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02

「「「ありがとうございましたー!!」」」


今日も練習が終わったのは21時過ぎ。まあ野球部の夏なんてこんなもんだ。それを4回経験してる俺はもうこの習慣に慣れてるからそんな苦にはならない。っていうのは別に疲れてないっていうわけじゃなくて、嫌じゃないってことだ。ハードなのは変わりない。


「お疲れ様、高瀬くん。」
「おわっ!?」
「あはは、そんなに驚く?タオル回収するよ。」
「え、あ、何で……」


名字がいるんだ?そりゃ、写真部だから写真撮るって言ってたけど……今21時だぞ!?


「とっくに帰ったかと……」
「監督さんにね、タダで撮らせるわけねーだろって言われて。時間ある時はマネジの仕事やることになったの。」
「へー……」


そりゃあ素直に助かるな。名字は俺の他からもタオルを受け取ってるみたいで、腕に何枚もかけてあった。


「なんかわりーな。」
「ううん。やっぱ私もマネジに未練あったからさ、嬉しいよ。」


汗臭いはずなのに名字は嫌な顔ひとつしない。利央なんて「準さんのタオルまじくさいー」とか普通に言うし。


「帰りチャリ?」
「ううん、歩き。」
「はあ!?」
「え?」


歩きって……21時だぞ!?真っ暗だぞ!?女一人だぞ!?


「送るから、部室の前で待ってて。」
「え!?い、いいって!家近いし!」
「近いっても女一人で夜道歩いて、何かあったらどーすんだよ。」
「大丈夫だよー、この辺の人みんないい人だよ?」
「そーいうんじゃなくてな……とにかく待ってろよ。急ぐから。」
「でも……」
「いーから!」


キリがないと思った俺は#name1の返事を聞く前に部室に走った。言い逃げされちゃあ、勝手に帰れないだろ。























「準太ぁ、お前手ェ早いな!」
「な、何言ってんスか慎吾さん!」


部室に入るなり慎吾さんに背中を叩かれた。手ェ早いとか意味わかんねーし、慎吾さんだけには言われたくない。


「頑張って送ってけよー。」
「な……っ」


聞いてたのか今の!山さんとか和さんとかもこっち見てるし!


「別にそーいうんじゃないっスよ!あいつこんな時間に一人で歩いて帰ろうとしてんスよ!?」
「ほーほー、送る口実できてよかったなー。」
「だから違うって!!」


やっぱり誤解してる……いやいや、普通送るだろ!?俺たちのために写真撮って、マネジもやってくれてんのに一人で帰すなんて……


「ほら、急ぐんじゃなかったのか?」
「急ぐ!けど、ほんと違うっスからね!?」
「はいはい。」


この返事、絶対信じてねえ。




















「……」


結局高瀬くんを待つことになりました。だって高瀬くん、私に有無を言わせずに行っちゃったんだもん。これじゃあ帰れないよ。しょうがないから私はドリンクボトルの整頓をしながら高瀬くんの支度ができるのを待つことにした。
本当に家近いのに……なんだか悪いなあ。方向全然違ったりしたらどうしよう……明日はちゃんと「大丈夫だよ」って言わないと。


「お、ちゃんと待ってたな。」
「高瀬くん。」


様子見のつもりで部室の近くに寄ってみたら丁度高瀬くんが出てきた。
本当に急いでくれたみたいで、エナメルバッグから練習着やら何やらはみ出してる。それを見て思わず笑っちゃったら、高瀬くんが「何だよ」って言ったから、「何でもないよ」って言った。なんか高瀬くん、可愛いなあ。


「高瀬くんは自転車?」
「いや、電車。駅まで歩き。」
「じゃあよかった!私の家駅の近くなの。」
「お、丁度いいじゃん。」


幸い逆方向ではないみたい。よかったー。
でも高瀬くんは電車なんだ。大変だろうなあ……21時まで練習して、それから電車で帰って……それが毎日なんて。


「準さァーーーん何で先行っちゃうんスかぁ!」
「あ、忘れてた。」
「ひどいーー!」


さあ行こうかっていうところで部室から勢いよく出てきたのは1年生キャッチャーの仲沢利央くん。ふわふわの髪の毛ですっごく可愛いんだけど、このでかさ。後輩なのに高瀬くんよりも大きい。でもやっぱ可愛いんだよね。犬みたい。
高瀬くん、いつも利央くんと帰ってるんだ。仲いいんだなー。


「え!もしかして名前サンも一緒に帰ンの!?」
「うん、いい?」
「もちろんっスよぉー!」


にぱっという明るい笑顔で返してくれた利央くん。わー、真っ暗なはずなのになんだか輝いて見える。


「残念だったなァー、準太。」
「だから違うって言ってるでしょ!」
「あ、お疲れさまです。」
「じゃねー名前ちゃん。」
「準太に変なことされたら大声出すんだよー。」
「慎吾さん!」


高瀬くんと利央くんだけじゃなくて、野球部はみんな仲が良いみたい。
先輩後輩はあっても気にせず付き合える仲みたいな……やっぱりいいなぁ、こういうの。





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