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11

「おかあさん…、こわくてねむれない…」
「あら、どうして怖いの?」
「おばけのゆめをみたから…」
「…おばけが怖いの?何で?」
「だって、おばけは名前のことたべちゃうんだよ。おかあさんとおとうさんもたべちゃうんだよ。」
「あっはっは!そんなことしないよ。」
「ほんとに?」
「しないしない。大丈夫よ、お母さんあいつらと友達だから!」
「ともだちなの!?」













「名字……」
「ん……あ、たぬまくん……」


なんだかすごく懐かしい夢を見た。
小さい頃の私は本当に怖がりで、天井のシミだとか机の木目とかにもビクビクして、何かあるとすぐにお母さんに泣きついていた。
その度にお母さんは私の大好きな笑顔で笑って、頭を撫でてくれた。私は、お母さんが大好きだった。


「今ね、子どもの頃の夢を見ていて…」
「名字、あのな…」
「名字〜、おれの授業は夢見るほどつまんないのかー?」
「ひっ……ご、ごめんなさい!」


じゅ、授業中だったああああ!!数学のウド先生が青筋を浮かべてらっしゃる!あああ前の席の田沼くんの肩が揺れている!これ絶対笑われてる!


「練習問題当てるからちゃんと聞いとけよー。」
「はい!ごめんなさい!」


ウド先生に誠意を込めて謝罪してから、教科書と黒板を睨めっこ。
うわあ、寝てる間にこんなに進んじゃってる…!ど、どうしよう大事なところなのに…!田沼くんに後で聞いたら教えてくれるかなあ……


「……はぁ。」


また自分の鈍くささに呆れて小さな溜息をついた。
ふと窓の外を見てみたら、短距離の測定をしているのが目に入った。そういえばそろそろ体力測定の時期かあ…。私長距離は苦手なんだよなあ…。


「…!」


今走ってるの、夏目くんだ。わあ、夏目くんって足速いんだ。4人中1番だった!
走っている夏目くんの横顔が昨日の横顔と重なる……。昨日のアレは何だったんだろう…。
よくわからないけど、その時の夏目くんがあまりにも綺麗で見惚れてしまったのは覚えている。それから、夏目くんの正面に私が今まで見たことがない「もの」がいた。あれは………もしかして………


「名字、答えてみろ。」
「………はッ!ごめんなさい!」
「…名字。今日宿題集めるからお前まとめて職員室まで持ってこい。」
「はい!」


ああ、本当に私ってアホだ…。










「半分持つよ。」
「あ……ありがとう!」


先生に言われた通り、私は教壇に積み上げられたノートを職員室に持って行こうとしたら田沼くんが上半分をひょいと持ってしまった。遠慮する前に行動してしまうなんて…!田沼くんめ、やりおる。
しかも半分とか言っておきながら、絶対田沼くんの方が量多いよ!そう抗議したら持ち直すのめんどくさいとか言ってかわされてしまった。もう、田沼くんてば優しすぎるんだから!


「なあ名字……」
「あ……夏目くん…」


田沼くんと職員室までの廊下を歩いていると、窓の外に体育を終えたであろう夏目くんがいた。
体操着から見える手足は女の私よりも白くて綺麗かもしれない……って変態的なことは置いといて!
夏目くんは何やら誰かと話しているように見える。でも、その相手が見当たらない。
夏目くんの視線は正面に向いてる。あれ、ちょっと待って何かボヤけて見えるような……


「!!」
「!!」


目をこらして見ているとふいに夏目くんと目が合ってしまった。
夏目くんは目を見開いて、それから逃げてしまった。


「………」
「……行こう、名字。」
「うん……。」


夏目くんは隠し事をしている。
そして、それは私なんかが踏み込んでいい領域ではなくて、夏目くんもきっと私が関わらないことを望んでいる。
それでも……、私は夏目くんの力になりたいのにな…。







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