銀魂 | ナノ
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02:公共の福祉なんて知ったことか


「んー……いいなァ沖田はどこでも寝れて。私は自分の枕と布団じゃないと寝れないよ。」
「……このアイマスクはどうかと思うがな。」
「そう?可愛いじゃん。」
「………」









ここは戌威星の大使館。最近、攘夷派によるテロが相次いでいるので、名前達はここの警備にまわされた。
攘夷派の運動とは、天人を江戸から追い出すという動きの事で、もう何件もの大使館が爆破されてきた。


「…そういえば名前さん…その着物は変えないんですか?」
「ああ、考えてみればこっちの方が動きやすいしね。」


その着物とは、前回天然パーマの男にチョコレートパフェをこぼされて太ももらへんから下を切った着物だ。


「テメー仮にも警察がそんな格好…」
「だから何がよろしくないのよ?」
「そりゃあ…」
「ムッツリ土方……」
「「「………」」」


『ムッツリ土方』と言ったのは名前でも山崎でもない。寝ているはずの沖田だった。


「おいコラ沖田ァ!永眠するか!?」
「ただの寝言じゃないの。きっと土方がムッツリしてる夢でも見てんのよ。」
「んなわけあるか。テメー起きてんだろ!?」


土方が叫ぶが沖田は何の反応も示さない。
アイマスクで目が隠れているのでなんとも言えないのだが…


ドカン


見張り台で言い合っている中、外で爆発音が聞こえた。
それを聞くと土方は急いで双眼鏡を手に取り外の様子を見た。
するとそこには指名手配中の桂小太郎という男、それと見知らぬパーマの男に眼鏡の青年にチャイナ服の少女がいた。


「とうとう尻尾出しやがった。山崎。何としても奴らの拠点をおさえてこい。」
「はいよっ。」
「あれは…!私も行く!!」
「え…」
「行こう山崎!」
「はい!」
「ちょッ待………」


名前が土方から双眼鏡を奪い取り、外を見てみると着物にチョコレートパフェをこぼしたパーマの男がいるではないか。
名前は急いで踵を返して、山崎と一緒に部屋から出て行った。


「…オイ、沖田起きろ。」


名前達が部屋を出て行って少し経ってから、土方は軽くため息をついて、沖田に丸めた紙を投げて起こした。


「お前よくあの爆音の中寝てられるな。」
「爆音って…またテロ防げなかったんですかィ?何やってんだィ土方さん。真面目に働けよ。」
「もう一回眠るかコラ。天人の館がいくらフッ飛ぼうとしったこっちゃねェよ。連中泳がして雁首揃ったところをまとめて斬ってやる。真選組の晴れ舞台だぜ。楽しい喧嘩になりそうだ。」


剣を磨きながら土方が言った。完璧瞳孔が開いている。









一方こちらはテロリスト達を追っている名前と山崎。相手に気付かれている気配はない。
テロリスト達は都会の方に行って、マンションの一室に入っていった。


「あそこに入りましたね…」
「ん。じゃ、私行ってくるから山崎は土方に知らせといて。」
「名前さん一人で乗り込むんですか!?」
「違うよ。」


間髪いれずの名前の返答。


「あたしは白髪パーマの男に着物代を払ってもらう為に行く。」
「なッ…!あ、あっちはテロリストですよ!?」
「大丈夫。私隊服着てないし一応顔見知りだし。」
「そりゃそうですけど……」
「つーかテロとかどーでもいいんだよね。私天人嫌いだし。」
「(ぶっちゃけたーーー!!)」


しょうがなく、山崎は名前の言うとおりにしておいた。というか、逆らえないのだ。


「バカヤロー。俺がもし天然パーマじゃなかったらモテモテだぞ。多分。」
「何でも天然パーマのせいにして自己を保っているのか。哀しい男だ。」
「哀しくなんかないわ。人はコンプレックスをバネにしてより高みを…」
「アンタら何の話してんの!!」


ピンポーン


パーマの男とテロの主犯の桂が何だかよくわからない会話をしている時、名前が呼び鈴を鳴らした。


「失礼しまーす。」
「「「!!」」」


無断で中に入る名前。呼び鈴を鳴らした意味はあるのか。


「白髪のパーマの人いますか?」
「ん……確か……」
「銀時、こんな美しいお方といつ出会った?」
「! やっと見つけた…白髪パーマ…!!」
「な…もしかして銀さんのおっかけですか!?」
「ほらみろ、天然パーマでもモテたろ。」
「さっきと言ってる事が違うぞ。しかも天然パーマじゃない。白髪パーマだ。」
「この間はどうも。人の着物にチョコレートパフェこぼしといてとんずらとはいい度胸してますね。」


