05
「いーーやぁぁああああ!!!」
神威くんが来てからはや1週間……なんて経ってねーよまだその日の夜だよコンチクショーーー!!
「?」
「ちょっ、来ないで来ないでぇえ!!」
「…失礼だなぁ。人をゴキブリみたいに。」
ゴキブリの方が何倍もマシだ!私はゴキブリスリッパとか新聞でやれるからね!
おかげで女の子にモテモテだったんだからって今はそれどころじゃなくてね!?
説明すると、もう10時ということでお風呂に入ってもらったわけですよ。
でもいきなり来たわけで神威くんは何も持ってないわけだから、ちゃんと私のTシャツとズボンも用意してあげたんですよ。
「あ、もしかして見るの初めて?」
「ううううるせェェエ!!」
なのに何でこの人真っ裸で出てくるの!何で真っ裸で人の前ウロウロすんの!もう信じらんない!!
まあうちのお父さんもよく真っ裸でビール飲んだりしてたけど……あ、いやパンツははいてた!パンツははいてたよ!
それにメタボ気味の親父の体と少年の意外とマッチョな体ではなんつーか色気が……ってそんな凝視してないからね私!
ただ腹筋割れてるのが見えてちょっとグッときたってこともなくはないけどね!
「と、とにかく服着てよ!ちゃんと出しといたでしょ!?」
「だってパンツなかったし。」
「あるかァァア!!」
男物のパンツなんて持っててたまるか!だったら女物のパンツをはきますか!?いやそれもいやだけど…。
というかパンツなかったから全裸で出てくるという思考回路が理解できません!
あーーーもう何この子!誰がこの子をこんな子にしてしまったの!?
「丁度いいし一発ヤっとく?」
「来んなーーー!!」
「……」
「……」
あ……いや、その……つい、必死で……神威くんにクッションを投げつけてしまったんですが、いとも簡単にキャッチされてしまったんですが……
これ怒ってる!?怒ってるよね!?笑顔だけどなんか無言だもん!なんか怖いもん!
「ッ!!」
クッションを持った神威くんの右手がちょっと動いたから、私は咄嗟に目をつぶった。
なんか彼ならふわふわのクッションでも思いっきり投げれば私なんて簡単に殺せるんだろうな、なんて思ったりした。
「……?」
だけどいつまでたっても痛くないし、っていうか、ぼふってやわらかい音がした。
見てみると、クッションがソファに落ちた音だった。神威くんは……
バタン
……脱衣所に入ったところです。
……………とりあえず、助かりました。神威くんは手に持ったクッションをソファに投げただけだったようです。
「……もういやだ…。」
私は今日1日で何回死ぬ思いをしたかわからない。絶対寿命縮んでる。返せ、私の寿命を。
今更ながら泣きたくなってきた。確かに顔は可愛いけどさ、危険だよ、彼。
今日1日でこんなんだったらこれからいったいどうなるんだろう……というか、彼はいつまで私のとこにいるつもりなんだろうか…。
神威くんが言うには「異世界に来た」…とのことで、もちろん元の世界に帰る方法なんて知らないんだよね…?
知ってれば私のとこによろしくする必要はないんだから。
「………」
となるとアレか?けっこう長期間的にいたりする?
鏡を見なくても自分が青ざめてるのがわかった。
…………ど、どどどどどうしよう!?私やっぱりとんでもないことに巻き込まれてる!?あーもう普通の家出だったらどんなによかったことか…!
「………」
とりあえず私はエンタを見ることにした。つまり逃げた。
バタン
神威くんが脱衣所から出てきた。でも見てない。なんか見れない。見たら負けな気がする。今はやっくんに集中しよう。
「……」
私の背後でソファが沈む音が聞こえた。多分、神威くんが座ったんだ。いやいや今はやっくんに集中しろ私。
「……」
神威くんがなんだか無言だ。
………やっぱりさっきクッション投げたの怒ってたのかな…。
ま、まさか後ろからクッション投げてきたり……
「もしかして怒ってる?」
…………へ?
あ、今の台詞私じゃないです、神威くんです。
ソファから身を乗り出して私の顔を覗き込んでくる神威くんはやっぱり可愛い。
……というか、初めて間近で笑顔以外の顔を見たから不覚にもリアルにドキっとしてしまった。
「ごめんね。ウチは男ばっかだからさ、あんま気にしないんだ。」
「………」
もしかして、さっきのことを謝ってる…?
「べっ、別に怒ってないよ!」
「…そ。ならよかった。」
そう言って神威くんは乗り出した体をソファに戻した。
その時もやっぱ笑顔だったけど、なんていうか……大人びていた。
「…私、お風呂入ってくるね。」
なんだか恥ずかしくなってきて、私はお風呂に入ることにした。…つまり逃げた。
後から考えて見ればお風呂入ってくるって神威くんにことわったこと自体が恥ずかしいな…。
神威くんと生活するなんて、色んな意味で体というか精神がもちそうにもありません。
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