ビリはテツくんで一番最近受信したメールを読み上げられていた。お母さんからの「合宿頑張って」メールで、テツくんは消えてなくなりたいと嘆いていた。私からしてみれば心温まるメッセージだけど、同級生……しかも男の子に露呈されちゃうっていうのは恥ずかしいんだろうな。そう考えるとワダくんはなかなかのSだ。


「あがり!」
「よっしゃ俺も終わり!」
「あれ?」


気付いたらヤノジュンもコウくんもナオくんもみんな上がっていて、カードを持ってるのは私一人だけになっていた。


「名前さん、罰ゲーム!」


ワダくんがすごくいい笑顔を浮かべてる。


「何をすればいいの?」


負けたもんはしょうがない。罰ゲームも甘んじて受け入れようではないか。


「んー……じゃあ、俺達の質問に答えてください!」
「え、それだけでいいの?」
「はい。ただし、ちゃーんと答えてくださいよ。」
「うん、わかった。」


さっきまでは尻文字だとか一発ギャグだとかだったのに、私の時だけなんか甘くない?年上だから気を遣っちゃったのかな?


「はいはいまず俺!名前さん彼氏いる!?」


真っ先に手をあげたのはコウくん。なるほど、そういう路線か。


「いないよー。」
「マジで!?じゃあっ、年下とか「質問は一人一回な。」
「じゃー好きなタイプは?」
「えー?んー……何かに一生懸命な人、かな。」


なんかだんだん恥ずかしくなってきた。女の子同士の恋バナならともかく、年下の男の子相手にこういう話をするのってすごく違和感がある。


「好きな人いますか!?」
「へっ……」
「あ!その反応はいるんですね!?」
「ち、ちがっ……」
「ちゃーんと答えてください、って言いましたよね?」


なんとか誤魔化したいけど、みんなの視線が痛い。
……いやいやいや言えるわけないじゃん!君たちの監督のことが好きですなんて言えるわけないじゃん!
ってあれ、私朋也のこと好きなの!?確かに中学の時は好きだったけど……今でも好きなの!?


「ぶっちゃけ、監督とどーゆー関係なんスか?」
「!?」
「おま、直球すぎンだろ!」
「なんかまどろっこしくて。」
「名前さん監督のこと好きなんスか!?」
「中学ン時付き合ってたんスか!?」
「コーチとはどうなんスか!?」
「は?え?なに?」


ぐいぐいと直球な質問をぶつけてくる少年たち。何だろうこの状況。逃げたい。泣きたい。
ていうか、何でそんなに私と朋也のこと気にしてんの?うそ、私態度に出してたとか?ん?そもそも私まだ朋也のこと好きなの?


「朋也も呂佳も……2人とも、大事な人かな……あはは。」
「……」
「じゃあそろそろ寝るねおやすみ!」
「あっ」


ワダくんを始めみなさん納得してない表情だったけど私はその場を逃げるように立ち去った。これ以上追求されたくなかったし、私自身頭の中がゴチャゴチャになってきたからだ。彼らのせいでますます部屋に帰りにくくなってしまった。


















「お。」
「!」
「もーUNOは終わったのか?」
「あ、うん。」


どうか眠ってますようにという私の祈りは神様に届かなかったようで、部屋に入る前に朋也と遭遇してしまいました。あんまりだ。
朋也は風呂上りらしくて、肩にタオルをかけたまま歯を磨いていた。髪の毛おろしてるところ初めてみた。私と同じくらいなのかな。
私も歯磨いて即寝ようそうしよう。


「あ、そーだ名前。」
「なに?」
「シップ貼ってくんねぇ?」
「あーはいは……い?」
「背中届かなくてよー。」
「……」


え、つまり背中にシップ貼るってこと?私が?朋也の背中に?私の気持ちも知らないで朋也は鞄からシップを出して上着を脱ぎだした。
本当ありえないこの男。何なのこの男、何も考えてないの?私ばっかりグルグル考えちゃって……あーもうやめやめ!どうせこのおバカは何も考えちゃいないんだから、深読みするだけ無駄だ。


「ケンコー骨の間ね。」
「はいはい。ここらへん?」
「おー。」


最初に貼る場所に手を置いて確認をとってからシップをはる。
そういえば、中学の時もたまにこうやってシップ貼ってあげてたっけ。当たり前だけど、あの頃より全然体つきが変わった。大きくなったし、筋肉だってついてる。


「ありがとなー。いやー、やっぱ若い力には敵わねーや。」
「まだ20の若僧が何言ってんの。」
「いやマジで。やっぱ現役が一番だよな。」
「……ねえ朋也。」
「ん?」
「肩、は……」
「……」


朋也は中学3年生の時に肩を壊した。
桐青中学は軟式でそこまで強いチームじゃなかったけど、朋也はその中で誰よりも熱心に練習していた。口癖のように桐青高校の野球部に入って甲子園に行くんだって言ってた。
でも、肩を壊したことによってその夢は途絶えた。誰よりも桐青に行きたかったはずなのに、朋也は桐青に行かなかった。
私も桐青には行かなかった。別に朋也がいないからじゃなくて、普通に両親の都合だったんだけど。


「俺は……もう投げられない。」
「……そ、っか。」
「でもいいんだ!俺は高校いってマネージャーやって、道ひらけた。今こうやって監督やってんのも楽しいし、将来は美丞に骨うずめてやるつもりだ。」
「……」


中学の時点でもう肩は治らないって言われてたけど……やっぱりそうなんだ。
朋也は野球やってるときが一番楽しそうで、かっこよかった。それは今も変わらない。監督として指導をしてる朋也はやっぱり楽しそうで……かっこいい。
ああ、だから私は朋也が好きなんだなあ、と思った。







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