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16

「ちっス。」
「よっ。」
「これで全員だな。」


和さん、慎吾さん、山さん、利央、迅が揃ったところで出発。目指すは名字の家だ。
今日は土曜日。そして来週からテスト。一人じゃ勉強に集中できねーっつーことでみんなで集まって勉強することになった。場所がなくて困ってたらなんと名字の家を使わせてもらうことになって、いつも部活帰りに送ってる俺がみんなを名字の家まで案内することになった。


「感謝しろよ〜、準太ァ。」
「付き合う前に家行けるなんてなかなかないぞー?」
「ちょ、今日は勉強しに行くんだから……!」


内心かなりラッキーとか思っちゃってるけど……今日はただ勉強しに行くだけだ。


ピンポーン


「こんにちは!どうぞ入ってください。」
「お邪魔しまーっす!」
「利央、クツ揃えろよ!」


インターフォンを鳴らすと玄関から名字が顔出して中に誘導してくれた。
玄関にはよくわかんないけど綺麗な花が飾られてていい匂いがした。その匂いが名字の匂いと重なって思えてきて、なんだか照れ臭くなる。


「リビングはこっちです。」
「お〜、ひろーい!」


まじで広い。名字の家って金持ちなのかな?
つーか当たり前だけど、名字私服だ。そういえば名字の私服って初めて見るかも。膝上くらいのショートパンツに膝下までのソックス、上はシンプルなTシャツだ。
名字ってこういう服着るんだなあと新鮮に思う。俺的にはもうちょっとこう、ふわふわっとした感じのが似合うと思う。


「あっ!名前さんこれ七五三?かわいー!」
「こら利央!勝手に漁るな!」
「いいですよー。」


利央が早速リビング内をウロウロし始めて飾ってあった写真を手に取った。マジこいつ……!人んちのもの勝手に触るんじゃねーよ。でも確かに可愛い。7歳くらいの名字が着物を着て千歳飴を持ってる。


「あれ、名前サン弟いんの?」
「うん。今中3。」
「へー。桐青?」
「ううん、南中。高校は桐青行きたいって言ってるんだけど、おバカさんだから。」


そう言って苦笑した名字の表情は初めて見るものでなんかドキってした。「おバカさん」って何。可愛いんだけど。言われたい。


「そこのテーブル使ってください。飲み物準備しますね。」
「て、手伝う!」
「あ……ありがとう。」






















勉強会は途中お菓子休憩を挟みながらも割と真面目に進んだ。
今日は勉強会っていう名目だけど場所が名前サンちってことで、俺が気になるのは準サンの反応だ。案の定準サンは始終落ち着かない様子だった。名前サンに数学教える時はすげー優しいのに、俺が聞くと「自分で考えろ」だもんなー。ヒーキだ。


「ただいまー」
「あ、弟だ。すみません、ちょっと……」


どうやら名前サンの弟が帰ってきたらしい。時計を見たらもう18時をまわっていた。5時間くらい勉強してたのかあー。家にいたら絶対こんなやんなかったよ。今日来て正解!面白い準サンも見れたし。


「はー疲れたー……」
「そろそろ切り上げるか。」
「名字の家族も帰ってくるだろうしな。」
「挨拶してくかー?準太。」
「はあ!?い、いーっすよ!」


ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる慎吾サンにつられて俺もニヤニヤしちゃう。準サンが「うぜー」って顔して睨みつけてくるけど怖くないもんね!この事に関しては和さん含めてこっち側だし!野球部は全力で準サンの恋を応援しちゃうってことっスよ?


「じゅーんーー!」
「!?」
「ユニフォーム洗濯物機に入れといてー!」
「あとでー!」
「もー、部屋臭くなるよー?」


突然名前サンの声がこっちまで聞こえてきた。
弟に話してるらしい。階段をドタドタと上がる音も聞こえてきた。いや、それよりも今注目しなきゃいけないのは準サンの顔だ。


「ぷっ」
「な、何スか慎吾さん!」
「くくく……」
「和さんまで……!」
「準太、顔真っ赤。」


準サンは誰が見てもわかる程顔を赤くしていた。
名前サンが「じゅん」って弟を呼んだ声に、自分のことかと思って過剰反応しちゃったんだー。本当準サンってわかりやすい。マウンドでのポーカーフェイスが嘘みたい。


「ごめんなさい、騒がしくて。」
「いやいや、こちらこそ。」
「名前さん、弟じゅんってゆーの?」
「うん。潤うって書いてジュン。」
「じゃー準サンの字とは違うんだぁ。」
「あ、そういえば高瀬くんは準太くんだね。」
「お、おう。」


プププ、準サン明らかに動揺してる!視線逸らしたら名前サンに変に思われちゃうよ〜?


「俺らはそろそろ帰るよ。今日はありがとうな、名字。」
「あ、はい!私も助かりました。ありがとうございました!」


準サンは赤い顔を名前サンに見られないように必死になっていた。





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