銀魂 | ナノ
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02


「おいしょォオオ…!」


ドサ


名字名前、21歳…つまり私は、やっとの思いで背中に背負っていたモノをベッドに降ろして、それと同時に床に座り込んだ。
だってこれ、いくら細身の少年だからって男の子には変わりないんだから意外と重くてもう私太ももがプラスチック…いや鉄鋼状態。
もう無理、歩けない。でも頑張った自分。ちょっと休憩しよう、そうだハーゲンダッツ食べよう。


「……」


……と思ったけどやっぱまずはこの子の汗を拭いてあげないとかな。











はいそうです、私は例のいきなり殺すとか言ってきた少年を家に負んぶして連れて帰りました。
いやそんな変態的なことじゃなくて!だってまず殺されるところだったし私!実際死を覚悟しましたからねあの時!
だけど振ってきたのは鋭い手刀じゃなくて少年そのもの。ええそりゃあもう吃驚しました。走馬燈もパッと消えました。
なんだイタズラか〜なんて思って声をかけても少年は答えてくれなくて、しかも汗だくで呼吸が荒いじゃありませんか。
そんなの放っておけない!ってことで、丁度近かったしウチに連れて療養してやろうっていうわけです。
今日真夏日だから多分熱中症かな。コンクリートを粉砕しちゃうのに熱中症で倒れるって可愛いところもあるもんだ。
しかし熱中症をバカにしちゃいけない!これで命を落とす人もいるんだ。大丈夫だよ少年、私が助けてあげる!
まず汗を拭いてあげて、クーラーもつけて、脇も氷で冷やして……よし、完璧!こんなんテレビで言ってた気がする。
さて、じゃあ一仕事終えた後のハーゲンダッツでも……


ガシッ


「……」


食べにいこうとしたら……ね、腕を掴まれました。もちろんベッドで寝ている少年に。
これは子供が看病してくれるお母さんに甘えて「行かないで」って訴えてくる時の行動パターンと似ていて母性本能をくすぐられるはずなんだけど
掴んだ腕の力がハンパない所為かな、何もきゅんきゅんしない!


「……」
「えーっと……大丈夫?」


腕を掴んだままキョロキョロする少年。まあ、当たり前の反応だと思う。目を覚ましたら見たことない場所なんてね。
しかしそのキョロキョロする間、私の腕を放してくれると嬉しいな。ミシミシいってる気がするよ、乙女の腕がミシミシ。


「……ああ、ゴメンね。うちの種族は太陽に弱いんだ。」
「!」


多分私が少年を助けたことを理解したのか、少年は素直に謝った。……か、かわいい…!
確かに暴力的なところはあるけどやっぱ可愛い子はいいね!うんうん、お姉さん許してあげるよ。
ちなみに「種族」ってちょっと引っかかったけどそこらへんもまあスルーしてあげるよ。


「大丈夫?もう気分悪くない?」
「うん。」
「じゃあ電話貸してあげるから、お父さんに電話して…」
「何で?」
「何でって……お迎えに……」
「何で?殺されたいの?」
「滅相もございません!!」


ぎゃああああやっぱり怖い!可愛いのは認めよう……しかし怖い!!
そんな私ははぐれてしまったお父さんと再会させてあげようと…………もしかして家出!?お父さんと喧嘩して家出!?
うわー、とんでもないことに巻き込まれてしまったのかもしれない、私。


「……でもやっぱダメだよ、ちゃんと話さないと!」
「何の話?」
「お父さんが嫌だったらまずはお母さんにしよう!大丈夫私が説明してあげるから!お家の電話番号は?」
「何の話?家なんて無いよ。母親も死んでる。」
「!!」


なッ…………まさかお母さんを亡くしてお父さんと2人でホームレス生活……!?
そそそそんなん悲しすぎる!この子笑顔の裏にそんな辛い過去を背負っていたなんて…!


「だったらなおさらお父さん大事にしないと!さあ、あぶとさん探しに行こう!」
「何の話?阿伏兎はオレの部下だよ。」
「はいいい!?」


あぶとさんお父さんじゃなかったァァアア!!ということは何だこの子?あれ、最終的に何この子?
というかあぶとさん、お父さんじゃなくてもあごひげのおじさんっていうことだからこの子より年上のはずだよね?……なのに部下?
もしかしてこの子こう見えて実はけっこう歳いってるとか?


「あの、つかぬことをお聞きしますがご職業は…?」
「海賊。」










うん、そりゃフリーズもしますよ。
えーと、聞き間違いかな?「かいぞく」って聞こえたけど、かいぞくって何かな。貝を売る仕事かな。
まさか海に繰り出して幻の財宝ワンピースを捜し求める男のロマン的な仕事(?)ではないよね。


「その、“かいぞく”っていうのは…?」
「知らない?宇宙海賊春雨。」










うん、そりゃフリーズしますよ。
貝を売る人じゃなくて普通に海賊だったうえ、宇宙海賊って何?
海賊っていうのは海の賊と書いて海賊なわけで、海で活動するものだと思ってましたが……宇宙海賊?
しかも春雨?何だそのめちゃくちゃ美味しそうな名前。
「我々は宇宙海賊春雨だー!」なんて言われても「あ、美味しそうですね」としか返せないけど大丈夫その海賊?


「やっぱりまだ暑さにやられてるよ、ほら横になっいだだだだ!」
「指図しないでよ。」


だって海賊なんて信じられるわけないじゃん!今の時代に海賊なんているのか?
というか宇宙海賊ってもはや海賊じゃないでしょ。宇宙賊?……いやゴロが悪いからやっぱ宇宙海賊で。


「まあとにかく助けてもらったみたいだし、殺すのはやめてあげるよ。」
「はあ…。」


やったー殺されずにすんだー。でも何か素直に喜べないなー。
少年はベッドから軽い身のこなしで降りて、スタスタと行ってしまった。
……あれ?さよなら?早くない?というか少年、お姉さんにお礼を言ってないよ君。
お姉さんはクソ重たい君をここまで運んで熱心に看病してあげたんだよ。結局ドラマ見てないんだよ。


「傘もらうね。」


あれおかしいな少年、今日は雨降ってないよ?それ以前になんかもう……何で?しかもそれ最近買った可愛いやつだし!水玉だし!
ちょっとそれ男の子にはキツいって!いや君なら可愛いと思うけどお父さん見たら悲しむと思う!だから置いていこう!ビニール傘あるから!


バタン


「………」


……………バイト行こ。




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