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「#エロ」のBL小説を読む
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03


「名字について?」
「ああ。何でもいいんだ。教えてくれ。」
「…もしかして、妖怪絡みか?」
「……ああ。」


田沼の話によると、西村が言っていた制服のリボンを忘れたり教科書と間違えて漫画を持ってきたりっていうのは事実らしい。
つまづいたり転んだりするのもよく見ると言っていた。それは多分、あの妖のせいだ。
でもわからないな…。畑にいた時は彼女を助けたと思ったのに……何でちょっかいを出すんだろう。
命を狙うようなことはしていないみたいだけど……あの妖のせいで伊倉さんが悪く言われるのは可哀想じゃないか。
何とかしてあげたい。ニャンコ先生なら何か知ってるかな…。


「きゃっ…」
「! 塔子さん!?」


家まであと少しというところで塔子さんの悲鳴が聞こえた。まさか妖に狙われたんじゃ…!?


「ごめんなさいいいい!!」
「ああ、いいのいいの。丁度いいから食べちゃいましょ。ほら、貴志くんも帰ってきたわ。」
「たかしくん…?」
「あ……」


息を切らして玄関を開けると、笑顔の塔子さんに、涙目の名字さん……そして、床に落ちて割れたスイカ。








「あの…本当にごめんなさい…。」
「気にしなくていいのよ。それよりこのスイカ美味しいわぁ。ねえ、貴志くん。」
「はい、とても。」
「…えへへ。」


なんと1組のドジっ子転校生…名字さんはおれのお隣さんだった。
なんでも今年の夏こっちに引っ越してきたらしく、今はおばあさんと2人で暮らしているらしい。
スイカを美味しそうに食べる塔子さんを見て、名字さんはとても嬉しそうにはにかんだ。
うん、塔子さんの言うとおり甘くて美味しい。


「貴志くんとも知り合いだったのね。」
「はい、昨日…」
「ごっごめんなさい…!!」
「?」
「昨日、私がつまづいてびしょ濡れにしてしまって…」
「あらまあ、それで……」
「本当にごめんなさい!今日だって、スイカ落としちゃうし……」
「………」
「…私、小さい頃から本当に鈍くさくて、人に迷惑かけてばっかりで……」


名字さんは唇をかみ締めて視線を落とした。申し訳なくて目が合わせられないんだ。
おれもそういう時がよくあるから伊倉さんの気持ちはよくわかる。
でも、実際に思い悩んでる人を目の前にしたらどう声をかけたらいいのか…おれにはわからなくて…。
励ましたいと思っても、気のきいた言葉は出てこなかった。


「名前ちゃんには名前ちゃんのペースがあるんだから、気にしなくていいのよ。それに私は迷惑だなんて思ってないわ。」
「!」


塔子さんが優しい笑顔で言うと、名字さんは驚いて目を見開いた。
ああ…おれも、何度この言葉に救われたことだろうか。


「…うん。おれも、迷惑だなんて思ってないよ。」
「……ありがとうございます。」


今度は泣きそうな顔で微笑んだ。やっぱり塔子さんはすごいや。
…それにしても……小さい頃からってことは……あの妖、そんな前から名字さんに憑いていたのか…。


『ニャニャーン!!』
「うわっ!?」


いきなり肩に何か重いものが乗っかったと思ったら……ニャンコ先生だ。
塔子さんと名字さんがいる手前ちゃんと猫のフリはしてるけど…食い意地の張ってる先生のことだ。言いたいことはわかる。


「あらあら、そういえばネコちゃんの分がまだだったわね。待ってて今切るから…」
「あ、それなら私のをどうぞ。私はまだ家にありますから。」
「そお?じゃあ…」
『ニャニャニャ!』
「こら先生!」


失礼なことにニャンコ先生は名字さんが差し出すより先にスイカにかじりついた。
まったく本当に不躾だな先生は…!


「ふふ、『センセー』っていうの?このネコさん。」
「え……ああ、ニャンコ先生っていうんだ。」
「プッ…変な名前。」
「そうかな?」
『ニャ!?』






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