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シャボン玉

「名前って弱いよね。」
「うん。わかってるならやめてくれませんか。」










いつものように大量の書類を処理しているところに、任務から帰ってきた団長…つまり神威に押し倒された私。
押し倒されたって言ってもそんな色気のあるモンじゃない。私の右腕を掴む力はとんでもない。骨が軋む音が聞こえる気がする。物凄く痛い。


「何でだろう?俺と同じ夜兎なのにね。」
「神威は夜兎でもずば抜けてるからね。」
「それでも弱すぎじゃない?」
「私は頭良いからいいんだよ。っていうか痛い。折れる。」
「うん、あともうちょっと力入れたら折れるね。」
「私の手を折ったら面倒臭い書類全部団長サマに回ってくるんだからね。」
「じゃあ阿伏兎にまわすよ。ちょっと折ってみたくなっちゃった。」
「いやいやいやそんな棒アイスみたいなノリで言うもんじゃないよね。」
「だめ?」
「ダメ。可愛く言ってもダメ。」
「うーん、残念。」


神威の暴力は今に始まったことじゃない。被害者も私だけじゃない。…でも比較的多い気がする。
この前だって神威にブン投げられた所為で包帯だらけだったんだから。
ここまでしておいて本人は特に悪いことをしたなんて思っちゃいない。
まあ私もこれでも弱いなりに夜兎だから治るのは早いからね、いい加減慣れた。
でもやっぱり痛いのは嫌だ。


「そうだね、諦めたんだったらまず離そうか。そしてどこうか。」
「咲知ってる?俺弱い奴には興味無いんだ。」
「知ってるよ。興味無いんだったらどいてくれるかな。」
「強い奴は殺したくなるけど、弱い奴は殺す気にもなれない。」
「知ってるよ。だからどけよ。」
「だけど名前には興味あるし、殺したいとも思う。」
「いやもうほんと勘弁してください。」
「何でだろ?」
「知らねーよもう殺すなら殺せよ。」
「やだ。名前が死んだらつまんない。」


神威の相手は非常に疲れる。相手というか、会話が疲れる。だって意味がわからない。
私は弱いんだから神威にとって興味が無いもの。だったらほっといてくれればいいのに。


「さっきからめちゃくちゃだよ神威。」
「そお?俺は思ってること口に出してるだけなんだけど。」
「じゃあ思考がめちゃくちゃなんだね、神威は。」
「…名前って口悪いよネ。」
「今に始まったことじゃないでしょ。」


ここでやっと神威が私の上からどいた。右腕にはくっきり神威の指のあと。まあこれだけで済んだなら全然いい方だ。書類は書ける。


「名前は俺が怖くないの?」
「怖かったらもうとっくに自殺くらいしてるね。」


神威を怖いと思ったことは一度もない。
確かに神威なら私なんて片手で殺せちゃうだろうけど、別に怖いとは思わない。


「じゃあ何で怖くないの?」


…自分でもよくわかんないけど、多分私は自分が死んでも構わないと思ってるんだと思う。
春雨に入ったのだって別に野望があるわけでもなくて、ただ三食お茶漬けおかわり自由だったから。ただ、それだけ。


「神威に殺されるなら、別に良いよ。」
「何で?」
「わかんない。」


本当にわかんない。でも、本当に良いと思ってる。
死ぬことに恐怖はないけど、阿伏兎に殺されるよりも、云業に殺されるよりも、鳳仙に殺されるよりも、神威に殺されたい。神威がいい。


「でも俺は名前を殺さないよ。」
「何で?」
「さあ。わかんないや。」







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