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「#エロ」のBL小説を読む
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「じゃあねー。」
「うん、また明日。」


毎週水曜日はフルで授業があるから帰る頃は夕暮れになっています。でも今日は最後の授業が15分くらい早く終わったからちょっとマシだな。
最近は特にレポートもないし、帰ったらご飯食べて、撮り溜めしてたドラマでも見ようかな。


「あ、名前ちゃんお疲れさま。」
「!?」


駐輪場に行くとあれ、気のせいかな。折原さんが私の自転車にまたがってる。すごくニコニコしてる。


「そ……それ、私の……」
「ほら、早くカギ出して。俺がこいであげるよ。」


……いやいやいや普通にありえませんから!
それ私の自転車だし、折原さんがこぐってことは私は荷台に乗ることになってそれってつまり……無理!絶対無理!


「名前ちゃん今日フルコマだから疲れてるだろうと思ってさ。嫌かな?」
「………」


そう聞かれるとはっきり「嫌」とは言えないじゃないですか……。
いや、バイト先に嫌がらせまでしてくる人だもん……ここは一つはっきり嫌って言っといた方が……っていうか何で折原さんが私の時間割把握してるの?私言った事ないよね?


「ほらほら、早くしないと人が集まってきちゃうよ?」
「っ!」


確かに…。さっきの授業が早く終わったからいいものの、あと10分くらいしたら人がどわーっと押し寄せてきちゃう…!折原さんといるところを学校の人に見られるのは、嫌だ…!
でもそれなら折原さんが自転車から降りてくれれば、全て丸く収まるんだけどなあ…。


「安心してよ、俺安全運転だからさ。」


じれったくなってきたのか、自転車のベルをチリンチリンと鳴らし始める折原さん。ここは私が大人になるしかない…!そ、それに体力の節約にもなるし!
そう考えれば大丈夫!家に帰ったらご飯食べながらドラマ見るんだもん!イケメン見るんだもん!


「お、お願いします…!」
「おっ。じゃあ行こうか。」


私はおずおずと折原さんに自転車の鍵を渡し、その後ろ……荷台に腰を下ろした。


「……荷台じゃなくて俺に掴まりなよ。落ちちゃうよ?」
「う……失礼、します…。」


折原さんに促されて私の手は荷台から折原さんの肩へ。確かに落ちるのは嫌だ。けど……物凄く恥ずかしい…。


「肩か……まあいいや。じゃあしゅっぱーつ!」
「……」


何でこの人こんなに楽しそうなんだろう…。
でもちょっと慣れてきたかも。今日とかこの前みたいによくわからない嫌がらせはしてくるけど、大した実害は無いし…。静雄さんが言う程危険な人でもないんじゃないかな。行動は本当に意味わかんないけど…悪意は感じない。


「家直行でいい?どっか寄ってく?」
「い、家直行で!」


果たして私の家の場所を臨也さんが知っているのだろうかと思ったけど…多分知ってるんだろうな…。なんか怖くて深くは追求できなかった。


ぐんっ


「!?」


急に自転車のスピードが上がった。何事かと思ったら簡単で……坂でした。
うちの大学は山手前にあるから行きは坂を登っていくことになるんだけど、その分帰りは下りだから自転車だとすごく楽になる。
ノンブレーキだと相当なスピードが出ちゃうから、私はいつも少しずつブレーキをかけながら下ってる。それなのに折原さんってば、ブレーキかけてないんじゃないかって程のスピードを出しています。
折原さんの背中で私からは前は見えないんだけど、ちょ、これ大丈夫ですか!?自転車が出すようなスピードじゃ無い気が……


「ふあっ」
「おっと。危ないからちゃんと腰掴んでてよ?」


風圧に負けて折原さんの肩から私の右手が外れると、折原さんはその手をとって自分の腰に回させた。
その間片手運転だったのに折原さんのハンドル捌きは見事なものだった。
それから後は更に速くなって、坂が終わった後も結構なスピードを出すものだから私は最後まで折原さんの腰に腕を回したままだった。





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