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11

昼休み、学校の購買は戦場と化す。
みんな授業が終わる数分前から財布をスタンバイして、授業が終わると同時に教室を駆け抜けていく。カレーパンや焼きそばパンなど目的は様々だけど目指す場所は同じ。そして早く着いた者だけが好きなものを選べる権利を手にする……いわば弱肉強食の世界だ。
俺の今日の目当てはコロッケパン。もちろん授業が終わってすぐ駆けつけたけど、先生の話が長引いたから既に購買は人で溢れかえっていた。まあ焼きそばパンに比べたら人気少ないし、今からでも十分買えるだろう。


「わっ……」
「!」
「ご、ごめんなさい!」
「名字?」
「え……高瀬くん!」


生徒の波をくぐり抜け前に進んでいくと、正面の女子が俺にぶつかってきた。ふらついてたから咄嗟に肩を支えたけど……なんとその女子は名字だった。


「ありがとう。」
「いーえ。でも名字が購買なんて珍しいな。」


まさか購買で名字を見るとは思わなかった。だっていつも弁当持ってたし、それにこの弱肉強食の戦場に名字は似合わない。


「うん、実は今日初めて来たんだけど、みんなすごいね……。」
「あー、うん。」


みんな順番とか関係なしにおばちゃんに注文してくからなー。これタイミングむずいんだよな。名字とか絶対他の人に譲っちゃって注文できないぞ。


「……何目当て?」
「え?」
「買ってくるよ。」
「本当?」
「うん。」
「じゃあ……明太子パン!」
「了解。向こうで待ってて。」
「ありがとう!」


明太子パンというチョイスが妙に面白かったけどそこは我慢した。
申し訳なさそうにしながらも素直に俺に任せたのは、多分自分で買える気がしなかったんだろうな。うん、俺もそう思う。名字に頼られた俺は嬉しくて張り切って人混みの中に突っ込んだ。


「おばちゃん明太子パン!それからコロッケパンと、カツサンド!」
「はいよー!」




















「はい。」
「ありがとう!」


廊下の端っこで待っていた名字に明太子パンを渡すと嬉しそうに笑った。その笑顔が見られるんだったら毎日だって買ってきてもいい。パシリだと思われてもいい。本気で思った。


「いくらだった?」
「いいよ、そんぐらい。」
「え!?ダメだよ、払わせて。」
「この前炭酸もらっただろ?その分な。」
「あ……うん、ありがとう。」


名字ってこういうところ律儀だ。俺も炭酸奢って貰ったんだからおあいこなのに、それでもまだ申し訳なさそうにしてる。


「名字っていつも弁当じゃなかった?」
「今日寝坊しちゃって。」
「え、自分で作ってんの?」
「うん。あ、毎日じゃないよ?」


毎日じゃなくても高校生にしてはすごいと思う。もっとちゃんと名字の弁当見とけばよかった。よし、今度チェックしよう。


「今日6組だよな。誰がいたっけ?」
「今日は迅くんだけだよ。」
「は!?」
「下村くんは風邪でお休みなんだって。」


つーことは迅と名字二人きりってこと?


「……俺も行く。」


いや別に迅を信用してないわけじゃなくて。普通に2人って人手不足だから。



















「たっ高瀬先輩!?俺別に……!」
「いや、手伝いに来ただけだって。2人じゃ進まないだろ?」
「……」


名字と一緒に写真部の部室に入ったら、先に来ていた迅が俺を見るなり怯えだした。
ああそうか、俺が名字のこと好きって野球部の奴らにはバレてるんだった。それでもこんな怯えなくてもいいのに。俺そんな嫉妬深くは……あるか。きっと今日名字と2人きりなのが迅以外だったら機嫌すげー悪くなるんだろうな。


「そういえば……写真部って他にいないんですか?」
「え?」


いつもどおり作業を進めていく中、迅が名字に聞いた。確かに。写真部は名字が作ったって言ってたけど、部活作るにはそれなりの人数を集めなきゃいけないはずだ。


「いるよ。」
「その人達は参加しないんですか?」
「他の部活の方に行ってるの。」
「何人いんの?」
「全員で5人だよ。」


5人か。多分最低人数ギリギリなんだろうな。ていうか転校生の名字がよく5人も集められたな。人柄のおかげだろうか、それとも名字目当てで入部した不届き者もいるんだろうか。


「みんないい人だよ。」
「へー。俺の知ってるヤツいる?」
「んーと……同じクラスの司とか知ってるかな?バスケ部と兼部なんだけど。」
「司?知らねーな。」
「あと2年生は6組の梅ちゃん。それから1年生に奈美ちゃんと健ちゃんって子がいるよ。」
「ふーん……」
(高瀬先輩探り入れてる……。)


とりあえず奈美は明らかに女の名前だから大丈夫。
6組のヤツは「ちゃん」ついてるけど一応タケに確認して、健ってのは多分男だな。そんできっとこの中で一番厄介なのは「司」ってヤツだ。名字と同じクラスで、更に名字に名前で呼び捨てされてるなんて羨まし……ゴホン、とにかく要注意だ。どんなヤツか今度見ておこう。







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