銀魂 | ナノ
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07



「銀ちゃん、電話鳴ってるヨ。」
「あー?んなもんほっとけ、どーせ拙者拙者サギだよ。」
「ちょ、仕事の以来だったらどーするんですか!僕出ますよ。」
「いいけどお前ちゃんと『坂田ですけど』って言えよ。じゃないと『あ、間違えました』って感じになっちゃうから…」
「もしもし坂田ですけど………あ、名前さん?」
「テメェエエ人んち電話勝手にとってんじゃねェェェエエ!!」











冒頭から10分後、名前が万事屋のインターホンを押した。


「新八くん眼鏡割れてるよ?」
「銀さんにやられました。」
「ちげーよプロレスごっこだよ。男の子はワンパクなの。」


出迎えてくれた新八の眼鏡は…割れていた。
割った張本人である銀時は子供並の嫉妬心を誤魔化すように、頭をかきながら新八の後に続いて出てきた。
しかし流石は幼馴染。銀時がどんな言い訳をしようが、名前は銀時がやったのだと確信した。


「ごめんねー銀時って昔っからいじめっ子で。私もよくまな板っていじめられてさぁ。」
「銀さん好きな子いじめちゃうタイプだ!小学校によくいたガキ大将だ!」
「ば、お前好きな子じゃねーし何言ってんのお前!何言ってんのお前!」


寺子屋の時も、攘夷戦争の時も、名前はずっと銀時に「まな板」と言われ続けていたらしい。
銀時の子供じみた態度に新八はあきれ返ったが、銀時は断固として認めない。どこまでも子供じみている。


「あーもうわかったから!鼻くそ深追いしすぎて鼻血出てますよ!」
「新八くん、お詫びと言ってはなんだけど私牛乳2つ飲んでくるから!」
「牛乳ビンの底で眼鏡作る気ィィ!?大丈夫です次回には直ってるんで!」


これほどわかりやすいのに名前が気付かなかったのは、名前が本気で胸のことを気にしていたからだろうか。
今は多分単純に人の話を聞いていないのだろう。


「あ!名前アル!」
「グラちゃんこの前ぶりー!」
「私に会いにきてくれたネ!」
「ちげーよ名前は俺に会いにきたの。」


名前に抱きつこうとする神楽を片手で抑えてちゃっかり名前の隣を確保する銀時。
女の子にまでこの態度……新八はもうほとんど引いていた。


「で、どーしたんだよ名前。」


ドン


名前が机の上に置いたのは大きな酒瓶。ラベルにはでかでかと鬼嫁と書いてある。けっこうキツい酒だ。


「この前言ったじゃん、飲もうって。」
「え、ちょ、真っ昼間なんですけど梨子さん?」
「俺らの酒に昼も夜もちゃぶ台の上もアスファルトの上も関係ねーよ。なァ名前。」
「そうそう。新八くんと神楽ちゃんもどーぞ。」
「僕ら未成年なんですけどォォオ!?」
「俺らの酒に成年も未成年も18禁も関係ねーよ。なァ名前。」
「そうそう。新八くんおつまみないの?」
「もう飲んでるし!ってふてぶてしいなアンタ!」


新八の制止も空しく、銀時も名前もノリノリである。









「あの、名前さんって銀さんの幼馴染なんですよね?」
「そーだよー。」


数分もしないうちに名前と銀時は物凄いスピードで1杯目、2杯目、3杯目と酒を流し込んでいった。
こんなペースで飲まれたらたまったもんじゃないと思った新八は2人のペースを緩めるために話題を切り出した。


「じゃあ……名前さんも攘夷戦争に参加してたんですか?」
「……」


新八は口に出してから、しまったと思った。その瞬間に銀時の表情が多少変化したからだ。
誤魔化すように酒を流し込んでいるが、しばらく一緒に生活をしていてその微妙な変化は十分感じ取れるようになっていた。
一方当の名前はというと、いつもと変わらない様子でコップに口をつけている。


「まーねェ……あの頃はさァ、私も若かったし。ねェ銀時。」
「そーだな。まだまな板だったよな゛ッ!!」
「あはは、何の話?」


名前は笑いながらものすごいスピードで横から頭突きをかました。


「おま、だから何でいつも頭突き?そろそろ割れそうなんだけど。」
「大丈夫、元から割れてるじゃん。もう銀時ってばそれ何世代前のギャグー?」
「いや尻じゃなくてね。頭割れてたら困るからね。」


こういった掛け合いもおそらく昔からのことなんだろう。成り立っているようで、成り立っていない。
ツッコミではなくボケで銀時を圧倒した名前に、新八は少しだけ尊敬した。


「でもまさか銀時とこんなところで会えるなんて吃驚だよー。お登勢さんに拾ってもらったんだって?」
「ちげーよ、俺がわざわざ老い先短いババァの面倒見てやってんの。」
「よく言うー。私けっこう心配したんだよォ。銀時って生活力ゼロだから。」
「人のこと言えねーだろ。お前こそどーしてたんだよ?」


酔った2人はもう新八が提供した話題とは全く別の話をし始めている。
ここで新八は察知した。この2人の酒を止めるのは無理だと。


「私も銀時と同じ感じ。橘さんに拾ってもらったんだァー。」
「橘さん?お前それ男じゃねーだろーな。」
「男だよ。」
「はァア!?」


名前が男に拾われたと聞くと銀時は酒を口から噴出するというなんともわかりやすいリアクションをした。
以前からよく名前が口にする「橘さん」とは、名前が攘夷戦争後、行き倒れていたところを拾ってくれた梨子の恩人である。
今の飛脚という仕事に就けたのも橘さんのおかげだそうだ。


「もうすぐ還暦。」
「ダメだ。やっぱウチに来いお前。」
「いやおじいちゃんならいいでしょ!アンタどれだけ嫉妬深いんだよ!!」


60歳のおじいさんにまで嫉妬をする銀時に、もう黙っていようと思っていた新八だったが我慢できずに突っ込んだ。
しかし2人とももう新八の声なんて聞こえていないようで気にせず次々と酒を流し込んでいく。
名前なんて「コップめんどい」とか言ってラッパ飲みをする始末だ。


「だから今はもう自立してるってばー。むしろ私が橘さんの面倒見てる感じだし。」
「んな老いぼれほっとけって大丈夫だって橘さんなら。」


お前に橘さんの何がわかるんだ…そうツッコミを入れたかった新八だが、どうせ言ったところで2人の耳には入らない。


「なァ名前……俺ンとこ来いよ。一生面倒みてやっから。」


酒がすっかりまわった銀時は酔った勢いで、普段なら絶対言わないような言葉を口にした。
というか、もうこれはプロポーズの他の何でもない。


「あははー、銀時に面倒みられる程生活困ってませんー。」


しかし酒が入っても名前は名前だった。
気付いててあえて流しているのか、それとも気付いていないのか、どちらかはわからないがとにかく適当にあしらわれた。


「銀さん…」
「ンなこと言ってホントはよォ、ドキってしたんじゃねーの?」
「私が?銀時に?ありえなくね?」


流石にここまで相手にされてないなんて可哀想すぎる、と新八が同情をこめて銀時を見つめたとき。
新八の目に飛び込んできたのは流されてもなお引かない銀時が名前の肩に手をまわして…とにかくベタベタしてる姿だった。
思いっきりセクハラじゃねーかと思ったが、名前本人はウザそうだが振り払おうとはしない。
幼馴染ということで、もう慣れているのかもしれない。


「……トイレットペーパー買ってきます。」


いい加減見てられなくなった新八はそう呟いて立ち上がった。
もちろんその言葉が2人に届くはずはなかった。




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