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「#エロ」のBL小説を読む
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01

カシャ


「……」


カシャ


「……」


カシャカシャッ


「あーーもう我慢できねぇ!和さん俺行ってくるっス!」
「ちょ、待て準太!」


俺は和さんの止める声を無視してフェンスに向かってズカズカと歩いた。目指すはその先でカメラを構えている女子生徒。
だって気が散るじゃないっスか!練習中にパシャパシャ写真撮られちゃあ!だいたい写真撮んの禁止じゃねーの!?


「おい。」


カシャ


「表情かたいよ?もっと笑って!」


こいつ……返事の変わりに写真撮りやがった……!
表情かたいのも当たり前だ、こちとらそのシャッター音が気になって練習に集中できねーんだよ!笑えるか!


「なに撮ってんだよ。」
「? 写真。」


当たり前のように答える女子。いやいや俺はそんなこと聞いてねー。ってか見りゃわかるじゃねーか。バカにしてんのか?


「許可なしに写真撮ってもらっちゃ困るんだよ。」
「許可ならとってるよ。ほら。」


ヒラリと、フェンス越しだけど目の前に差し出された1枚の紙。そこには顧問のサインと監督のサイン。


「な、何で……」
「準太!名字はいいんだ。」
「私、写真部の名字名前っていいます。ちなみに隣のクラスだよ。」


……写真部?
























何でも名字は今年になって写真部を立ち上げたらしい。確かに、去年はこんなことなかったもんな。


「本当ごめん!!」
「いいよそんな謝らなくても。」


名字は部活で来てたのに、ミーハーファンと間違えるなんて本当ダサいことをしてしまった。しかも俺、すっげー感じ悪かった。


「悪いな。でもたまにいるんだ、許可なしに写真とりまくる生徒が。」
「あはは、モテモテ集団は大変ですね。高瀬くんが間違えるのもしょうがないですよ。」
「ごめん。」


それなのに笑って許してくれる名字はすげーいいヤツだ。ていうか今俺の名前……何で知ってんだ?


「エースピッチャー、高瀬準太くんだよね。」
「ああ。」
「すっごくいいシンカーもってるんだね!キレがよくて見てて気持ちいいのなんの!」
「お、おおう……」


そう思ってたらフルネームも呼ばれて吃驚したのに更にシンカーのことまで褒められて、俺はどうしていいかわからず唖然とした。
こいつ普通の写真部ってわけでもねーじゃん。何でそんな野球詳しいんだ?普通のヤツならシンカーなんて聞いてもわかんないだろ。


「野球詳しいな。」
「まあ。実は中学では野球部のマネージャーやってたんです。」
「へえ……」
「何でマネージャーやんなかったの?」


今うちの部にマネージャーはいない。変な下心がある奴にマネジやられても迷惑なだけだからいらないなんて思ったけど、実際のところ男所帯だと大変だし他校のマネジを羨ましいと思うのも事実だった。名字がいてくれたらいろいろ助かったんだろうな。


「私、今年編入してきたの。」
「へー、どこから?」
「群馬から。」


だから知らなかったのか。うちの学校中高一貫だし外部入学でも1年もすれば顔ぐらいわかるしな。
そういえば4月に隣のクラスに編入生がきたって、クラスのやつらが話してた気もする。見に行ったヤツらも何人かいたけど、俺はその時興味なくて行かなかった。


「でもマネージャーやろうと思えばできただろ?」
「まあ……そうなんですけど……」
「やりたくなかったの?」
「ううん。迷ったんだけど……今更入っても迷惑かなーって思って。」
「そーか?」


そんなん別にいいのに。むしろ名字みたいな奴だったら大歓迎だ。


「でもやっぱり野球のこと諦めきれなくて写真部つくったんだけどね。」
「今からでもやれば?間に合うんじゃね?」
「ううん。私写真撮るの好きだし、楽しいよ。」
「ふーん……」


って何をそんな必死に名字を勧誘してるんだ俺。ちょっとしつこかったな。これ以上はやめておこう。


「ほら、河合先輩も高瀬くんも、休憩時間終わりましたよ。」
「ああそうだな。行くぞ準太。」
「うっス。」


とにかく今は夏大に向けて練習だ。






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