銀魂 | ナノ
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06


「いいですか!?絶対来ないでくださいよ!?」
「わかってるって。俺らだって仕事あるしなァ、総悟。」
「そーでさァ。山崎に付き合ってる程暇じゃないんでね。」










「……というわけで、つけてきたのである。」
「どういうわけェェ!?冒頭で全く正反対のこと言ってんじゃん!」
「山崎は待ち合わせの1時間前から待っているのである。」
「つかテメーら仕事あんのに何してんだ!」
「土方に任せてきたのであった。」
「任されるか!!何で俺までこんなこと……俺の休日を返せ…。」
「ツッコミがいないからであった。」
「そんな理由かよ!?」
「そして土方は死ぬのであった。」
「総悟、剣を抜け殺してやる。つーかその語尾ウザいんだけど。」


………というわけで、なんだかんだで沖田と近藤、それからオフだった土方まで巻き込んで結局山崎のあとをつけてきたらしい。
待ち合わせ場所は定番の家康像の前。1時に待ち合わせなのに山崎は12時からこの前に立っている。
そろそろ待ち合わせの時間だ。1時間立ちっぱなしにも関わらず、山崎の姿勢は真っ直ぐだった。それほど気合が入っているんだろう。


「山崎さん!」
「あ、名字さん…!」


丁度1時というところで、名前が小走りで山崎のところにやってきた。
今日はオフということでいつもとは違う、普通の女の子が着るような着物を着ている。


「あれが噂の紅猫かィ…。」
「………トシ…」
「……何だ?」
「でかくね?」
「………一応聞くけど……何が?」


名前を初めて見て、近藤がまず気になったところが…やはり胸だった。
まあ胸に目がいってしまうのは誰でもそうだろうが、近藤の場合まだ胸しか見ていない。隠れてるのをいいことにガン見だ。


「ごめんなさい!結構待たせちゃった?」
「いいいや、俺もついさっき、来たとこだから!」
「よかったー。」
「じゃ、じゃあ…行きましょうか。」
「はい!」









「へー、退ってミントン好きなんだー。」
「う、うん。」


とある喫茶店に入って数十分、2人は他愛もない会話を楽しんでいた。
名前の提案で敬語はなしにしようということになって、「退」という名前呼び捨てにドキドキしながらも少しずつ山崎の緊張もほぐれてきた。


「なかなかいい雰囲気じゃねーか。」
「わかってねェな土方。」
「あ?呼び捨てすんなテメー。」
「総悟の言う通りだぞ、トシ。わかってない。」
「…何がだよ…。」
「よく見てみなせェ。」


沖田が顎で2人の方を促した。


「私もミントンやってみたい!今度教えてよ。」
「よ、喜んで!」
「やったー!」


また今度会う約束までしてる2人を見て、普通に良い雰囲気じゃないか、と土方は思った。
これ以上良い雰囲気はないだろうに、この2人は何を考えているんだ。


「リードしてんのは専ら紅猫の方でィ。」
「……」


沖田に言われて気付いた。そう言われてもれば、そうかもしれない。
話題の提示も、今のデートの約束だって、名前が言い出したことで山崎はそれに相槌をうっただけにすぎない。


「…まあいいんじゃねーか?あっちも気があるっつー事だろ。」
「ダメだ!男たる者全力でアタックするべきだ!」
「説得力があるような無いような…。」


確かに好きな女に消極的な男はどうかと思うが、度が過ぎたストーカー行為によってフられ続けている近藤が力説しているのを見るとなんだか複雑である。


「ここは一つ土方さん、山崎にマヨぶっかけて来てくだせェ。」
「何で?」
「なるほど!やるな総悟。」
「何が?」
「鈍いなトシ…。『あらまあ大変私が拭いてさしあげましょう』のパターンに決まってるだろ!」
「パターンって何?」
「あわよくば『家近いんでシャワーでも…』のパターンに突入でィ。」
「だからパターンって何?」
「そうかァァ…!いや、シャワーまでいくとマズい。この作戦はやめよう、トシ。」
「つーか帰ろう。」


パターンとかよくわからないことで盛り上がる2人に土方が本気で嫌気がさしてきた頃。
土方の視界の隅に山崎と名前が席を立ち上がったのが見えた。


「おい、茶ァ終わったみたいだぜ。」
「えええまだ手ェ繋いでないのに!?」
「やけにこだわるな…。」
「よし、こうなったら…」


デートが終わるんだったらこのしょうもない尾行を終わるだろうと思っていた土方だったが…………甘かった。









「ハイハイそこのお2人さん止まってー。」


名前の家まで山崎が送っていくことになって道を歩いてると、一人の男が立ちふさがった。
真選組局長、近藤勲である。
近藤はいつもの隊服を着て、手には赤い棒、口には笛をくわえて2人を呼び止めた。


(局長ォォ!?来ないっつったのに……っていうか何やってんだァァアア!!)


咄嗟にこんな奴と知り合いとはバレたくないと思った山崎は心の中で叫んだ。


「今日この通りを歩く男女は手を繋がないといけません!なんかそういう決まりだから!守らなかったら罰金だから、コレ!」
(…協力してくれてるんだろうけど……アホかァァ!)


「お礼はいらんよ☆」と言わんばかりに山崎をチラチラ見てくる近藤は正直ウザかった。
確かに山崎のためにしてくれてることはわかるが、やり方に多少無理がある。
「なんかそういう決まりだから」でそんなルール納得する人がいるわけないし、目の前を歩く男女は手なんて繋いでない。
折角いい雰囲気だったのに台無しだ、と山崎が恐る恐る名前の顔を伺うと…


「……」
「!? 名前ちゃ…」


名前は無言で山崎の手を握った。


メキッ


「が…」
「……………ん?」


ドサッ


そしてそのまま、山崎と繋いだその手で近藤の顔面をぶん殴った。
まるですれ違い様にラリアットをかますかのように。ただしこの場合当たったのは梨子の手の甲だ。…ラリアットより痛そうである。


「こんな変な事しかやらないんだったら真選組なんて潰れちゃえばいいのに。」


山崎の隣を歩く名前は清清しい笑顔でとんでもないことを吐き出した。


「ね?退。」
「え……あ…………うん。」


山崎は色んな意味で汗ばんだ手で、名前の手を軽く握り返した。




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