にっこり。ハートがつきそうな笑顔で、さわやかに名前は言い放った。
部屋の空気が一時止まる。


「ぇえ!?アンタ女の人の着物のチョコレートパフェこぼしたんですか?!」
「え…いや、それは許してくれたんじゃ…」
「そんな事一言も言ってません。この着物結構気に入ってたし高かったんですよ。60万くらい。」
「60万!?」
「いや、私も60万もとるなんて事はしませんよ。2分の1切る破目になったから20万頂きます。」
「え…60万の2分の1って30…」
「黙ってろッ!!」


30万円と言おうとした新八の口を慌てて銀時が押さえた。


「最低だな、銀時。女性の着物を汚すなど。」
「悪いが俺はそんな大金手にした事なんてない。」
「何年かかってもいいので返せ。働いてください。」
「(この人結構根に持つタイプだ…!!)」
「俺は万事屋だ。もう働いてる。」
「もっと働いてください。お金が無理なら体で払ってもらうわ。」
「か、体ァア!?」
「お嬢さん、銀時の体なんてもらってもなーんにもいい事はないですよ。」
「体って…どういう意味ですか!?」


体で払ってもらうという言葉の意味を間違って捉えてしまった3人。
新八に詰め寄られると、名前は視線を時計に向けた。今の時間は丁度16時。


「! ちょっと失礼。」
「?」


そう言うと、名前はテレビの方に向き、座り込んでテレビのスイッチを入れた。
テレビがつくと丁度16時から放送のドラマが始まったばかりで、名前はそれを無表情で見つめる。


「…え……あの…」


こうなったらもう名前は集中モード。周りで何が起きようとも、何も見えない聞こえない。


バン


「「「!!」」」
「御用改めである!神妙にしろテロリストども!!」


だからいくら扉が蹴破られようと、黒い服を着た男達が中に押し入ろうと、名前は全然気付かないのだ。


「しっ…真選組だァっ!!」
「イカン逃げろォ!!」
「一人残らず討ち取れェェ!!」


銀時達が逃げると同時に、真選組が一気に追いかけてきた。
部屋にポツンと残った名前。相変わらずテレビをじーーっと見つめている。


「なッ…何やってんだよ名前!」
「………」
「おい!!」
「ダメでさァ土方さん。今の名前さんは完全に集中モードですぜ。」
「……チッ、追うぞ。」


土方が名前に話しかけても名前はテレビを見つめるばかりで何にも反応をしない。
無駄だとわかった土方は名前を残し、沖田と奥に進んで行った。









それから少しして名前が見ていたドラマが終わった。


「あ〜感動ー。まさかあそこでマサ男がカウンターをかますとは…」


……感動?はとにかく、名前は誰もいなくなった部屋を見て唖然とした。


「……逃げられた。」


…自分は集中すると周りが見えなくなるという事は自覚していないようだ。
名前は徐に立ち上がって、破られた襖の奥へ進んでいった。


「……?なんか騒がしい…」
「ほあちゃアアアアア!!」


ギャイイン


「ぬわァァァァァ!!」
「え……」
「名前!?」


名前が廊下を歩いていると女の子の掛け声が聞こえて、続いて男の叫び声が聞こえたかと思うとその男がすごいスピードで美空に飛んできた。
名前はいきなりのことに反応できず、男と一緒に窓を割って外に出た。
外に出たといってもここは10階くらい。落ちたらまず助からないだろう。


「ふんぐっ!!」


その中、天然パーマ…というか今は爆発パーマの男、銀時は残り1秒まで迫った爆弾を思いっきり上に投げた。


ドガァン


爆弾は上で盛大に爆発した。


「ぎっ…銀さーん!!」
「銀ちゃんさよ〜なら〜!!」
「名前ー!生きてるかー!?」


上から心配そうに新八や土方が声を出した。(神楽は違う)
爆弾の煙が晴れて、しだいに下の様子が見えてきた。
すると、銀時が片手で名前を抱え、片手で向かいのスーパーの垂れ幕にしがみついているのが見えた。
2人とも無事のようだ。ゆっくりと垂れ幕を滑って下におりていく。








「はぁ。死ぬかと思った。」


そう言うわりには落ち着いた声で名前が呟いた。


「これでアレはチャラだろ。2万。」
「20万。チャラになるわけないでしょう。」
「はぁ?命助けてやったんだぜ?」
「私の命が危うくなったのは思いっきりあなたの責任なんだからあなたが責任をとって私を助けるのは当たり前。」
「………」


さも当たり前のように言う名前。
その真っ直ぐな瞳を見て銀時はこれ以上何を行ってもチャラどころかまけてもくれないだろうと観念した。


「さっきも言ったけど、お金が無いなら体で払ってもらいます。万事屋なんでしょ?」
「まーね。」
「お名前は?」
「坂田銀時。」
「私は名字名前。よろしくね、銀さん。」
「……おう。」






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