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06

「おっ。」
「あ…」


新宿を歩いていたら買い物袋を提げた名前ちゃんに出くわした。
今日は本当に偶然。まさか新宿の街中で何の算段もなしに名前ちゃんに会えるとは思ってもみなかったなあ。
あはは、名前ちゃんびっくりしてる。逃げちゃうかな?そしたら今日は追いかけよう。折角会えたんだし。


「…っ…」


名前ちゃんは少し挙動不審に頭を動かした後、唇をかみしめて俺の方に近づいてきた。おっとこれは予想外。いったい何をしてくれるんだろうか?
俺は歩み寄るのを我慢して名前ちゃんが来るのを待った。


「あ、の…!」
「…なに?」


名前ちゃんが立ち止まったのは、会話をするには少し遠すぎる距離だった。そんなに俺のことが嫌いなのかなあ。


「き…昨日は、ごめんなさい…!」


そう言って90度くらい体を折り曲げる名前ちゃん。ますます予想外だ。
ごめんなさいって……意味がわからないし、街中で頭下げられるのはちょっと目立つかな。


「その…、暴力をしてしまって……」
「…ああ、肘鉄のこと?なかなか効いたよ。不意打ちだったしね。」
「ごっごめんなさい…!」


わざわざ昨日のことを謝りに来てくれたんだ。可愛いなあ。あんなのシズちゃんが投げてくるゴミ箱や自販機なんかに比べたら大したことないのに。
まあ、確かにおとなしそうな名前ちゃんから肘鉄くらうとは思ってなかったけどね。だからこそ面白いんじゃないか。


「あの、お詫びに……その、甘いものは好きですか?」
「うん、嫌いじゃない。」
「じゃあ、買ってくるので待っててください……」
「やだ。」
「えっ!?」
「お詫びをしてくれるんだったら、一緒にケーキでも食べようよ。」


だってそれを渡したら名前ちゃんさっさと帰るでしょ?それじゃあつまらない。
俺はもっと名字名前という人間を深く深く知りたいんだ。こんなに興味をそそられる人間は久しぶりだなあ。


「…う……」


あはは、名前ちゃん困ってる。俺とは一分一秒も長く一緒にいたくないっていうのが本音だろうね。


「……はい。」


苦渋の選択で出した答えはイエス。
名前ちゃんってお人好しというか……いろいろと人生損してるんだろうなあ。可哀想に。これでもう君は逃げられない。


「じゃあ行こっか。池袋はシズちゃんがいるから新宿ね。」
「あ…」


名前ちゃんが言い出したことなのに、主導権はもう俺のもの。
名前ちゃんは俺の後ろを一生懸命ついてきた。さて、どこに連れていってあげようかな?




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