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04

静雄に助けられた次の日。
名前は学校帰りに新宿で有名なシュークリームを静雄へのお礼として買っていた。ちゃっかり自分の分も。
一昨日、昨日と名前に接触してきた青年は静雄の同級生らしく、事実なのだろうがどうしても「友達」には見えなかった。
とりあえず困っていたところを助けてくれた静雄に対してはお礼をしなければと思い、前々から気になっていた噂のお店のシュークリームを思い切って買ってみたのだった。


「やあ、名前ちゃん。」
「ひっ…!?」


ほくほく顔で店から出て来たところで、例の青年……折原臨也が立っていた。
二度会ったから流石に三度は無いだろうと思っていたし、2回とも会ったのは池袋だったため思いっきり油断していた名前は即座にダッシュして逃げることができなかった。


「ひっ……て、そんなバケモノじゃないんだからさァ。」
「ご、ごめんなさい……。」
「ここのシュークリーム美味しいよね。そんなに沢山買ってどうするの?」
「え、と……何で……」
「ん?あ、俺も池袋に住んでると思った?池袋は好きだけどあそこにはシズちゃんがいるからさァ。普段は新宿にいるんだよ。」


名前は極度の男性恐怖症だ。
子どもや老人、それから慣れ親しんだ静雄や幽は平気なのだが、特に高校生より上の男性が苦手で、街で全然知らない人とすれ違うときでさえつい大幅に距離をとってしまう程だ。視線を交わすなんてもっての他。
したがって臨也と対峙して会話しているこの状況でさえ塁にとってかなりのプレッシャーになっている。
臨也はそんな名前を面白そうに見下ろしながらも饒舌に口を動かした。


「名前ちゃん、シズちゃんの彼女ってわけじゃないんだね。」
「……!」


ぐいっと顔を近づけると、極端に身を引く名前。あまりにも距離が近くて声を出せず、必死に首を縦に振って肯定した。


「昨日はとんだ邪魔が入って肝心なことが伝えられなかったけど……」
「っ…」
「君に興味がある。」
「!?」


臨也はその反応を楽しむかのように、わざとまた顔を近づけて名前に囁いた。
今度は肩を掴まれてしまったために距離をとれず、肌に臨也の吐息を感じて何も考えられなくなってしまった。


「別に取って食おうってわけじゃないからさ、仲良くしてくれると嬉しいな。」
「……。」


最後に臨也は涙目になってしまった名前の頭をポンと撫でて、人混みの中に紛れていった。
名前はしばらくその場から動けずにいた。




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