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04

こんにちは、名字名前です。県内の体育大学に通う普通の女の子です。
旧友の頼みを断れなくて男子校野球部のマネージャーを引き受けることになりました。急展開ですね。


「名前ー、こっちこっち。」
「!」


というわけで、今日が初参加の部活です。
高校の場所は知っていたから原付で行くと、校門の前に朋也が立ってくれていた。原付から降りてとりあえず駐輪場に案内される。
しかし……浮く。一応ジャージに着替えてきたけど市販のやつだし髪の毛茶色いし、女だし……男子校だと更に浮く。下校途中の生徒とか部活に勤しむ生徒とかの視線が痛い。


「あーー緊張するなあ。」
「名前が?嘘だろー。」
「何それ。私だって人並みに緊張するんだから。仲良くできるかなぁ。」
「大丈夫だって。面白いヤツばっかだから。それに球児には慣れてるだろ?」
「んー……まあそっか。」


確かに言われてみれば、私の周りは野球関係者ばかりだから普通の人よりは球児に慣れているのかも。
それでも歳の差は大きいと思う。少なくとも2つは離れてるってことでしょ?ん?あんまり大したことないか。


「ちわっす!」
「おー、誠。出席終わったか?」
「はい!」
「悪いけどもう1回集めてくれ。ほら、前言ってたマネジ紹介するから。」
「わかりました!」


誠と呼ばれた子は私に軽く会釈してからグラウンドの方に走っていった。礼儀正しい子だ。多分キャプテンかな。


「あははっ。」
「……何だよ。」
「いや、ちゃんと監督やってるんだなって。」
「当たり前だろ。」


私が笑うと、朋也はちょっと照れくさそうにそっぽを向いた。


「……てかわざわざ集めてまで紹介しなくていいよ?」
「一気に紹介しといた方が楽だろ?」
「そうかもしれないけど……」


50人を前に紹介されるのって緊張しちゃうじゃんか。


「「「ちわ!!」」」


グラウンドには既に50人くらいの球児たちが整列していて、朋也が現れるなり元気な挨拶が飛んでくる。
そしてその隣にいる私に視線が集まっていく。きっと自意識過剰とかじゃなくて、本当に見られてるんだと思う。


「前にも言ったけど……マネージャーが足りないっつーことで今日来てもらった。」
「名字名前です。監督とコーチとは中学の同級生で、今は体育大学に通っています。毎日は来れないけどよろしくお願いします。」
「「「よろしくお願いします!!」」」


うおお、すごい迫力だ。懐かしいなこの感じ。


「じゃー練習に戻ってくれ。村井!武田!」
「「はい!」」
「名前にいろいろ教えてやってくれ。」
「「はい!」」


村井くんと武田くん……この2人がマネージャーね。よし覚えた。確かにこの人数を2人でサポートするのは大変だ。私もマネージャーをやってたからよくわかる。


「村井広正です!よろしくお願いします!」
「武田真一っす!よろしくお願いします!」
「名字名前です。よろしくね。」
「じゃあ、まず部室を案内しますね。」
「うん、お願いします。」




















「後は監督の指示でタイム計ったりノックしたり……」
「うん、だいたいわかった!ありがとね。」
「いえ!こちらこそ本当に助かります!」


部室の場所から水道の場所、氷とかボトルの場所などなど、いろいろ教えてもらった。やることはだいたい中学の時と同じかな。あとは場所を覚えなきゃ。


「よ。」
「あ、呂佳。」
「「ちわっす!」」


ひと段落ついたところでフルフェイス片手に呂佳が現れた。どうやら今到着らしい。
呂佳に対して村井くんと武田くんは背筋を伸ばして挨拶する。ちゃんとしてるなあ。呂佳は貫禄もあるから恐いんだろうか。


「コーチは少し遅れて来るんだ?」
「こっちだって授業あんだよ。」
「村井、武田、今ヒマか?」
「えっと……」
「あ、私ならもう大丈夫だよ。ドリンク作ってればいいんだよね?」
「は、はい。お願いします!」
「じゃーノック手伝え。」
「「はい!」」


今まで面倒見てくれた村井くんと武田くんは呂佳に取られてしまい、私は一人ドリンクを作ることになった。
球児の声に、バットにボールが当たる音……懐かしいなあ。やっぱり私はこの空間が好きなんだと思い知らされる。あまり乗り気じゃなかったけど引き受けてよかったな。朋也と呂佳にも会えるし。


「あのー……」
「はい?あ、ドリンク?」
「いや、あの、違ってたら申し訳ないんスけど……名字のお姉さんっスか?」
「え……」


控えめに声をかけられて何かと思ったら「名字のお姉さん」?確かに私は名字だけど……


「俺、南中出身で……」
「ああ陸の友達!?ちょっと待って見覚えある!ウチに来たことあるよね?」
「そっスね、二回くらい。」
「……ヤノジュン!ヤノジュンでしょ?」
「すげー、よく覚えてますね!」
「ヤノジュンもよくわかったねー。」
「名前さん試合とかもよく来てくれたから。でも髪染めてたんでちょっと自信なかったっス。」
「まあ私もそういうお年頃だからねー。」
「はは、何スかそれ。」


少年はなんと弟の元チームメイトのヤノジュンだった。家に何回か来たことあったし、試合の応援に行った時も少し話したことがあった。
そっかー、ヤノジュンは狭山に行ったんだ。陸ってばそういうこと何も言ってくれないんだもん。私も聞かなかったけど。


「おい、ヤノジュンがマネージャーをナンパしてる!」
「うわマジかよあいつ!」
「ちっげーよ!友達の姉ちゃん!」
「マジで?」


ヤノジュンをきっかけにドリンクを取りに来た部員たちが集まってきた。
なんだ、整列してる時はしゃんとしてて気圧されちゃったけど話してみれば普通に話しやすいじゃん。この先もなんとかやっていけそうだ。




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