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07

「ここだよね……。」


GWも半ば、私は県外れの山奥に来ていた。何故か?狭山高校野球部の合宿に参加するためである。合宿自体は2日から5日までの4日間だけど話聞いたの急だったし、私も講義とかバイトとかあるから3日目からの参加になった。
バイトを終わらせてすぐキャリーバッグ片手に電車とバスに揺られること2時間、目的地と思われる場所に到着した。
宿舎は多分あそこ。勝手に入っていいのかな……まだ15時だし、みんな練習してるんだったら先にグラウンドに行った方がいいのかな。まったく朋也め、もうちょっと詳しく教えてくれてもいいのに。


「あー!名前さんだー!」
「ほんとだー!おーい!」
「え?」


とりあえずグラウンドに向かおうと思ったら、遠くから野球部員と思われる声。振り返ると簡易プールで水浴びしてるヤノジュンとコウくんと、あと6人くらいがいた。


「あれ、みんな練習してるんじゃないの?」
「15時から1時間は間食とって自由時間なんスよ。」
「へー。それで水浴び?」
「そー!ちょー気持ちいいっスよ!」


多分水のかけあいっこでもしてたんだろうな。みんなTシャツもズボンもビショビショだ。


「あ、監督なら宿っス。案内しますね。」
「俺も!名前さん、荷物持ちます!」
「わ、ありがとう。」


どうやら水浴びは中断して、ヤノジュンとコウくんが宿まで案内してくれるらしい。なんてできた子たちなんだろう。


「俺、名前さんの私服初めて見た!」
「あれ、そう?」
「そー。いつもジャージだから。」
「そーいえばそっかー。」
「だから公、お前馴れ馴れしい。ちゃんと敬語使えよ。」
「そんなカタいこと言うなよヤノジュン!」
「あはは、私は別にいいよー。ヤノジュンも中学のときはもうちょっとヤンチャなイメージあったんだけどね?」
「なっ……そんなことないっスよ!」
「何したんだよお前ー」
「何もしてねェ!!」


ヤノジュンとコウくんは仲良しさんだ。基本的に部員はみんな仲良しだけど、2人はセットなことが多い気がする。ヤンチャなコウくんとヤノジュンが制御するって感じかな。なんだかんだいいコンビだと思う。


「監督!名前さん来ました。」
「おー、早かったな。」
「思ったより迷わなかったから。ヤノジュン、コウくん、ありがとね。」
「いいえー。」


朋也は宿内の食堂と思われるところでヨシくんの柔軟を手伝っていた。なるほど、休憩時間は水浴び組とか柔軟組とか昼寝組とかがいるのね。
案内してくれたヤノジュンとコウくんはそのまま柔軟組に混ざった。


「で、私は何をすればいいのかな?」
「ああ、普段どおりでいーよ。洗濯はこいつらにやらすし、飯は宿の人が用意してくれるし。」
「あ、そーなんだ。」


てっきりご飯作ったり布団準備したり、女将的なことでもしなきゃいけないのかなーって思ってたけどそうでもないみたい。


「この後は16時から21時まで練習。その後ミーティング。明日は練習試合やるからウグイス嬢やってくんねえ?」
「何それ聞いてない!練習試合って、どことやるの?」
「部内でだよ。2チームつくってガチ勝負。買ったチームは明日のバーベキューの肉が1.5倍になるんだ。」
「へー……なかなか面白いこと考えるじゃん。」
「だろ?あいつらマジ本気だぜ。」


なるほど。合宿の最後をバーベキューで締めるとは、朋也もよくわかってるじゃない。
ウグイス嬢はやるの初めてだけど、みんなの名前を覚えるいい機会かも。なんせ部員は50人いるもんだから、まだレギュラーの子とマネージャーの子と……20人くらいしか覚えられてない気がする。


「あと部屋だけどさ、呂佳が使ってた部屋でいい?」
「え、呂佳は?いないの?」
「明日の午前に外せない用事があるらしくて一回帰ってんだ。明日の昼には戻ってくるって。」
「そーなんだ。いいよ。」
「あと風呂はここな。好きな時間に入って。」
「はーい。」
「あー……一応言ってあるけど、もし覗かれたら俺に言えよ。シめるから。」
「あははっ、ないない!」
「油断すんなよ、こいつら男子校だから女なら誰でもいいってヤツ多いんだよ。」
「呂佳といい何であんたらってこうもデリカシーないんだろうね。」






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