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03

昨日の人はいったい何だったんだろう。
いきなり男の人に声をかけられて吃驚しちゃってあまり内容を理解する余裕はなかったけど、とりあえず静雄さんのお友達らしいことはわかった。
一昨日、私と静雄さんが一緒にケーキ屋にいたところを見て、それで私に声をかけた……って言ってた気がする。
何はともあれ、失礼なことをしてしまったな。いくら静雄さんのお友達でもやっぱり男の人はダメだ。静雄さんや幽くんは平気なのになあ。今度静雄さんに会ったら、ごめんなさいって伝えてもらおう。
えーっと、名前何だったかなあ……やばい、肝心なところで頭真っ白だったかも…!顔は思い出せるんだけど……


「やあ、こんにちは。」


そうそう、こんな感じで全身黒くて、髪の毛も黒くて、それで静雄さんとはまたジャンルの違うイケメンで……


「ひっ…!?」
「おっと、今日は逃げちゃダメだよ。」


昨日の人にまた会いました。
反射的に逃げようとしたら襟首を掴まれた。服が食い込んでそれ以上進めなくなった私はその場で立ち止まる。恐る恐る振り返ると、昨日の人がニコニコと笑顔を浮かべていた。
イケメンだけど……やっぱり無理!でもまだ掴まれてるから逃げられない!どどどどうしよう、昨日の私の態度が無礼だったから怒ってるのかもしれない…!


「昨日はごめんね。急で吃驚したでしょ?ちょっと君と話してみたいなーって思っただけなんだよ。」


首根っこを掴んでいた手が私の肩に置かれて、くるっと回された。
必然的に正面には昨日の人がいて、更に私に目線を合わせてくれて本当に目の前に男の人の顔が……!


「あれ、固まっちゃった。名前ちゃん?」


どうしようどうしよう泣きそう…!一刻も早くこの場…この人の前から立ち去りたいのに、肩掴まれてるから動けないどうしよう…!


「いーーーざーーーやぁあああ!!」
「げっ、シズちゃん……」


シズちゃん……静雄さん!?
肩を掴んでいた手が緩んだから振り返ってみると、いつものバーテン服に身を包んだ静雄さんがいた。
私は思わず静雄さんに向かって走った。


「あ。」
「名前!?何でお前がノミ蟲なんかと……」
「うっ…静雄さん……」


静雄さんのもとまでたどり着くと、安心感からか今まで堪えていた涙が溢れてきた。静雄さんあったかい……大きい……安心する…。


「臨也テメェ……名前に何しやがったああ゛!?」
「何もしてないよ。その子が勝手に泣いてるだけ。」
「名前に近づいたっつーだけで重罪なんだよ、二度と近づけねェようにしてやる…」
「へー。やっぱりその子、シズちゃんの彼女なの?」
「な……ちげェ!!」
「あれ、違うの?なーんだ残念。」
「さてはテメェ、名前を利用しようとしやがったな…!」
「あはは正解!シズちゃんにしては冴えてるねェ。」
「……殺す!今日こそ殺す!絶対殺す!」


静雄さんの大きな背中に隠れることで大分落ちついてきた。
改めてお友達であるはずの静雄さんと臨也さんの様子を見てみると……えーと、まがまがしい、です。とてもお友達には見えません。
静雄さんの怒り様って言ったら普段の比じゃないし、自称お友達の人もなんかナイフ出してるし……え!?状況がよくつかめない。


「名前。」
「っはい!?」
「ここにいたら危ねェから家帰れ。」
「え、でも……」
「心配すんな、あのノミ蟲は俺が今日殺す。」


それはそれで心配なんですけど……私は深々と静雄さんにお辞儀をしてその場から逃げた。
昨日といい今日といい、家に走って帰ることになるなんて……筋肉痛になりそう。




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