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09

「はあ!?おま……バッカじゃね?それでも男か!」
「あーあー煩いっスよー。」


放課後になってニヤニヤした慎吾さんが山さんと一緒に助けに来てくれて、何の変化もない俺と名字の様子を見て言った言葉は予想通りだった。


「俺夏大終わるまで我慢するって決めたんスから!変につつかないでくださいよ。」
「つまんねーー。」


つまんねーって慎吾さん……アンタは人の真剣な恋を何だと思ってんだ。


「我慢するのはいいけど……手遅れになるって可能性もあるんじゃない?」
「え?」
「そーだよな。名前モテんだろ?」
「……」


そういえば名字が俺を呼びに教室に来たとき、木村とか佐々木とか異様にテンション上がってたな……。更に集会の時、澤口なんて思いっきり鼻の下伸ばしてじゃねーか。
肝心なことを忘れてた……名字は男子に人気があるんだ……!


「「……(ニヤリ)」」






















「え?好きな人ですか?」


部活の休憩時間にいきなり慎吾さんと山さんに聞かれた。まさか2人からそんなことを聞かれるなんて思ってもみなかったから、私は思わず持っていたタオルを落としてしまった。


「あ!その反応はいるんだー?」
「誰だよ、言ってみ?」
「い、いません!びっくりしただけです!」


慎吾さんも山さんもニヤニヤして……どうせまた私をからかってるんだ、そうに違いない。大体もうすぐ夏大が近いっていうのに、写真部兼マネジの私が恋なんてしてる暇あるわけないし部員のみんなにも失礼だし……


「慎吾さん山さん何やってんスか!!」
「おー、準太。」
「!」
「あっ、私、洗濯してきます!」


高瀬くんの声が聞こえた途端、私はさっき以上に驚いて高瀬くんの方を振り向きもしないで走り出した。何でそんな失礼なことをしちゃったのかすごく後悔したけど、とにかくさっきの話を高瀬くんに聞かれたくなかったんだと思う。あとでちゃんと謝らなくちゃ。


「? まさか名字に変なこと吹き込んだんじゃ……!」
「いやいやいやそんなことしてまセーン。」
「ホラ準太、休憩終わるぞー。」
「ちょっと……!」





















「あっ……」


洗濯物を干してたら一枚のユニフォームが強い風に飛ばされてしまった。


「あーあ、またやり直し……」


砂の上に落ちたユニフォームを拾ってみると、10番の数字……これ、高瀬くんのユニフォームだ。


「見て見て!高瀬先輩!」
「えっどこ〜?」
「!?」


不意に聞こえた声にびっくりして、思わず拾ったユニフォームを握り締めてしまった。皺ついちゃったかな……どうせ洗うからいいか。


「やっぱかっこいいよね〜。」
「ねー。今度差し入れ持ってこうかな〜。」


下校途中の女の子たちが金網越しにグラウンドを見つめてる。周りを見渡せば他にもチラホラ。
今に知ったことじゃないけど、野球部の人達はモテる。しかもあの女の子達が目で追ってるのは高瀬くん。先輩って言ってたから1年生かな。


「やっぱ彼女いるのかな。」
「そりゃーあんだけかっこいいんだし、いるでしょ。」


彼女という単語を聞いた時、一瞬どきっとした。私がどきっとするのはおかしいんだけど。
でも高瀬くんの……っていうか、野球部の人たちのそういう話はあまり聞く機会がない。なんとなく慎吾さんはいそう。山さんもいてもおかしくないと思う。じゃあ、高瀬くんは……?


「あーもうやばい!本気で好きかも!」
「決めた、今度差し入れ持ってく!」


気がついたら私はその場から走っていた。
とにかくあれ以上、女の子達の会話を聞いてるのが嫌だった。


「なあ名字……」
「へ!?」
「ご、ごめん!そんな驚かすつもりじゃ……」
「ううん!私こそごめん!」


急に後ろから話しかけられてしかもそれが高瀬くんの声だったから、驚いただけ。驚いただけのはずなのに、何故か私は高瀬くんの顔をうまく直視できなかった。


「ど、どうしたの?」
「えーっとその……ドリンク、ないかなーって。」
「切れてた?ごめんね、今すぐ作るから……」
「あっ別に急がなくていいから!」
「……」


自分の顔がいつもより熱いのがわかる。多分、色も赤くなってるんだと思う。高瀬くんの顔まで赤く見えるのは夕日のせいだろうか。


「名字、あのさ……」
「なに?」
「さっき……慎吾さんたちと何話してたの?」
「え……」


「名前好きなヤツいる?」
さっきの慎吾さんの言葉がよみがえってきた。


「べっ、別に何も!」
「そ、そーか?何か変なこととか言ってなかった?」
「言ってなかったよ!」


自分でも妙にハキハキしながら答えたと思う。これじゃあかえって怪しい気がする。でも高瀬くんの言う「変なこと」っていうのもいまいちよくわからなかったのも事実だ。私からしてみれば慎吾さんがいきなり好きな人いるか聞いてくること自体ものすごく変だったけど。


「……それ、俺のユニフォーム?」
「あ、うん。洗濯してたら落ちちゃって……ごめんね、今から洗いなおすんだ。」
「へー……」
「ご、ごめんね私がボーっとしてたせいで……!」
「いや全然!(むしろ嬉しい…!)」
「えっと、じゃあ……あとでドリンク持ってくね。」
「あ、ああ。サンキュー。」


高瀬くんと話す時って、こんなに緊張しただろうか。







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