07
「か、神威くんストップ!ちょちょちょっと止まろうか!」
「?」
神威くんの人間離れした食欲のおかげで私の家の冷蔵庫はすっからかんになってしまい、近くのスーパーにやってきました。…神威くんも一緒に。
お金の方は心配いりません。神威くんが金色のカードを持っているから。理由は知らないし聞きたくもありません。
それで今買い物の真っ最中なんだけど…神威くん、いきなりお米を5袋投入してきましたー!
そんなに入れたら他のお肉とか野菜とか入らないし、っていうか重くて動かないよ!
「あ、他のが入らないか。じゃあコメは俺が持つよ。」
「あ、ありがとう…」
ポカンとする私を見て気付いたのか、神威くんはカゴに入れたお米を自分の手の上に積み上げた。
ぽんぽんと5つの袋が軽やかに重なっていく。あれ…普通に5キロとかあるよね…?それを5つ…って更に積み上げてるー!!
「さ、行こっか。」
「…うん。」
最終的に神威くんは左手の上に10袋のお米を乗せてくれました。
…うん、何でそんな涼しい顔で持てるのかわかんないし、何でバランスを崩さないのかもわからない。
とりあえず神威くんはすごいってことだ。ていうかね、普通お米は重いから最後に持ってくんだよ…なんて今更言えず。
ニコニコと歩きだす神威くんのあとにカートをひいてついていく私。
あ、じゃがいもが安い!買いだめしとかないと!いつもなら買いだめした結果手付かずでダメになっちゃうってことがあるけど、
神威くんがいればそこらへんは心配ないよね。…思い切って10袋くらい…いいよね!ゴールドカードだし!神威くんのだし!
よーしこの調子でレタスに行こー!
ドサドサッ
「!」
どっちのキャベツに身がつまってるか見極めてたとき、カートに大量の何かが投入された。
もちろん神威くんの仕業だってことはわかってたし、予想もしてた。
カゴの中を見ると溢れんばかりの肉、肉、肉。あ、あれーー…ちょっと、流石にこの量は予想以上だったなあ…!
だってもうキャベツを入れるスペースがないもん。積み上げてく他道が残されてないもん。
しかも神威くんの姿はもう見えず、探してみたらお肉コーナーを漁っていた。
……まだ買う気ですか!?もう十分すぎると思うしお店のお肉無くなっちゃうし私の家の冷蔵庫の容量も考えて欲しいし…
「あれ、いっぱいだネ。」
「…もう一個カゴ持ってくるね。」
「ヨロシク。」
私の意気地なし…!いやでも神威くんが抱えてるお肉の中に普段買えない高いやつが見えちゃったから…!
「もう一個持つヨ。」
「…ありがとう。」
なんとか買い物を終えて現在帰路の途中です。
行きは私の原チャに二人乗りで来たんだけど(軽く胸触られた気がする)この荷物だから普通に無理でしょ。
本来人を乗せるはずの原チャにはお米を5袋積んで、私は腕に袋をかけながら原チャをひいて、
神威くんは左手にお米を5袋とスーパーの袋をたくさん、そして右手に私の傘。…うん、あえてつっこまない。
いっぱい持たせちゃって悪いなーなんて思ったりもしたけど神威くんは相変わらずニコニコしてるから余裕なんだろう。
はあ…。あのときのレジのおばさんの顔は一生忘れない。
ていうか、あのスーパー行きにくくなってしまったよ!あああ安いのに…!
「ちょっとちょっと、あれ食品科の子じゃない…?」
「ほんとだ見たことある。てか隣の人誰?」
「米めちゃ持ってんだけど!え、彼氏…?」
「なんかすごい人だね…。」
………いやぁぁああぁああああ!!
スーパーどころの問題じゃないよねそうだよね!大事なこと見えてなかった私!
今すれ違ったのは同じ大学の多分薬学部の人たち。
…うん、大学近辺は一人暮らしの大学生がいっぱいいるんだよ。そりゃ買い物すれば誰かしらに会いますよ。
「神威くん……」
「ん?」
「服、通販でいいかな。」
ドサッ
「ふぅ。」
両手いっぱいのビニール袋を我が家の床に下ろして、一段落。
あーーー疲れたー!特に階段が辛かった!
一人暮らしを考えて3階くらいなら安全だと思ってここ陣取ったけど、毎回この階段は疲れるんだよねー。
いやでもこの階段をなくしたら私本当運動する機会がなくなるからな、感謝しなきゃ。
そして神威くんは汗一つかいてない。清清しい顔で早速お菓子の袋を開けていた。
……まあ、期待はしていないけれども。むしろここまでくそ重たいお米運んでくれたんだから、ありがたい。
さーて私はちっさい冷蔵庫のスペースと格闘しますかね!目指せ収納美人!
「名前ー、俺お腹空いちゃった。」
「うんちょっと待ってね、この隙間に入れれば丁度いいから。」
「何の話?」
うん、やっぱりA型としてはこう、きっちり納まらないと気がすまないのだよ!
よーしお肉入った!よっしゃ私収納美人!美人がつけば何でも嬉しいもんだ!
ふふふ、この調子で次は野菜行こう!野菜は私チョイスだからそんな多くないけど、それでもいつもよりはあるからね!
なんかこんなにうちの冷蔵庫に食べ物が入ってるなんて感動……
「んぎゃッ!?っとぉぉお何しやがりますかーーー!?」
「お腹空いた。」
何だとこのッ…あなたはお腹空くと人のお尻触るんですか!?
いや触るっていうか、撫で回す的な表現の方が似合う気がするけどもういい。
というかまず謝れ。嫁入り前の女の子のお尻触っといて「お腹空いた」はないでしょ。
「名前、もうちょっと肉つけなよ。それじゃ強い子どもを産めないヨ。」
「さーて今日のご飯は何にしようかーーー!?」
だからって感想を言われるとものすごく困るんですけど!
しかも何それ!近所のおばちゃん辺りが言いそうな台詞!
神威くんが言うと何でだろう、ものすごく悪寒がする!
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