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09

「あ、夏目くんおはよ…」
「おはよう。じゃあ、おれ急ぐから…」
「あ…うん…。」









最近夏目くんから避けられている気がする。
今日の朝だって、家出たところで丁度あったのに先行っちゃうし…。いつもなら一緒に行ってくれるのに…。それに、急ぐんだったら私だって一緒に急ぐくらいするのになあ。
挨拶もなんとなくよそよそしくなった気がする。目をちゃんと合わせてくれなかったり、すぐに逸らしたり…。
……とりあえず何を言いたいのかと言うと、寂しい、です…。


「はあ……」
「どーしたんだよ、名字。」
「田沼くん……」


盛大な溜息をついたら前の席の田沼くんが振り向いてくれた。
田沼くんは優しい。私がドジをしてテンパってると落ち着かせてくれるし、解決策を出してくれる。
同じ転校生ということで親近感もあって仲良くしてもらっている…と私は勝手に思っています。
…そういえば、田沼くんと夏目くんって仲良しだよね…?田沼くんに相談してもいいかなあ…。


「…とりあえず言ってみろよ。言わなきゃわからないだろ?」
「……田沼くんは優しいなあ…」


ほら、今もこうやって私が悩んでることを見抜いて、私が言いやすいように言葉をくれる。


「あの……田沼くんはさ……最近夏目くんとどう?」
「は?」


あれ、ポカンとされてしまった。聞き方がいけなかったのかな?


「えーと、夏目くんと、普通に話したり、する?」
「するけど……何で?」


田沼くんとは普通に喋ってるんだ…。
となると、夏目くんは私をピンポイントで避けてるってわけで……う、ショックだ…。
俯いたら田沼くんが心配そうに私の名前を呼んだ。ああ、田沼くんに心配かけちゃダメだ。


「ううん、それならいいの。」
「………」


その日の授業内容はあまり覚えることができなかった。












家に帰ったら動物たちにご飯を与えるのが私の日課です。
動物というのは本当様々で、猫・犬から鳩や燕、猪まで……何故か家にはいろんな動物が寄ってくるんです。
何でも昔は酪農をしていたらしく、家の敷地は無駄に広い。その場所にいろんな動物が住み着いているってわけです。


『ニャー』
「あ、クロ!」


縁側で私が作った炒め物を食べてくれる動物たちをボーっと眺めていると、私の膝の上にクロが乗った。
そういえばクロには夏目くんと畑仕事をした日以来会っていなかった。久しぶりだなあ。
動物は基本的にみんな好きだけど、黒猫には少し特別な思い入れがある。夏目くんも黒ニャンコが好きって言ってたっけ。


「………」
『ニャー』


クロが心配そうに私の顔を舐めた。
この子とはこっちに来てから一番長い付き合いだから、私が落ち込んでるのもわかっちゃうのかな。ふふ、クロにまで心配させちゃうなんてダメだなあ、私。


「私…夏目くんに嫌われちゃったのかなあ……。何か、気に障ることしちゃったのかなあ……。」


クロの頭を撫でながらポツリポツリ呟いてみた。
せめて、また前みたいにお喋りさせてほしいなあ。
もし夏目くんが私のせいで怒っているんだったら、ちゃんと「ごめん」って謝らせてほしい。


「あのねクロ、私昔からドジばっかりで……周りの人に迷惑ばかりかけてきたの…。」


私は一生懸命やってるつもりでも、それが裏目に出てしまったり空回ったり……前の学校でも友達にはたくさんたくさん迷惑をかけてしまった。
迷惑をかけているのは今も同じ。でも、ここの人たちは温かい。私が失敗しても「気にしないで」とか「大丈夫だよ」と、声をかけてくれる。それが私は嬉しくて、嬉しくて………


「寂しい……なぁ…。」
『……ニャー』







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